この半導体ニュースのまとめ

・日立ハイテクとZEISS SMTが次世代マルチビーム電子線検査装置の共同開発体制を強化
・10nm以下の微小欠陥をシングルビーム装置の数十倍の速度で検査できることを実証
・AI活用検査アルゴリズムを搭載し、先端半導体の量産歩留まり改善を支援

日立ハイテクは9月30日、ZEISS Semiconductor Manufacturing Technology(ZEISS SMT)と共同で進めてきた、先端半導体の量産工程に向けた次世代マルチビーム電子線検査装置の開発体制を強化することを発表した。

日立ハイテクが培ってきた電子線・光学技術、高精度ステージ、装置の安定稼働技術、AIによる画像処理技術と、ZEISS SMTが持つ91本の電子線を用いるマルチビームカラム技術を統合する。両社の人員や設備などのリソースを有効活用し、AI活用検査アルゴリズムを搭載した高速電子線検査装置の開発を加速する。

開発する装置は、2nm以下の先端プロセスや高NA EUVの導入に伴って増加が見込まれる微小欠陥を、高い感度と速度で検出することを目指す。日立ハイテクは装置の提供に加え、検査結果や装置データを活用したデジタライズドアセットを「HMAX Industry for Semiconductors」として展開し、半導体メーカーの歩留まり改善と市場投入期間の短縮を支援する。

高NA EUVで増える微小欠陥の検査に対応

半導体デバイスの微細化や構造の複雑化に伴い、量産工程では回路パターン形成後のウェハに発生する微小欠陥を、感度と速度を両立しながら検査することが求められている。

光学式検査装置は高速な検査を得意とする一方、10nm前後の微小欠陥を安定して検出することが難しい場合がある。電子線検査装置は光学式検査装置よりも微小な欠陥を検出できるが、1本の電子線で検査するシングルビーム方式では、検査範囲が広がるほど処理時間が長くなる。

先端半導体ではデバイス構造の複雑化に加え、EUVリソグラフィ工程における露光や化学反応の統計的なばらつきに起因するストキャスティック欠陥が増加すると考えられている。これに伴って重点的に確認する検査箇所や検査対象のレイヤー数も増え、量産ラインに必要な検査速度の確保が課題となる。

マルチビーム電子線検査装置は、複数の電子線を同時に照射することで、電子線検査の感度を維持しながら検査速度を高める。光学式検査では検出が難しい膜中の埋め込み欠陥や、配線の断線・短絡を電位差から検出する電圧コントラスト検査にも活用できるという。

91本の電子線で検査速度を向上

両社が開発を進めている装置では、ZEISS SMTのマルチビームカラム技術「MultiSEM」を採用する。91本の電子線を用いてウェハ上の複数箇所を同時に撮像することで、微小欠陥の検出感度と検査速度の両立を図る。

日立ハイテクは、測長SEM(CD-SEM)で培ってきた装置の安定稼働技術、高精度ステージ、電子線制御技術、AI画像処理技術を提供する。同社は電子線式の計測・検査装置と光学式検査装置の双方を手掛けており、欠陥の種類や工程に応じて検査技術を組み合わせられる点を強みとする。

両社は試作機を用いた顧客拠点での評価をすでに開始しており、既存の光学式検査装置では検出が難しい10nm以下の物理的な微小欠陥を、シングルビーム装置の数十倍の速度で検査できることを確認したとしている。

今後は量産ウェハを用いた評価を進め、半導体メーカーの量産工程で標準的に採用されるPOR(Process of Record)の獲得を目指す。

AI活用検査アルゴリズムを搭載

共同開発体制の強化では、装置の電子光学系やステージ、データ処理能力だけでなく、取得した画像から欠陥を検出・分類するAI活用検査アルゴリズムの開発も進める。

マルチビーム方式では、複数の電子線から大量の画像データが生成される。量産工程へ適用するには、画像ごとの明るさやコントラストの違いを補正しながら、正常なパターンと欠陥を高速かつ正確に識別する必要がある。

日立ハイテクはこれまで、マルチビームSEMによる半導体デバイスの欠陥検査に向け、画像上の問題を抑制する表面プリチャージ技術や、自己教師あり学習を用いた明るさ・コントラスト補正技術などを学会で発表してきた。

こうした画像処理技術と装置から得られるデータを組み合わせ、微小欠陥の検出や分類、検査条件の最適化を支援することで、半導体メーカーの検査負荷を抑えながら量産歩留まりの向上につなげる。

HMAX Industry for Semiconductorsとして展開

日立ハイテクは、製造・検査装置などのプロダクトから得られるデータに、半導体製造に関するドメインナレッジやAIを組み合わせたデジタライズドアセットの提供を進めている。

今回開発するマルチビーム電子線検査装置についても、単体の検査装置として提供するだけでなく、検査画像や装置の稼働データ、検査条件などを活用し、半導体メーカーの歩留まり改善や製造工程の最適化を支援する。

同社は、こうした半導体分野向けのデジタライズドアセットを「HMAX Industry for Semiconductors」として展開する方針である。顧客拠点での評価や量産ウェハを用いた検査実証を通じて要求機能を把握し、装置とデジタル技術を組み合わせた検査ソリューションへ反映する。

両社は共同開発体制の強化を通じ、先端ロジックやメモリの量産工程で求められる微小欠陥の高感度・高速検査を実現し、半導体メーカーの歩留まり改善と市場投入期間の短縮に貢献していくとしている。