この半導体ニュースのまとめ

・xEV向けパワーデバイス市場は2025年の67億ドルから2031年に145億ドルへ拡大
・SiC MOSFETが高電圧BEV向けで成長する一方、Si IGBTはコスト重視の車種で優位性を維持
・800V/1000V化やウェハの大口径化、供給網の再編がパワー半導体市場を変革

Yole Groupのレポート「Automotive Powertrain and Electrification 2026 - Focus on Power Electronics」によると、xEV(BEV、HEV、PHEV、FCEVを含む電気自動車)の生産台数は2031年に6960万台へ達し、世界の小型車生産台数の約70%を占めると予測されている。

xEV向けパワーデバイス市場は2031年に145億ドル

xEV向けパワーデバイス市場は、2025年の67億ドルから年平均成長率13.8%で成長し、2031年には145億ドルへ拡大する見通し。用途別ではメインインバータが売上高の大部分を占め、2025年時点でパワーモジュールが市場全体の約84%を占めている。

  • 2025年および2031年のタイプ別xEV向けパワーデバイス市場内訳

    2025年および2031年のタイプ別xEV向けパワーデバイス市場内訳(出所:Yole、以下すべて)

市場ではSi IGBTモジュールが引き続き大きな割合を占める一方、SiC MOSFETが急成長する見込み。特にトラクションインバータ向けSiC MOSFETは、IGBTの約2倍の速さでの成長が予測されている。

SiCの採用は中国のBEV市場がけん引しているが、グローバル自動車メーカーも採用車種を増やしている。ただし、SiC基板のコスト低下に伴って平均販売価格も下落するため、出荷数量の伸びが売上高へそのまま反映されるとは限らない。

GaN HEMTも高い成長が見込まれるが、市場規模はSiやSiCより小さい。短期的にはOBC(On-Board Charger)やDC-DCコンバータ向けが主で、トラクションインバータへの採用は高耐圧デバイスの供給と信頼性検証に左右される。

  • xEVサプライチェーン

    xEVサプライチェーン。半導体ウェハから車両まで

垂直統合とマルチソーシングが進展

xEVのサプライチェーンでは垂直統合と地域化が進み、特に中国自動車メーカーはトラクションインバータや電動アクスルの内製傾向を強めている。複数のパワーエレクトロニクス機能を単一システムへ統合する動きも広がっている。

  • 中国勢のM&Aや戦略的提携が加速

    中国勢のM&Aや戦略的提携が加速

一方、ティア1サプライヤや自動車メーカーはパワー半導体のマルチソーシングを進めている。新規参入も相次いでおり、複数社調達に向けた標準化と独自設計による差別化が並行して進む。

中国はエンドシステムやウェハ、コンバータの製造で自立性を高めているが、パワー半導体チップの製造では課題が残る。中国以外では業界再編に加え、供給過剰を受けてSiC製造拠点の見直しがみられる。

  • トラクションインバータの技術動向の概観

    トラクションインバータの技術動向の概観

800V化がパワー半導体と実装技術を変える

車載バッテリ電圧の400Vから800V、さらには1000Vへの移行は、パワー半導体の耐圧、パッケージ、熱設計を変える要因となる。SiCは800V/1000V級BEVで主要技術となる一方、Si IGBTはコスト重視のHEV、PHEV、エントリーBEVで優位性を維持する見通しだ。

パワーモジュールでは、低インダクタンス化、熱管理の改善、エポキシオーバーモールドなどの開発が進む。市場では最高性能より、必要な性能を適切なコストで実現する設計が重視されつつある。

ウェハもSiは300mm、SiCは200mm、GaN-on-Siは300mmへの大口径化が進むが、SiCやGaNでは結晶欠陥と歩留まりの改善が引き続き課題となる。

xEV市場の拡大に伴い、SiCによる高性能化、Si IGBTによる低コスト化、GaNの新用途開拓を通じ、車種や電圧、価格帯に応じた技術の使い分けが進むことになりそうだ。