首都高速道路は1日、現在建設途中の中央環状新宿線・大橋ジャンクション(東京・目黒区)を一般公開した。現場に隣接する桜の名所・目黒川河畔で「目黒川桜まつり」が開催されたことに合わせ、休工となる日曜日に工事の現場を公開したもので、近隣住民や、目黒川を訪れて巨大な建造物を目にした花見客などが来場していた。

中央環状新宿線・大橋ジャンクションの建設現場(今年2月、写真提供:首都高速道路)

展示会場となった同社大橋分室(手前建物)は桜まつりの休憩所としても開放され、来場者に飲み物や首都高グッズなどが配られていた

大橋ジャンクションは中央環状新宿線の南端にあたり、同線と3号渋谷線(東名高速道路に接続)を接続する役割を果たす。完成すれば、東名高速道路方面、渋谷・新宿・池袋の三大副都心、そして東北自動車道方面の間が相互に結ばれ、混雑しやすい都心環状線を通らなくても行き来が可能になる。しかし、既存の3号渋谷線が高架線であるのに対し、新設の中央環状新宿線は地中深くを走る地下線なので、通常のランプウェイで接続すると車で走れない急勾配になってしまう。そのため、1周約400mのループ状道路を2周して上り下りする構造になっている。

ジャンクションの模型。今回の建設は周辺の再開発事業の一環でもある

3号渋谷線は高架、中央環状新宿線は地下トンネルで、このジャンクションを2周して一気に上り下りする

ジャンクションは巨大な楕円形をしており、長い方の径が約175m、短い方の径が約130m。これは国立競技場のグラウンドと同じかやや広いほどの大きさになる。地上に見えている部分は高さ約35mで、これだけでも十分巨大だが、地下にもそれとほぼ同じ深さ約36mの構造があり、20階建てのビルにも匹敵する規模となっている。周辺への排気や騒音の影響を防ぐため完全なトンネル構造で、ループ部を輪切りにすると2周×2方面=計4層の道路が入っている形になる。そのほか、各層には道路だけでなく通風用の小トンネルも設けられている。

ループの径は国立競技場のトラックに匹敵。地下にもループ道路やそれに接続するトンネルなどが建設中で、地上に見えている部分は大きいが構造物全体の上半分ほどに過ぎない

この日は既に主要な構造のできあがった一部のトンネル内と、ループの内側が公開された。

ループの中腹に開けられた通路から中へ入る

ここに2車線の道路が走る。さらにこの下に1層、上に2層の道路が設けられている

右側(ループ内側)にあるのが通風用のトンネル。それにしても、車を通すだけにしてはやけに天井が高いのが気になる(理由は後述)

断面図をよく見るとこの層(「現在地」のラベルが貼ってある空間)だけ高さが違う

先のほうを見ると、ループの切り口のあたりに突然茶色の鉄骨が渡され、高さが半分くらいになっている。実はこの先だけトンネルが5層になっている

5層部分(図の緑色)には周辺の道路とほぼ同じ高さに床を渡し、ここにループ内側に入るための作業用通路などを設ける予定。開通時は外は見えないので、この構造を知っていると走りながらいつ地下に出入りしたかがわかる(特に役には立たないが)

ループの内側は工事が始まる前には東急バスの車庫だった場所で、さらに昔には東急玉川線(「玉電」と呼ばれた路面電車)の車庫があった。ジャンクション完成時には、面積にしてループ内側の半分弱の土地に換気所が設けられるが、残りの土地の用途はいまのところ未定。ループの内側は何も建っていなくても法的にはあくまで「道路」という扱いなので、その使途にも一定の条件があり、その枠組みの中で何が可能かを検討していくという。

この先で西行き、東行きに分岐しさらに3号渋谷線に接続する

よく見ると既存路線にも分岐路を乗せる準備がされている。ちなみに渋谷線は1971年に開通しているので、40年近くかかってこの部分が日の目を見ることになる

ジャンクションとあわせて、その直前では中央環状新宿線の最後の本線部分となる大橋シールドトンネルが建設中で、そこで使われるセグメント(トンネルの壁にあたる部品)の実物も展示された。この区間では中折れ機構を備えたシールドマシン(トンネルの掘削・構築機)を採用し、従来のシールドトンネルでは難しかったという小半径(R123.5m)の曲線を実現した。

シールドトンネルを構成するセグメントと呼ばれる部品の実物も展示。「225-C」と書いてある(右写真)が、これはシールドマシンのスタート位置から225番目のセグメントになることを示している

セグメント同士をつなぐボルトも特注品。セグメント自体はシールドマシンによって配置されるが、最後にこのボルトを締めるのは人の手で行われる

地面の白いテープがトンネルの大きさを表しており、セグメント外径は12.65m

中央環状新宿線は今年12月までに北側の5号池袋線-4号新宿線の間が開通し、南側の4号新宿線-3号渋谷線間は平成21年度(2009年度)中に開通する予定。さらに、3号渋谷線から湾岸線までを結ぶ中央環状品川線も昨年11月に起工式が行われており、今後建設が本格化する。また、大橋ジャンクション周辺は首都高速道路と都・区が一体となって再開発事業を進めており、住居を中心とした地上41階建て、同25階建ての2棟の複合ビルが建設される予定。その際にはループの屋上部分は緑化され、2棟のビルから伸びる遊歩道のような使い方が計画されているという。

1970年ごろと現在の空撮写真。ジャンクション予定地には車庫のほか住宅や商店なども建ち並んでいたので、計画は何度かの変更を経て現在の形となった

シールドマシンを方向転換するときに使ったベアリングと、マシン先端で岩盤を削るカッタービットの実物

「玉電」のあった風景や、目黒川を撮り続けた地元の藤野和枝さんの作品も展示

ジャンクション完成後は屋上部分を緑化し、公園のような空間としても利用する計画(写真提供:首都高速道路)