この半導体ニュースのまとめ
・TDKが定格100V、静電容量10μFの低抵抗タイプ樹脂電極MLCCを量産開始
・同一サイズの従来品比で2倍の大容量化を実現し、部品数と実装面積を半減
・48V化が進むAIサーバー、ヒューマノイドロボット、xEVなどの電源ラインに対応
TDKは、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の低抵抗タイプ樹脂電極品「CNシリーズ」として、温度特性X7R、定格電圧100V、静電容量10μFの新製品を開発し、同月より量産を開始したことを発表した。
製品サイズは3225サイズで、外形寸法は3.2mm×2.5mm×2.5mm。同サイズの100V対応低抵抗タイプ樹脂電極MLCCとして、業界最高水準の静電容量を実現したとしている。
主な用途として、AIサーバー、ヒューマノイドロボット、xEV、産業機器などの48V電源ラインにおける平滑やデカップリングを想定する。
48V化で100V対応MLCCの大容量化が必要に
AIサーバーやヒューマノイドロボット、xEVでは、電力損失の低減やワイヤハーネスの軽量化、電源システムの高効率化を目的に、48V系電源の採用が広がっている。
電源電圧を引き上げれば、同じ電力を供給する際に流れる電流を減らせる。配線で発生する損失を抑えられるほか、ワイヤハーネスを細くして、機器や車両の軽量化につなげることが可能となる。
一方、48V電源ラインで使用するMLCCには、電圧変動やサージなどを考慮した100Vの定格電圧に加え、電源電圧の平滑化やノイズ抑制に向けた大容量化が求められる。
MLCCの静電容量を増やすために複数の部品を並列に実装すると、プリント基板上の実装面積と部品点数が増加する。特にAIサーバーやヒューマノイドでは、高い電力密度が求められる一方、電源回路に利用可能な空間が限られるため、MLCC単体の大容量化が重要となる。
従来品比2倍となる10μFを実現
TDKは、セラミック材料の選定と製品設計を最適化することで、3225サイズ、定格100Vで10μFの静電容量を実現した。
同社の同一サイズの従来品が5μFであったのに対し、新製品は2倍となる10μFまで大容量化した。従来品2個を使用していた回路を新製品1個へ置き換えられるため、MLCCの部品数と実装面積を半減できるという。
部品数を減らすことで、プリント基板や電源回路の小型化に加え、実装工程の簡素化や部品管理の負担軽減にもつながる。
48V系電源の採用が進むAIサーバーでは、電源ラインの平滑や半導体への安定した電力供給に多数のコンデンサが用いられる。ヒューマノイドでも、バッテリーからモーター、アクチュエータ、制御回路などへ電力を供給するため、高密度かつ耐久性の高い電源回路が必要になる。
TDKは新製品の大容量化によって、限られた基板面積の中で必要な静電容量を確保し、機器の小型化と電源回路の高密度化を支援する。
樹脂電極で基板の曲げによるクラックを抑制
MLCCは、セラミック誘電体と内部電極を交互に積層した電子部品である。小型で大きな静電容量を得られる一方、セラミック材料は外部からの機械的な応力によってクラックが生じる可能性がある。
例えば、MLCCを実装したプリント基板が組み立てや使用時に曲がると、基板の変形に伴う応力が端子電極を通じてMLCC本体へ伝わる。クラックが内部電極まで進展した場合、絶縁抵抗の低下やショートにつながる可能性がある。
樹脂電極品は、MLCCの端子電極に導電性樹脂層を設け、基板から加わる応力を吸収する。基板の曲げや振動、温度変化などに対する信頼性を高められるため、車載機器や産業機器をはじめ、継続的な振動や衝撃を受けるヒューマノイドなどでの利用に適する。
樹脂電極の抵抗増加を独自構造で抑制
樹脂電極品では、導電性樹脂によって機械的な応力を緩和できる一方、樹脂層を追加することで端子部分の電気抵抗が増え、等価直列抵抗(ESR)が高くなることが課題となっていた。
ESRが高くなると、電流が流れた際の電力損失や発熱が増加する。大電流を扱う48V電源ラインでは、耐クラック性だけでなく、端子抵抗を低く抑えることも重要となる。
TDKのCNシリーズは、端子電極の構造を最適化し、基板実装面側を中心に樹脂層を配置する。基板の曲げによる応力を緩和しつつ、電流経路における樹脂層の影響を抑え、通常端子品と同等水準の低抵抗を実現したという。
新製品は、樹脂電極による耐クラック性、100Vの定格電圧、10μFの大容量、低ESRを組み合わせることで、48V電源ラインの高信頼性化と低損失化に対応する。
AIサーバーからヒューマノイド、xEVまで展開
新製品の温度特性はX7Rで、-55℃から+125℃までの温度範囲において、静電容量の変化率を基準温度に対して±15%以内に抑える。
TDKは車載グレード品と一般グレード品を用意し、AIサーバー、ヒューマノイドロボット、xEV、産業機器などへ展開する。
生成AIの普及に伴ってAIサーバーの消費電力が増える一方、ヒューマノイドや産業用ロボットでは多数のモーターやアクチュエータを限られたバッテリー容量で駆動する必要がある。また、xEVでも補機や制御機器の電動化に伴い、48V系電源の活用が広がっている。
こうした機器では、48V電源ラインの高効率化とともに、振動や基板の曲げに耐えられる信頼性、限られた実装面積に必要な静電容量を収める高密度化が求められる。
TDKは、低抵抗タイプ樹脂電極品のラインアップを拡充し、48V化が進むAIサーバー、ヒューマノイド、車載・産業機器の電源回路における部品数削減、小型化、高信頼性化を支援していくとしている。
