「ソフトバンク」が携帯電話サービスのブランドとして始動してから、2026年10月1日で20年が経過した。これを機に、この20年間のモバイルネットワークの取り組みを紹介する説明会が開催された。
2000年のJフォン東京入社以来、一貫してモバイルに携わり、2026年にはモバイルネットワーク本部長に就任した長野哲也氏は「様々なチャレンジをしてきた。"つながる"に挑戦し続けた20年」と振り返った。
ボーダフォン買収とiPhone投入から始まった20年
ボーダフォンから社名を変更し、ソフトバンクブランドでモバイル事業を展開する「ソフトバンクモバイル」(現・ソフトバンク)が誕生したのは2006年10月1日。それ以来、同社は2008年の国内初のiPhone投入、電波改善宣言、プラチナバンド獲得、イー・アクセスやウィルコムとの経営統合、世界初のMassive MIMO導入といった取り組みを続けてきた。
前述のとおり、ソフトバンクモバイルとしてのモバイル事業参入は2006年。ただしそれに先立つ2004年、総務省から800MHz帯の周波数再編の方針が示されたのを受け、ソフトバンクBBとして無線局免許を申請していた。このとき800MHz帯の割り当ては受けられなかったものの、2005年にグループ会社のBBモバイルが1.7GHz帯の割り当てを受けた。
「当初は本気でゼロから基地局を建設しようと進めていた」(長野氏)というソフトバンクだが、2006年に「大きな決断」(長野氏)をした。それがボーダフォン日本法人の買収だ。1兆円を超える巨額の資金を準備しての買収劇だったが、これによって既存設備や当時1,500万のユーザーを一気に獲得した。
ところが当時のボーダフォンは、1.5GHz帯と2.1GHz帯を60MHz幅しか持っておらず、基地局数も約2万局にとどまっていた。現在までに、それぞれ850MHz幅/35万局超と拡大しているが、当時は限られた資源の中でのスタートで、「プラチナバンドもなく、限られた周波数と基地局で戦わざるを得なかった」と長野氏は振り返る。
その状況で発売したのがiPhoneだ。これが市場でブームを巻き起こし、モバイル利用の中心が通話からパケット通信になって、「インターネットを常に持ち歩く時代になった」と長野氏。これ以降、モバイルの使い方が大きく変わり、ネットワーク負荷も大きくなっていった。
電波改善宣言とプラチナバンドで「つながる」を追求
急増するトラフィックに対応するためにネットワーク強化が必要だとしてソフトバンクが打ち出したのが、2010年3月の「ソフトバンク電波改善宣言」。長野氏は当時を、「(ソフトバンクは)繋がらないといわれていたが、これを繋がるようにしようとした」と振り返る。
基地局倍増計画では、2010年3月末の時点で約6万局だった基地局数を、わずか1年で約12万局まで増やした。同時にWi-Fiスポットの設置も進め、ピーク時には約46万スポットまで拡大した。
基地局の増設にあたっては、ウィルコムが持っていた約16万局の基地局ロケーションを活用した。そのために無線機の小型化も図ったといい、これによって展開が一気に加速したそうだ。伝送路のIP化によるコスト削減も、基地局の増強を後押しした。
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ソフトバンクの無線機。左は2020年のAIR 6488で、周波数帯は3.4GHz帯と3.5GHz帯に対応。重量は100kgを超えているらしい。中央は2025年のAIR 6476で、3.9GHz帯にも対応する。右は2025年から使われているAIR 3255で、対応周波数帯は3.9GHz帯のみだが、1人でも簡単に持てるサイズ
そして2012年3月には、「悲願だった」(長野氏)というプラチナバンドを獲得。全社を挙げて基地局を展開し、わずか9カ月で2万局を設置していた。プラチナバンドは遮蔽物を回り込み、屋内にも浸透しやすく、カバーするエリアが広い。こうしたメリットがあるため、同社にとっては「是が非でも欲しかった」(長野氏)周波数帯域だった。
LTEの整備も同時に進めていた。旧ウィルコム由来の4G網と自社のLTE網を併用できるHybrid 4G LTEの提供(※)、イー・アクセスのLTE網を利用できる「ダブルLTE」の提供といった形で、別の事業者との連携も行っていった。
加えて、それまで基地局ごとに制御を行っていた制御装置BBUについて、複数の基地局を制御できるように集約して、協調制御を行えるようにした。この構成は5Gでは当たり前のものとなっている。こうしたパフォーマンスを向上させる取り組みを継続していった。
さらに大容量のデータ通信時代に向けて世界に先駆けて導入したのがMassive MIMO技術。周波数の有効利用や快適な通信環境の提供を目指して2016年に導入を行った。
ソフトバンクでは、「ユーザー体感」を重視しており、ビッグデータを使うことでユーザー環境でのスループットや応答速度のデータを収集して改善に役立ててきた。パラメーター調整などで活用してきたという。
5G SAの展開を加速、接続状況の「見える化」も
そして現在は、長野氏が「真の5G」という5G SAへの取り組みを進めている。これも国内での提供はソフトバンクが最初だった(※)。SAでは、さらにスライシングやRedCap、VoNRといった新技術の導入にも取り組んでいる。今年6月には「Fast Access」も提供。このあたりは各社さまざまな取り組みをしており、競争が進んでいる領域だ。
まだ広がりの少ない5G SAだが、5G接続時に端末上にそれを表示する機能も9月からスタート。SAによる体験の良さを視覚的にも分かるようにしたいということで、9月29日に発表されたばかりだが、「今後2週間ほどですべてのユーザーがエリア内にいれば表示されるようになる」(長野氏)という(※)。
AI-RANと6Gへ、上り通信の強化と運用の高度化
今後の「新たな挑戦」として長野氏は、AI時代のネットワークへと挑戦していることを説明。「次のステージ」としてはAI-RANの開発と導入、6Gに向けた7GHz帯の屋外実証などを進めており、次世代に向けた取り組みを継続する。
次世代においては、AIやロボティクス、AR/MRといった利用のため、アップリンクの需要がさらに増してくるという考えだ。このあたりは携帯キャリア各社に共通した認識だが、現状のままでは対処が難しいとして、HPUEやUplink Tx Switchingなどの新技術の開発・導入を目指していく。
さらにRANにAIを組み込むAI in RANにより、従来のルールベースの基地局の制御に推論を持ち込み、品質の制御を高度化する実験も行っている。L4Sなどの技術を組み合わせ、XR向けのより低遅延な通信の実現にも取り組んでいる。
AIの活用では、リアルタイムに基地局を監視しながら制御する取り組みが始まっている。ソフトバンクが保有する「あらゆるデータ」(長野氏)を学習させ、通信の知識やノウハウを踏まえて人が行ってきたオペレーションを代替しようと検証を始めているという。
長野氏は、この20年を振り返って、「電波改善宣言をしてプラチナバンドを得るまでが最も大変だった」と話す。
ボーダフォン買収当初の接続に関する不満を解消し、最近では繋がりやすさにおいて1位~2位を争うまで改善してきたソフトバンク。「新しもの好きの社風」(長野氏)によって新技術の導入にも積極的で、特に現在はネットワーク技術に精通する宮川潤一社長のもと、さらなる新技術を含めたネットワーク進化の取り組みを進めていきたいと語っていた。




















