世界的なデジタル化を背景に電力コンバータ(変換器)の需要が増加していることを背景に、仏Yole Intelligenceはその市場は2022年から2028年まで年平均成長率8.7%で拡大し、2028年には1461億ドル規模となるとの予測を発表した。

2022年における電力コンバータの最大市場は産業用モーターだが、xEV向け電力コンバータが急成長を続けており、同社では2028年には太陽光発電、産業向けに次ぐ第3市場となると予想されるとしている。

Yole Intelligenceのテクノロジーおよび市場アナリストであるHassan Cheaito氏は、「バッテリーを用いたエネルギー貯蔵システム用電力コンバータは今後5年間で最も急速な成長を遂げ、2022年から2028年のCAGRは30.3%となる見込みである」と述べている。

  • 2022年の電力コンバータの用途別市場規模と2028年の予測

    2022年の電力コンバータの用途別市場規模と2028年の予測 (出所:Yole Intelligence)

2023年時点での電力コンバータの主要メーカーを見ると、日本勢としてはニデック、日立製作所、富士電機が挙げられているが、ほとんどの最終市場で中国勢がコンバータのサプライヤとして支配的な地位にある点が注目される。特にxEVコンバータ、風力発電、太陽光発電の分野における中国勢の存在感が強い点が特徴で、その背景には以下の3つの要因が考えられるとYoleは指摘している。

  • 風力タービン、電気自動車(EV)、太陽光発電インバータの市場規模が中国で大きい
  • 欧米諸国と比べて、コスト面で競争上の優位性を出せる
  • 原材料の供給とコストに関して有利

こうした要因から、中国以外のプレーヤーによるイノベーションと代替ビジネスアプローチが促進されていることをYoleでは指摘しており、高出力コンバータのサプライチェーンの統合やM&A、合弁事業を含むコラボレーションの促進による水平的な統合が進められており、こうした動きによりさまざまなセグメントが統合されていくことで、企業の製品ポートフォリオの拡大につながり、例えばxEV分野ではEV車両向け充電・貯蔵ソリューションのみならず、BESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)やEV向け充電器なども提供できるようになる。また、市場変動の影響を減らす取り組みとして、システムの製造・販売のみからサービスの提供へと事業の幅を広げる場合もあるとしている。

また、自動車OEMはコンバータの製造にますます関与するようになっており、OEMとTier1はパワーモジュール、場合によってはパワーデバイスのベアダイの製造に取り組むなど垂直統合が進んでおり、この傾向はxEVセグメントでより顕著で、パワーモジュールとトラクションインバータが技術的な差別化を達成する上で重要な役割を果たしているとYoleでは指摘しているほか、サービス指向のビジネスへの移行としては、鉄道、風力、太陽光発電など、多数の既存設備がある確立された市場で顕著で、プロジェクトのコンサルティング、運用・保守などのサービスが含まれるともしている。

なお、Yoleではこうした垂直統合と水平統合のトレンドにより、過去12か月間にわたっていくつかの買収が行われたが、今後の数年間でさらに多くの買収が行われることが予想されるとしている。

  • 電力コンバータの用途別主要メーカー一覧

    電力コンバータの用途別主要メーカー一覧。日本企業としてニデック、日立製作所、富士電機の名前が挙げられている (出所:Yole Intelligence)