誰のせいだか分からないが、早期警戒機の調達を巡って、ボーイングE-7ウェッジテイルが候補に挙がりながら選に漏れる事例がいくつか続いている。そこで存在感を増しているのが、サーブのグローバルアイだ。大型旅客機ではなくビジネスジェット機をベースとしながら、空だけでなく海上や地上も監視するという。グローバルアイの能力を支える「目」、エリアイERレーダーの仕組みを見てみよう。。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照
UAE、スウェーデン、フランス、NATO、カナダが採用
サーブ・グローバルアイという名前で販売されているが、機体の部分はボンバルディアのビジネスジェット機、グローバル6500を使用している。サーブが関わっているのは、そこに搭載するミッション機材の分野だ。
早期警戒機でエアフレームから新規に起こしたのはノースロップ・グラマンのE-2ホークアイぐらいのものだが、これは空母搭載用という前提条件があったため。開発経費や維持管理の負担を考えて、既存の輸送機やビジネスジェット機を利用する方が多数派となる。
このグローバルアイ、すでにアラブ首長国連邦(UAE : United Arab Emirates)で導入しているほか、本家スウェーデンが3機、フランスが2機の調達を決めている。それに加えて、NATOとカナダが採用を表明した。
このうち、フランスとNATOはE-3セントリーの後継となる。してみると、グローバルアイはE-3の後継が務まるだけの能力がある機体である、とみなされている可能性がある。ただしそれ以外の理由もありそうだが。
閑話休題。サーブは以前から、PS-890エリアイ(EriEye)というレーダー製品を手掛けている。棒状の外見を持つAESA(Active Electronically Scanned Array)レーダーで、固定式。これを機体の背面に支持架を介して取り付ける。
スウェーデンは、双発ターボプロップ旅客機にエリアイを載せた機体を開発して、複数のカスタマーを得た。サーブ340との組み合わせでは自国に加えてタイとポーランド、サーブ2000との組み合わせではパキスタンとサウジアラビア。また、リージョナルジェット旅客機のエンブラエルERJ145との組み合わせでは、ブラジル、ギリシア、メキシコ。管制員のコンソールは、サーブ340なら3席、サーブ2000やERJ145なら5席。
そのエリアイの改良型、エリアイER(Extended Range)をグローバル6000に載せたのがグローバルアイだ。
ベース機が足の長いビジネスジェット機なので、グローバルアイは12時間以上の滞空が可能とされる。しかも機体がそれほど大きくないから、滑走路が短い飛行場でも運用可能。これはスウェーデンみたいな国にとっては強みとなる。
エリアイ・レーダーとは
エリアイ・レーダーの中核であり、アンテナを収容する「バー」の全長は約10メートルとされる。
基本型エリアイが使用する電波の周波数帯はSバンドで、送受信モジュールのパワー半導体素子はガリウム砒素(GaAs : Gallium Arsenide)素材。標定距離(instrumented range)は450km、探知可能距離は350kmとの数字がある。
標定距離とは、レーダー・システムが信号を処理して、ディスプレイ上に反射波を示すブリップを表示できる限界距離のこと。実際にどの程度の距離で探知できるかは、ターゲットのレーダー反射断面積(RCS : Radar Cross Section)などに左右されるため、場合によりけりとなる。
新しいエリアイERレーダーの標定距離(instrumented range)は、350nm(650km)を超えるとされる。この数字は前述したエリアイのそれと比較すると、五割増に近い。送受信モジュールで使用するパワー半導体素子は、窒化ガリウム(GaN : Gallium Nitride)素材に改めた。
AESAレーダーは電子的に首を振るので広い範囲をカバーできるが、それでも前後には死角が残る。エリアイの場合、カバーできる範囲は300度(左右それぞれ150度ずつ)とされる。だから、主たる監視対象に側面を向けて飛ぶ運用が基本になろう。つまり、飛行経路の選定が重要になる。
機械的にアンテナを回転させるロートドームは全周を均等に監視するのが一般的な使い方だが、固定式のAESAレーダーでは複数のアレイを用意しないと死角ができる可能性がある。一方で、特定のセクターを集中的に “視る” 使い方もできる。
エリアイにはEGIS(Erieye Ground Interface Segment)というソフトウェア・コンポーネントがあり、これがLink-Eデータリンクを通じた地上との双方向データ交換を司る。管制機能を地上に降ろせば、その分だけ機上の負担は減り、機体の小型化と経費低減につながる。その代わり、通信機能が重要になる。
空だけではない、海上・地上も監視する「マルチドメイン」
グローバルアイは「マルチドメイン対応」を売りにしている。つまり航空機やミサイルといった経空脅威だけでなく、洋上の艦船や地上の車両に監視の目を光らせることもできますよというわけだ。
洋上監視のため、エリアイERレーダーに加えて、胴体下面に海洋監視レーダーとしてレオナルド製シースプレイ7500EというXバンド・レーダーを備えるのがグローバルアイの特徴。E-3セントリーも途中から洋上監視能力の強化を図ったが、そのために専用のレーダーを足したわけではなく、既存レーダーの能力向上で対処した。
洋上ターゲットの識別には、船舶自動識別システム(AIS : Automatic Identification System)の受信機に加えて、電子光学センサー(テレダインFLIR製のSTAR SAFIRE)や、シースプレイ7500Eの逆合成開口レーダー(ISAR : Inverse Synthetic Aperture Radar)モードを使用できる。
ちなみにシースプレイ7500Eは、ゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)のMQ-9Bシーガーディアンも搭載している。
また、対地捜索では移動目標の識別(GMTI : Ground Moving Target Indication)が可能だとしている。つまり地上を移動する車両の動向が分かるという意味である。といっても、米空軍のE-8C J-STARS(Joint Surveillance Target Attack Radar System)や、(すでに退役したが)英空軍のセンティネルR.1と比べて、いかほどの能力があるのかは分からない。

