横浜市交通局は30日、中山~日吉間(13.0km)を結ぶ横浜市営地下鉄グリーンラインを開業した。横浜北部の足となり、東京や横浜へのアクセス向上を期待されている地下鉄だ。今回は、開業に先駆けて29日に行われた試乗会に参加し、沿線事情や車両周辺の話題も織り交ぜてレポートする。
グリーンラインは、JR東日本横浜線中山駅と、東急東横線日吉駅をショートカットするように結ぶ路線で、横浜市中心部のまわりをぐるっと一周するように計画されている"横浜環状鉄道"の一部分が開業したともいえる。東京や横浜のベッドタウンとして発展目覚ましい港北ニュータウンを貫く2番目の地下鉄として、ブルーライン(湘南台~横浜~あざみ野)に次いでの開業となった。
このグリーンラインの開業によって、新たな鉄道新駅が6駅でき、日吉を経由して渋谷・都心方面へ、中山を経由して横浜方面へと、沿線住民のアクセス性が向上する。また、同線の開業に伴い、市営バスの統廃合も行われることになる。
グリーンラインに導入される車両は10000系で、アルミ製4両編成の15本が新造された。将来の6両編成化も考慮された設計となっている。この車両の特徴は、リニアモーターで駆動する仕組みを採用しているところで、都営大江戸線と同じく、磁石の反発の原理(線路側と車体側で反発しあって前進する仕組み)を利用している。利点としては、車両を小さく設計することができ、トンネル断面積を小さくすることで、低コスト化を図れるところ。しかもこの10000系は80km/hという最高速度や、大きな客室窓などから、都営大江戸線12-000系よりも「速くて広々」というのが乗ってみての印象だ。
平日の運行は、朝ラッシュ時が4分20秒間隔、日中は7分30秒間隔。「ピーク時は15本ある車両のうち13本が稼動している状態です。日中は7本が稼動し、8本は川和車両基地にいることになります」とは、同局関係者の話。実際に乗車し、各駅で降りてみると、6つある新設の駅のなかでも、川和町・北山田の2駅が印象的だった。
川和町には、先ほどの関係者の話のとおり、グリーンライナー編成15本が眠りに帰る「川和車両基地」への引込み線が伸びている。地上ホームになっていて、鶴見川を渡る見事な鉄橋が中山方面に見える。リニアモーター軌道の鉄橋というのも珍しい。ホームに下りると、中山方面側の隣りに側線レールが2本敷かれている。その間には1.5mほどの幅の"ミニ・ホーム"がある。これは、"乗務員専用ホーム"で、川和車両基地から川和町までの間を運転する構内運転手と、本線運転手とが交代する時に使用される場。「安全と効率のためにつくられています。乗務員が交代する際、今までは、引き上げ線に車両を入れるのに1分、乗務員の交代に3分、引き上げ線から出すのに1分と、5~6分かかった。それを、この乗務員専用ホームで時間短縮し、効率化しているわけです。また、乗客ホームに基地からの回送電車を通さないという安全性も配慮されています」と同局乗務員。ローカルムード漂う川和町駅だが、途中下車して散策する楽しみがある駅かもしれない。その川和車両基地を畑の間から見てみると、運用を終えた車両が、川和町の高架ホームから基地のある地上へと降りてくる姿を見ることができた。
北山田は、地下ホームから地上へ出ると、すでにお祭り騒ぎだった。南欧スタイルのデザインが目を引く駅舎のすぐ近くには、近代的なマンションが立ち並んでいる。駅前では祝いの酒が振る舞われ、ステージで繰り広げられるコンサートの歌声に聞き入る住民たちでいっぱいだった。その中の1人で、金子三千男さんは「40年前に描いていた未来の街が、今こうして実現した。感無量だ」とご満悦のようだ。もともとの地主の人たちと、鉄道開業と新築マンションの魅力に引き寄せられて転居してきた新住民とが、いっしょに開業を喜び合っているという感じだ。一方、隣りの駅、東山田は、県道脇に小さな駅舎が立つだけで、鉄道開業による沿線変化が見受けられず、北山田と比べ、昔ながらの一軒家の集落がそのまま残っていた。今後の大きな変化を予感させる、静かな佇まいだった。
今回試乗してみて、グリーンライン沿線には、まだまだ田畑が残る牧歌的風景が広がるが、今後の人の流れ次第では、ハイスピードで劇的に変化する予感さえも感じさせる雰囲気があった。まだまだ開発途上の沿線地域ではあるが、今後の発展を見とどけたい。