NVIDIAが2026年5-7月期の決算発表を行った。世界最大の半導体ブランドであるNVIDIAの売り上げは前年同期比で約2倍の約15兆円に達した。市場関係者の予測をさらに上回る空前の決算発表は、AI市場が未だに急激な成長期にあることを示している。

GPUベースのAIアクセラレーターでNVIDIAを追い上げるAMDも前年同期比50%増という記録的な売り上げを達成したが、その差は開くばかりである。かつてはGPU市場を2分した両社だが、急成長するAI市場でAMDはNVIDIAに追い付くことはできるのだろうか?

1.けた外れの成長を示すNVIDIAの決算発表と全盛期のIntelとの共通点

四半期の売り上げが15兆円に達する超巨大半導体企業NVIDIAの決算発表には、そのけた外れの成長の秘密を解く数字がちりばめられている。特に75%という破格の粗利益率は、級数的なスピードで成長するAI市場で、NVIDIAが未だに圧倒的な価格支配力を保有していることを物語っている。

確かに、NVIDIAは毎年のペースでロードマップを更新し、そのロードマップ通りに新製品投入を継続している。この半導体開発スピードが、テック企業におけるAIプラットフォーム開発スピードにがっちり同期している事が、NVIDIAの成長スピードをバックアップしている。言い換えれば、各巨大テック企業は、NVIDIAの新型半導体の開発スピードに合わせてデータセンターへの巨大設備投資を計画実行しているということだ。

そして、その巨大な投資額の60-70%がNVIDIAの高価格の半導体製品の購入代金に充てられ、これがNVIDIAの現在の独占的なポジションを可能とし、圧倒的な価格支配力を支えている。

  • NVIDIAの最新AIプラットフォーム「Vera Rubin」

    NVIDIAの最新AIプラットフォーム「Vera Rubin」はエージェンティックAI時代の基盤として開発された (出所:NVIDIA)

この図式は、自社のCPUロードマップをそのままパソコン市場のロードマップとして確立した全盛期のIntelと共通する部分がある。1990年代のパソコンメーカー各社は定期的に更新されるIntelのCPUロードマップ通りに自社のパソコン製品を設計/企画し、そのマーケティング費用は「Intel Inside」と称する広告キャンペーンにのっとって実行されるが、その巨額のキャンペーン費用の大半はIntelが独占的に決定した高額なCPU販売価格からのキックバックという形で還元される、という図式だった。

しかし、現在のNVIDIAにみられる市場支配力は、NVIDIAの直接の顧客である巨大テック企業を超える範囲に拡大している。NVIDIAは巨大テックが競って投入するデータセンターへの設備投資をバックアップすべく、金融大手を巻き込んでのAIインフラ整備を支援するファンド基盤を構築しつつある。このスキームで金融大手が担保とするのが5兆ドルを超えるNVIDIAの時価総額という信用補完だ。さらに、AI技術の戦略的重要性が増す中、データセキュリティの観点から急増する各国のソブリンAI基盤需要へのサポートも積極的に行っている。

今回の決算発表では、次年度の2028年1月期の売り上げが前年度比で7割増となる見通しも発表し、NVIDIAの成長には減速の気配がまったく見えない。

2.古典的なアプローチで着々と実績を積むAMD

最近の米国リサーチ会社Mercury Researchの発表によると、AMDのクライアントPC市場(デスクトップとモバイルの合算)でのCPUシェアが30%を超えたという。

Armアーキテクチャーの存在が同じ市場で15%以上に成長した事を考えると、x86アーキテクチャーCPUの市場においては今や、AMDはIntelと互角の存在となっていると考えられる。

新たなターゲットをNVIDIAに絞ったAMDは、AIインフラの覇権掌握に奔走するNVIDIAの派手な立ち回りに対し、AI開発に必須となるCPUとGPUという半導体製品の両輪で着々と実績を積んでいる。

最近のAMDの動きで目立つのが、サーバー市場に投入する高性能なEPYCプロセッサー製品と、MI455Xに代表されるInstinctアクセラレーターで構成された大規模なラックマウントシステム「Helios」の展開である。半導体製品レベルの提供からさらに一歩進めたシステムレベルでの製品提供で、顧客のサービス投入時期(Time-to-Market)を早め、システム構築コストを低減するという、いかにも半導体ブランドの古典的な顧客アプローチの手法であるが、その結果は着実に出ており、META、Oracle、Microsoftといった巨大テックに加えて、AnthropicというAI技術開発で先頭を突っ走る大きな顧客も手中にした。

  • 「AMD Helios」のイメージ (出所:AMD)

    「AMD Helios」のイメージ (出所:AMD)

AMDにとっての一番の強みは「NVIDIAに対抗できる唯一のオルタナティブ(代替品)」という市場での確固たるポジションであろう。

かつて、私がAMDに勤務した時代ではIntelはAMDの8倍くらいの規模で、CPU市場で圧倒的な支配力を持っていた。これは現在のAMDとNVIDIAの事業規模の比較とほぼ同じである。

疾走を続けるNVIDIAという「ウサギ」に対して、着実に実績を積むAMDという「カメ」が追い付く日が来るかもしれない。