この半導体ニュースのまとめ
・京セラがプリント基板の内部に埋め込んで使用するMLCC「Flat Terminal」を製品化
・特定顧客向けに1005形・静電容量22μF品を第一弾製品として2026年度下期に量産・供給
・独自の工法と構造を背景に特許を取得した独自技術
京セラは8月24日、半導体製造ならびにAIデータセンターで活用される自社セラミック製品に関する説明会を開催。プリント基板の内部に埋め込んで使用する積層セラミックコンデンサ(MLCC)「Flat Terminal」を開発、製品化したことを明らかにした。
第1弾として、外形寸法が1.0mm×0.5mmの1005形で、静電容量22μFの製品を特定顧客向けに2026年度下期から量産・供給する予定としている。
プリント基板の内部に埋め込むMLCC「Flat Terminal」
Flat Terminalは、プリント基板の表面に実装する一般的なMLCCとは異なり、プリント基板の内部に埋め込んで使用することを前提に開発された埋め込みMLCCである。
AIサーバーをはじめとする高性能コンピューティング機器では、CPUやAIアクセラレータの高性能化に伴って消費電力が増加している。負荷が急激に変化した際にも安定して電力を供給するため、プロセッサの周辺には、電源電圧の変動やノイズを抑える多数のコンデンサが配置されている。
一方、プロセッサやメモリ、電源部品などの実装密度が高まる中、プリント基板の表面だけで必要な部品の実装面積を確保することは難しくなりつつある。
Flat Terminalをプリント基板の内部に埋め込むことで、基板表面の実装スペースをほかの半導体や電子部品に割り当てることを可能とする。また、電力を供給する半導体に近い位置へコンデンサを配置することで、基板上の配線距離を短縮し、電源回路の高周波特性を改善することも可能とした模様である。
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AIサーバ分野における顧客の技術課題。プリント基板内部に電子部品を実装する技術そのものは、電子情報技術産業協会(JEITA)の実装技術ロードマップにも以前から掲載されてきたこともあり、モバイル機器やウェアラブル機器の小型化や高性能化ニーズに対応してきたが、ここに来てAIサーバ分野にも活用されるようになってきた
工法だけでなく構造そのものも独自に設計
プリント基板に電子部品を埋め込む場合、基板内部に配置した部品の電極と基板内の配線を安定して接続する必要がある。部品を埋め込むことができても、その後の基板製造工程や配線形成に適していなければ、量産時の工程安定性や接続信頼性を確保することは難しい。
Flat Terminalは、プリント基板への埋め込みを前提に、外部電極を含む構造を独自設計することで、低インダクタンスを実現。さらに、平坦な端子電極と高い寸法精度を独自の構造と工法で実現しており、厳しい寸法精度要求にも適応可能とする。
特許戦略で他社との差異化と技術優位性を確保
京セラは、Flat Terminalの製品化にあたって構造や製造技術方法が独自であることを踏まえ、特許を取得したという(特許第7806349号など)。
同社が特許戦略を採用した背景には、Flat Terminalが一般的なMLCCの製造方法だけを変更した製品ではなく、プリント基板への埋め込みに適しつつ、低インダクタンスを実現できる独自構造を備えていることがある。工法と構造の両面で競合製品との差異化を図り、その技術的な特徴を知的財産として保護する狙いだ。
独自技術を特許で保護することで、Flat Terminalの技術優位性を中長期にわたって確保することができるようになるとともに、市場投入後に競合他社が類似した構造や工法で追随することを抑える狙いがあるとみられる。
埋め込みMLCCは、電子部品単体の性能だけでなく、プリント基板の構造や製造工程との組み合わせによって、最終的な性能や量産性が左右されることとなる。京セラとしては、一般的なMLCCで培ってきた材料技術や積層技術に加え、プリント基板への埋め込みに適したMLCCの構造と工法を特許で押さえることで、顧客との共同開発を踏まえた競争力を高める考えだろう。
こうした特許戦略は、Flat Terminalを単発の製品として展開するのではなく、埋め込みMLCCを今後の事業領域の1つとして育成し、その市場における技術的な主導権を確保しようとする意思の表れともいえる。ちなみに、Flat Terminalという名称は同社独自によるものだが、商標は取得していないという。


データセンター向けだけに限っても、周波数別、容量別、サイズ別、材料種別など幅広いコンデンサニーズが存在しているが、高い技術力による差別化と、需要に対応できるだけの生産体制の構築により、顧客のニーズに柔軟に対応できるのが強みだとする
顧客ニーズに応じて容量とサイズを拡大へ
Flat Terminalはプリント基板の内部に埋め込むため、基板の厚さや積層構成、使用する基板材料、部品の埋め込み位置、電極との接続方法、基板製造プロセスなどによって要求仕様が異なる。
このため、現状としては、顧客ごとの基板設計や製造条件に合わせたカスタム品として提供することとなる。MLCC単体の性能だけではなく、顧客のプリント基板に埋め込んだ状態で必要な電気特性や接続信頼性を確保できるよう、顧客や基板メーカーなどと連携しながら仕様を決めていくことが重要で、埋め込み方法なども含め、顧客との共同開発が重要になってくる。
独自構造を特許で保護しつつ、顧客の基板や製造プロセスに合わせた製品を提供することで、汎用品とは異なる技術提案型のビジネスとして展開する狙いもあるとみられる。
第1弾としては1005形・22μF品の展開となるが、京セラは今後、顧客から寄せられる要求に応じて、静電容量とサイズのラインアップを拡大する予定としている。
AI半導体の性能と消費電力がさらに高まれば、電源回路に求められる静電容量も増加する。一方、プリント基板や半導体パッケージの実装密度向上に伴い、より小型・薄型の埋め込み部品が求められる可能性もある。
京セラでは、1005形・22μF品を起点に、顧客の電源回路やプリント基板の構造、製造条件に適したFlat Terminalを顧客とともに開発していく形で必要とされるサイズ、容量のラインアップを広げていく方針である。
半導体製造からAIデータセンター、CPOまで事業領域を拡大
このほか京セラは、半導体製造装置分野に向け、リング、ガスノズル、リフトピンといった小さな部品レベルから、静電チャック、真空チャック、露光装置用ステージ、構造フレーム、塗布装置用ヒーターといった大型コンポーネントまで幅広く展開している。
半導体製造プロセスでは、使用するプラズマガスの多様化や電気的パワーの増大、プロセス温度範囲の拡大が進んでいるほか、露光・検査装置ではナノメートル単位の重ね合わせ精度が求められることから、耐プラズマ性や耐熱性、温度変化に対する寸法変化が小さい低熱膨張性を備えたファインセラミックスの重要性が高まっている。
また、AIデータセンターとその周辺ネットワークに向けては、基幹ネットワークや都市間、データセンター間の光通信に用いるセラミックパッケージ、ラック間接続を担う電界吸収型光変調器(EML)用セラミックサブマウント、サーバー向けMLCC、ASIC用BGAパッケージ、積層基板などの供給も行っている。
中でも光通信関連製品は、高周波特性を追求した独自技術「GamoThru」を用いたフィードスルーやパッケージ、常に2世代先を見据えた次世代製品の先行開発、30年以上にわたる供給実績と光通信企業との信頼関係を強みとし、基幹ネットワーク、メトロ・AIデータセンター間、AIデータセンター内の各領域を合わせたトータルシェアで首位を獲得しているという。


CDM(Coherent Driver Modulator)パッケージは、電気信号を光信号に変換する光変調器と、それを高速で駆動するためのドライバICを1パッケージに集積した光通信コンポーネント。データセンター間通信やメトロネットワークの高速・大容量通信で活用される。一方のLower Profile Sapphire Windowパッケージは、光を透過させるためのウインドウが付いたセラミックパッケージで、写真はCFP4のACO(Analog Coherent Optics)/DCO(Digital Coherent Optics)のTunable Laser(波長可変レーザー)用パッケージ。セラミックにCuWやCuMoなどの高熱伝導率ヒートスプレッダーを接合させることで、レーザー素子からの発熱を効率よく放散させることができるとする
今後は、光トランシーバ向けセラミックパッケージで培った実績を基に、光スイッチ用セラミックパッケージやセラミックコア基板を通じてCo-Packaged Optics(CPO)関連へ事業領域を広げ、光電変換から次世代CPOまで進化する光通信市場を支援するとしている。
さらに、2026年9月にはファインセラミック事業本部の新たな生産拠点として長崎県の諫早工場が竣工し、国内外を合わせた生産拠点は10工場へと拡大する予定で、半導体大手に対してグローバルな生産体制と各地域に根差したきめ細かな技術サポートを提供できることでさらなる競争力の拡大につなげていく考えを示しているほか、電子部品事業本部としても、2025年から2031年の7年間で1000億円の生産設備投資を主力工場である鹿児島県の霧島工場国分ブロックを中心に投じていく計画で、生産能力の柔軟な拡大を図り、顧客の需要に応えていく予定としている。








