今年は、国際光年なんだそうです。で、光のなかでも一番キレイなのは、レインボー、虹でございます。ってなわけで、虹遊びのお話です。いや、科学者はかなーり、虹遊びしてるんですよ。

最近、虹を見ることが多いです。ワタクシの場合は、SNSで知人が教えてくれるからってのが大きいですな。空を見るのが趣味な人にいわせると、もともと結構みえるのだとか。気候変動とかじゃないよということで、そんなもんですかねーであります。

その虹ですが、カンタンにつくることができますな。霧吹きを調達してきて、晴れた日に、太陽を背にして、シュッシュと水をふくと、カンタンに見えるってなものです。霧吹きは百均とかでも手軽に入手できます。そんな虹遊び、したことありませんか?

虹遊びには、水も使わない手が色々ありますな。コンパクトディスクも虹色にキラキラします。これは、細い筋がたくさん等間隔に刻まれているからでございます。この細い筋が等間隔にあるものを、グレーチングとかいいます。あ、道路のふちの、雨水をおとす側溝用の細長いフタにもグレーチングというのがありますな。グレーチングは、格子とかスノコって意味でして、もともと同じ意味です。虹遊びにつかえるのは、 ミリメーター以下の格子で、光学グレーチングとか回折格子なんていったりしますな。回折ってのは、光が起こす現象の名前なんですが、ちょっとはしょっときます。

あと、プリズムもあります。これは、教材や実験キットなどでないとなかなかありません。百均でも、夏休みなどに見かけることもありますが、ちょっとマニアックでしょうか。でも、物欲を満足させるという点では、グッドでございます。

さてさて、この虹遊び。磁石、レンズなどとともに、科学をおーきく進歩させた、スゲー遊びなのでございます。大勢の科学者が、日々実験と称して、この 虹遊びをしているのですな。 あ、そういうのを分光分析とかスペクトル分析とかいうんですが、ここでは、虹遊びで通しますのでよろしく。

虹遊びで何がわかるかというと、これがもう、知らない人間には想像を絶するレベルでございます。いくつかご紹介いたしましょー、ごくごくざっくりですが。

1. 太陽に金があることがわかる

はあ、何言ってんの、という感じですがわかるんですね。これを実感するには、ガスコンロの火の色を思い浮かべていただくとありがたいのです。青いですよね。見慣れているから何とも思いませんけど、あの色をガス以外でだせるか? ということです。あの青は、ガスの成分に対応した色なんですね。もっとハッキリするのは、花火です。あの色とりどりの色は、火薬に銅やストロンチウムなどを混ぜ込んで、その成分があることで、出しているのです。炎色反応とかいったりします。ということで、太陽の光に金特有の色の光かたがあるからわかる。というわけなんですね。

でも、黄色とか赤とか虹だとみんなゴッチャに見えてしまうじゃないか。とおもった方はスルドイですね。そうなんです。太陽の光を虹に分けても全部の色が見えるんですよ。ではどうするかとかいうと、実は、虹のなかに暗くなる部分をみるんです。特定の物質は、熱いと特定の色の光をだすんですが、冷たいとその色の光を「吸う」んです。で、虹のなかの、ある色だけピンポイントで暗くなれば、その物質がある証拠というわけなんです。

こうして、太陽に金があることがわかったんです。ま、取りにいけませんけど。あ、吸われたところを暗線とか吸収線とかいったりします。まあ、この手の専門用語はググるときにでもご活用くださいませ。

ちなみに、太陽の光を虹遊びしたうえで、特定の色が吸われている写真が、アメリカの国立光学天文台から提供されております。吸われているのがいちいちいろんな物質の成分に対応しているんですなー。

アメリカ国立光学天文台のWebサイトに掲載されている太陽のスペクトラム画像 (C) N.A.Sharp, NOAO/NSO/Kitt Peak FTS/AURA/NSF

2. 新元素の発見ができた

はい、これは太陽に金、の応用でございます。ある色が抜けたり、輝いたりしたら、対応する物質があるわけです。ですが、対応するものがなければ、それは未知の物質ってことにあいなるわけですよ。ヘリウムはまさにそのようにして、太陽で発見された元素でございます。あとから地球にもあることがわかったってな話をむかーしかいていますなー

3. 宇宙が膨張していることがわかった

えー、宇宙は昔はいまより濃密で、ギュウギュウにつまっていた。ってなお話しをきいたことがあるでしょうか。ビッグバンとかいう、あれでございます。これは、まず、宇宙全体が風船みたいに膨張しているってことがわかって、それを逆算すると、というなんですが、これも虹遊びでわかったのでございます。

先ほどから、虹のなかのある色だけが欠けるって話をしております。これは、もちろん遥か彼方の銀河にも通じるのですね。で、近い銀河と遠い銀河とで、この欠ける色をくらべると、なんと色が遠いほど、より赤っぽくなることがわかったんです。

でで、これはどうしてかーというと、実は虹の色は、光っているものが遠ざかるスピードが速いほど、全体に赤色に、逆に近づくスピードがはやいほど、全体に紫色にずれるのです。といっても、青い車が、猛スピードで遠ざかっても赤くなったりはしません。変化はすごくわずかなんです。だから普通に目でみてもわからんのですねー。

ところが、虹色のわけかたをきつーくして、特定の物質が色をかけさせているところを細かくくあらべれば、わかるのでございます。これを使って、宇宙の膨張がわかったのでございます。

ググるときは、ドップラー効果でございます。

4. 遠くから磁場の強さがわかる

磁界ということもございますな。まあ、磁石の影響を受けるところでございます。地球も巨大な磁石ですが、まあ、これはコンパスの針がふれるのでわかります。で、磁場が強いと、コンパスだけでなく、光も影響をうけちゃうのです。その結果、特定の物質が欠けさせる色が二重、四重になったりぼやけたりします。まあ、微妙~な変化なんですが、これで太陽の黒点は磁力が強いとか、そんなこともわかるのです。ググるときは、ゼーマン効果というおまじないが効きます。

5. 惑星が発見できたー

惑星というと、水金地火木土天海というのは、20世紀の常識。いまや、2000個以上の惑星が発見されております。で、その名前を投票できますってな話も紹介いたしました。で、その2000もの惑星は、太陽を回っていない惑星なのです。ほかの星をまわっているんですなー。そう、イスカンダルやらガミラスやら、スターウォーズのダゴバやナブーやら(世代がバレますな)、それとおなじよう世界でございます。で、それを見つけたのも虹遊びなんでございます。またまた物質によって特定の色がかける話ですよ。といっても、もともとは惑星の光そのものはとらえられませんでした。あくまで、地球にとっての太陽、中心にある星の光を虹遊びして、調べたのでございます。

さて、惑星は中心の星のまわりをまわりますな。これは、中心の星に引力でひっぱられているからでございます。で、この引力は、おたがいさまでして、中心の星も惑星にひっぱられているんです。手を取り合って、グルグルまわる、楽しげなカップルか、ペアスケートでも思い浮かべてくださいませ。さて、ということで中心の星もわずかに揺さぶられる。つまりスピードがかわるのです。これ、宇宙の膨張でもでてきました。この、まあ、わかるかいなという、めちゃ小さな変化をとらえた惑星の発見は、ちょうど20年前の1995年10月6日のことでございます。

発見したのは、スイスはジュネーブ大学のマイヨールさんでした。実は、この方法はそれまで散々試されていたんですがダメで、大御所が太陽系外には惑星などめったにないという発表までなされていたんですね。マイヨールさんは、職人肌の人で、ものすごーく精密に虹遊びをすることで、その常識を突破したんでございます。この成果で多数の賞を受けているんですが、今年は、日本版ノーベル賞ともいえる、京都賞の受賞が決定しています。

思いのほか長くなっちゃいましたが、虹遊びでわかることは、まだまだたくさんあります。物質を突き止められるので、毒の発見に使われたり、スピードがわかるので、野球の球速からスピード違反にも、ある意味使われています。使うのは光でなくて電波ですけどねー。ということで、またこのネタ、でてくると思います。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。