ロームは、2018年5月23日から25日にかけて、パシフィコ横浜にて開催されている自動車技術者のための自動車の最新技術・製品の技術展示会「人とくるまのテクノロジー展2018 横浜」において、2018年夏の製品化を予定している開発中の昇降圧DC/DCコンバータの用途にも対応可能な降圧DC/DCコンバータ「BD8P250MUF-C」のデモ展示などを行っている。

同製品は、12Vから5Vなどへの降圧DC/DCコンバータながら、昇圧IC「BD9302NUF-C」と組み合わせることで、昇降圧DC/DCコンバータとしての利用を可能とするもの。独自のQuick Buck Booster技術により、入力電圧の変動に高い応答性を提供することで実現したもので、これにより用途に応じて、降圧DC/DCコンバータのみでの利用、昇降圧DC/DCコンバータとしての利用といった使い分けや、基板のパターンにあらかじめ昇圧ICの搭載部分を用意しておくだけで、降圧だけで問題は生じないと思っていたが、条件によっては昇圧を必要とする場合が確認された場合であっても、新たに基板を起こし直して評価などを再びやりたくない、といったニーズに対応することが可能となる。

  • 降圧DC/DCコンバータ「BD8P250MUF-C」のデモ

    降圧DC/DCコンバータ「BD8P250MUF-C」のデモ。左が降圧DC/DCコンバータとして利用した場合。右が昇降圧DC/DCコンバータとして利用した場合。降圧のみでも、基板上に昇圧ICのランドパターンを用意しておくことで、後々、昇降圧に変更することが容易に行える

従来、昇降圧DC/DCインバータは、常に昇圧を行う必要があるが、自動車では、実際に昇圧が行われるのは数ms程度のクランキング(出力電圧が低下する現象)などの場合が多く、動作の99.9%は降圧であるとも言われており、非効率と言わざるを得なかった。そうした考えから、昇降圧コンバータよりも高い効率を降圧コンバータで実現しつつも、必要な時だけ昇圧を実現できる方法の探索の結果、生み出されたのが同技術であり、同製品となる。

具体的には、昇圧用スイッチを昇圧比を1.5倍に固定とすることで、PWM制御を不要とし、入力電圧変動に対する応答特性を向上させたという。

また、併せて昇降圧DC/DCコンバータではほとんど採用されてこなかったスペクトラム拡散機能を搭載。これにより、放射電磁雑音(EMI)の低減も可能としたとのことで降圧コンパレータ構成、昇降圧コンパレータ構成ともに「CISPR25 Class 5」に対し、余裕をもって対応することができるようになったとする。

なお、同社ブースでは、このほか、自動車のエレクトロニクス化を支援するさまざまな半導体デバイスのデモ展示を行っているほか、同社の強みの1つであり、フォーミュラEのVenturi Automobilesが活用していることでも知られるSiCの紹介なども行っている。

  • フォーミュラEのVenturi Automobilesに提供しているSiCインバータ

    フォーミュラEのVenturi Automobilesに提供しているSiCインバータ。左からシーズン2、シーズン3、シーズン4とシーズンを経るごとに小型化が進んでいることがわかる

  • 「環境」「安全」「快適」を実現する未来のクルマのデモ

    「環境」「安全」「快適」を実現する未来のクルマのデモ。同社のさまざまな半導体が各所に適用されている