士郎正宗(原作)×ジョン・ウー(プロデュース)×荒牧伸志(監督)による映像革命作品『エクスマキナ-APPLESEED SAGA-』。最新技術を駆使したこの"HDアニメーション"は、トップ・クリエイター陣が総力を注ぎ込み完成した前作『APPLESEED』の最新形でもある。本作は2007年10月20日より劇場公開が行われ、2008年3月14日にはDVDが発売されたので、すでに見た方も多いだろう。しかし、ここで改めて荒牧監督のお話をうかがい、本編に埋め込まれたメッセージ・秘密を解き明かしていきたいと思う。

『エクスマキナ-APPLESEED SAGA-』。DVDは4枚組のプレミアム・エディション(価格10,290円)とスタンダード・エディション(価格3,990円)が、ポニーキャニオンより発売中
(C)2007士郎正宗/青心社・EX MACHINAフィルムパートナーズ

<『エクスマキナ-APPLESEED SAGA-』STORY>
非核大戦によって、人類の半数が死滅した世界。中立都市オリュンポスには人間とサイボーグ、バイオロイド(クローン)が共存していた。オリュンポスの特殊部隊に所属する天才的な戦士、デュナンとブリアレオス。ふたりは強力なパートナーであり、強い信頼で結ばれた恋人同士でもあった。過去の戦いで負傷したブリアレオスの肉体がサイボーグになっていても、デュナンの愛は変わらず彼に向けられていた。ある日、作戦行動中にデュナンをかばったブリアレオスが、瀕死の重傷を負う。一命を取り留めたものの、依然昏睡状態が続くブレアリオス。まだ回復の兆しも見えないうちに、デュナンのもとに新たなパートナーが配属されてくる。その男――テレウスは、ブリアレオスの遺伝子をもとに作られたバイオロイドであり、生身の姿だった頃のブリアレオスと同じ顏と肉体を持っていた――。

荒牧伸志監督。アニメーション、CG映像の企画、演出とメカニックデザインを中心に活動。TVアニメーションでは、メカニックデザインとして『機甲創世記モスピーダ』『ガサラキ』『REIDEEN』ほかに参加。実写映画には、造形デザイン・CGシーンストーリーボードで石井竜也監督の『河童』や、卓球シーンのストーリーボードを担当した『ピンポン』などがある

――前作『APPLESEED』から3年がたって『エクスマキナ-APPLESEED SAGA-』が生まれた経緯と、物語の構想というものはどこから生まれてきたものなのか教えていただけますか。

「『エクスマキナ-APPLESEED SAGA-』が生まれた経緯は、一本目の評判が良かったので新作を作らないか? というオファーが私のところに来たということでした。もちろん一本目は新作につながるということを意識せずに制作していましたから、何の構想もない状態からどうしようと悩みました。それで、原作者の士郎正宗さんのところに相談しに行ったりして、『アップルシード』で新しい物語を作るとしたらどういうものだろうと、半年から1年ほど考えましたね」

――士郎正宗氏の原作は、『ブラックマジック』『ドミニオン』『攻殻機動隊』など数多くがアニメ化されています。『アップルシード』もOVA作品としてすでに発売されていましたが、フルCGアニメ作品として同作をあえて選んだ理由をお聞かせください。

「これは正直に申しますと、僕が『APPLESEED』を選んだのではなく、『APPLESEED』が僕を選んだのです……と言うと聞こえはかっこいいかもしれませんね(笑)。実は『アップルシード』をフルCG化しようという企画は、僕が関わる前から進行していたんです。当時、『APPLESEED』はパイロットフィルムとフィギュアが一緒になったDVDが発売されたんですが、そのとき僕は『へ~、こんなの作ってるんだ』って外から見ていた言わば部外者だったんです」

――じゃあ、パイロット版のDVDは完全にノータッチだったんですね。

「ええ、僕はそのとき、全く違うプロジェクトのパイロットフィルムをCGで作っていたんです。同じころ『APPLESEED』のプロジェクトは制作面で難しい局面を迎えていたらしく、たまたま僕らが作ったパイロットフィルムを関係者が見て、『このチームでできないか?』って話になったそうです。それでこちらにオファーが来て、僕も『アップルシード』だったらぜひやりたいな、ということで一本目の映画のプロジェクトが具体的に動き出したんです。つまりそういった理由で、作品はすでに決まっていて僕が呼ばれたと」