「編みもの」と聞いて思い出すのは、揺り椅子の上のおばあちゃんという人も多いのではないだろうか。スウェーデン大使館ギャラリーにて開催中の「編みもの&デザイン」展では、そんなイメージを覆すユニークでポップな編みものがたくさん展示されている。今回は「もっと編みものの可能性を伝えていきたい!」というデザイナー、ブリット=マリー・クリストファーソンさんらによる編みものワークショップ「棒針編み-進化する手仕事」に参加した様子をお伝えしたい。
編みものワークショップが行われたのは、展覧会が開催されているスウェーデン大使館ギャラリー内。同展で作品を発表している2人のスウェーデン人デザイナー、ウッラ=カーリン・ヘルステンさんとブリット=マリー・クリストファーソンさんが、ワークショップの先生役だ。
ウッラ=カーリン・ヘルステンさんは、スウェーデンのエーデスヘーグに住むデザイナー兼オステルヨートランド羊毛紡績の経営者。ストックホルムの国立芸術大学卒業後、「羊の毛布」などウールを用いた作品で、数々のデザイン賞を受賞し、国内外で展示会を行うなど幅広く活躍中だ。
また「Do Redo」という手仕事普及運動も、ウッラ=カーリンさんが行う大切な活動のひとつ。「Do Redo」とは、スウェーデン語で「Do it Yourself(自分で作ろう)」の意味。活動は、ユーズドのニットアイテムを回収してリサイクルしたり、伝統的なものからアイディアをもらったり……、とエコかつ"温故知新"的な取り組みだといえる。つまり、彼女は、「手仕事」のあたたかみ、面白さを伝える担い手なのだ。
一方のブリット=マリー・クリストファーソンさんは、スウェーデンを代表するニットデザイナー。80年代から技術、手工芸の発展、伝統など様々な観点から「編みもの」に取り組み、独自のデザインを創り上げている。独創的な編みもの作品を生み出す彼女も、オステルヨートランド羊毛紡績の毛糸の愛用者だ。
みんなでつくると楽しい!
ワークショップは、デザイナーの2人が簡単な自己紹介を済ませると始まった。参加者は、約20名。申し込み受け付け早々に、定員いっぱいとなる人気だったという。
「さぁ、好きなものからつくりはじめてください」とにこやかな挨拶で、手渡されたのは14種類の編みもののパターン見本と、オステルヨートランド羊毛紡績製の7色の毛糸。編み物ビギナーな私は、何からはじめていいのかわからず……。新品の棒針を持って固まった。
周りを見渡すと、皆すいすいとお手本を見て編み上げている。しかも、難しいと言われたパターン見本を編み上げていっている! 私の戸惑いぶりを見かねた隣の席の参加者が、"目"のつくり方を教えてくれた。ようやくスタート地点に立ち、いちばん簡単な「ストライプ」というパターンに挑戦することに。
7色の中から緑色の毛糸を選び、ぎこちない指の動きながら針を糸に「くぐらす」、「糸を絡める」、「ぬく」といった単純作業に没頭。棒針を目で追いながら、無心にもくもくと作業を進めていた。完成したものは、ちょっと縮れた作品となったが、それでも一本の糸から、作品ができあがっていく感覚は新鮮で、とてもわくわくさせられた。
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編み物歴が長い参加者の手の動きは、とってもはやい。リズミカルにどんどん編み上げていく |
指定された目を半分にして編んだら、小さな円ができるかと思いきや、半円に。こんなハプニングもおきる(同席した参加者の作品) |
「家でひとりで編むより、誰かと一緒にやるほうが楽しいですよね」とは、参加者のひとり。確かにわからないことは教え合えるし、編み方のパターンもそれぞれのアイディアが参考になる。ワークショップ参加者には自分でつくった作品を持参して、同席した参加者に見せる人や編みものカフェ開店の計画を語る人など、さまざまな人がいて、気づいたら編み物好きの輪ができあがっていた。
同席していたウッラ=カーリンさんの娘・カーリンさんに、家で編みものを習ったりするの? と聞くと、「学校でみんな習うんですよ」とにっこり。編みものがスウェーデンの伝統文化として根付いている証拠だとすこし嬉しくなる。