民主党はこのほど、今国会へ提出を予定している違法・有害情報の規制法案のたたき台となる案をまとめた。同党の「違法・有害サイト対策プロジェクトチーム(PT)」事務局長の高井美穂衆議院議員が私案としてまとめたもので、有害情報の定義を明確化して規制のための法的根拠を示したほか、プロバイダーに対して閲覧防止措置を義務付けており、違反した事業者に行政指導を行う根拠となりうる内容となっている。
高井議員は、違法・有害情報の青少年に与える影響が大きくクローズアップされ始めた2006年、「出会い系サイトにアクセスして青少年が被害に遭う場合は圧倒的に携帯経由が多い」との認識から、未成年が契約者の場合にフィルタリングサービスを受けるか否かを携帯事業者が保護者と未成年に意思確認をすることを義務付ける「電気通信事業法の一部を改正する法律案」を議員立法で提出した(今国会で継続審議中)。
その後も、「携帯電話経由で閲覧した出会い系サイトが原因となって犯罪の被害に遭う青少年の数が減っていないことや、『闇の仕事人』などのような犯罪に誘引するサイトが後を絶たないなどの現実から危機感を強めた」(高井議員)結果、自らを含む民主党議員16人が昨年末に立ち上げた違法・有害サイト対策PTの事務局長として、私案をまとめた。
私案の作成にあたっては、表現の自由や、閲覧制限が検閲にならないかなどについて、党内の勉強会を通じて検討し、「インターネットの自由な発展の阻害とならないような法案づくりを心がけた」(同)という。
同案では、これまで定義付けが難しいとされてきた有害情報の定義について、
- 児童に対し、著しく性的感情を刺激する情報
- 児童に対し、著しく残虐性を助長する情報
- 児童に対し、著しく自殺又は犯罪を誘発する情報
- 特定の児童に対するいじめに当たる情報であって当該児童に著しい心理的外傷を与えるおそれがあるもの
と明確化、いわゆる"自殺サイト"や"学校裏サイト"などについても、規制の対象としている。
また、サイト開設者とプロバイダーに対しては、違法・有害情報の「閲覧防止措置」を義務付けた。サイト開設者に対しては、自ら管理するサイト上に違法情報が掲示されていることを知った場合には同情報の閲覧防止措置(同措置として削除を想定)、自ら管理するサイト上に有害情報が掲示されていることを知った場合は、フィルタリングソフトの稼動対象とするための「セルフラベリング(有害情報であることの表示)」の実施など、有害情報が児童に閲覧されないようにするための措置を義務付けている。
また、プロバイダーに対しても、「自らがインターネットに接続する役務を提供するサイト上の違法・有害情報」について、サイト開設者同様の措置を義務付けている。
さらに、保護者の責務として、児童によるインターネット上の違法・有害情報の利用を防止するため、フィルタリング導入などの措置を義務付けると同時に、携帯電話事業者に対しては、保護者がフィルタリングソフトを稼動させないよう申し出た場合などを例外として、原則フィルタリングソフトを稼動させなければならないとしている。
これらの点に関して高井議員は、「これまでは違法・有害情報の基準がなく無法状態だったが、有害情報の定義により、悪意のあるサイト開設者やプロバイダーへの抑制効果が期待される。また、こうした情報の削除に応じないサイト開設者やプロバイダーに対して、行政指導を行う根拠ともなりうる。フィルタリングに関しては、携帯事業者が認めた公式サイトしか閲覧できない現状のホワイトリスト方式だと、SNSなどのコミュニティサイトを閲覧できなくなるというような問題もあり、同方式の見直しも含め、今後の精度向上を期待している」と話している。
法案の日程については、「今回の私案について、党の違法・有害サイト対策PTで議論した後、3月中には民主党案を作成したい。自民党も同様の法案を考えているということなので、できれば衆議院青少年特別委員会での委員長提案による議員立法とするなどして、一緒にいい案を作っていきたい」(高井議員)としており、今後の展開が注目される。