この半導体ニュースのまとめ

・SAIMEMORYと新光電気工業が次世代メモリ「ZAM」の研究開発と商用化で協業
・新光電気工業のパッケージ基板と高密度実装技術を生かし、実装・製造技術を確立へ
・Intelや理研との研究開発に新光電気工業が加わり、日本発の次世代メモリ実現を加速

SAIMEMORYと新光電気工業は9月28日、高密度・広帯域・低消費電力を特徴とする次世代メモリ技術「ZAM(Z-Angle Memory)」の研究開発および商用化に向けた基本合意書を締結したと発表した。

同合意に基づき両社は、ZAMの研究開発から製造技術の確立、将来の商用化までを見据えた長期的な協力関係を構築する。SAIMEMORYが進める次世代メモリアーキテクチャの開発に、新光電気工業が持つ半導体パッケージ基板の設計・製造技術と高密度実装技術を組み合わせる形で日本発の次世代メモリ技術の社会実装を目指していくという。

Z方向にメモリを構築する次世代技術

ZAMは、AIや高性能コンピューティング(HPC)向けに、高いメモリ密度とデータ転送帯域、低消費電力の両立を目指す次世代の半導体メモリ技術。生成AIの学習や推論では、GPUなどの演算性能だけでなく、演算装置へ大量のデータを供給するメモリの容量や帯域幅、消費電力がシステム全体の性能を左右するようになってきている。

GPUのメモリとして活用されてきたHBMは、複数のDRAMダイをTSVで積層し、メモリ容量と帯域幅を高めてきたが、積層数が増えるほど中間層を中心に発生する熱を外部へ逃がすことが難しくなり、消費電力や性能、積層数の拡大を制約する可能性がある。

ZAMでは、メモリをZ方向に積み上げる垂直ビルド構造と、磁界結合無線通信I/Oの採用を想定しており、物理配線を用いずにZAMキューブとホストダイを接続することで、放熱性能を高めながら、メモリ容量と帯域幅を拡張することを目指している。

Intelとの協業からNEDO事業へ発展

SAIMEMORYは、ソフトバンクが次世代メモリ技術の実用化に向けた研究開発を推進するため、2024年12月に設立した100%子会社である。

同社は2026年2月、IntelとZAMの実用化に向けた協業契約を締結した。Intelが米国エネルギー省の支援を受けて進めてきた「Advanced Memory Technology」プログラムの基盤技術と、「Next Generation DRAM Bonding」イニシアチブで実証した技術的知見を活用し、メモリアーキテクチャと製造技術の研究開発を進めている。

  • aZAMのプロトタイプ

    2026年2月3日開催の「Intel Connection Japan 2026」にてZAMのプロトタイプを披露したIntelのFellow and CTO Intel Government TechnologiesのJoshua Fryman(ジョシュア・フライマン)博士 (編集部撮影)

また、同年4月には、SAIMEMORYを代表事業者、Intelを共同実施者とするZAMの共同開発プロジェクトが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に採択され、理化学研究所(理研)も共同研究先として参画している。

この研究開発項目には、磁界結合無線通信の設計・開発、ZAMの製造方法、ZAMキューブと演算装置を接続するホストダイのリファレンス設計、性能評価システムの構築が含まれている。

新光電気工業が実装・製造技術を担当

今回の基本合意では、半導体パッケージ基板やリードフレーム、フリップチップパッケージなどを展開し、高密度な半導体実装技術を蓄積してきた新光電気工業がZAMの研究開発および商用化に必要となる実装技術と製造技術の確立に取り組むこととなる。

ZAMを商用製品として実現するには、メモリアーキテクチャや通信技術だけでなく、多数のメモリダイを高い精度で積層する技術、側面電極を含む接続構造、ホストダイとの実装、量産時の品質や歩留まりを確保する製造工程が必要となる。SAIMEMORYがIntelや理研と進めるアーキテクチャ、通信、製造プロセスの研究開発に、新光電気工業のパッケージ基板と高密度実装に関する知見を加えことで、試作から量産へ技術を移行するための体制を強化することを狙った取り組みだと思われる。

日本発の次世代メモリの商用化を目指す

SAIMEMORYは、ZAMによって大規模AIモデルの学習・推論に必要な大容量・広帯域なデータ処理を可能にし、AIシステムの処理性能向上と消費電力削減を目指している。

2026年2月にIntelとの協業を発表した時点では、2027年度中にプロトタイプを作製し、2029年度中の実用化を目指す計画を示していた。

今回の基本合意は、Intelの次世代メモリ技術、NEDOによる研究開発支援、理研の研究力に、新光電気工業の実装・製造技術を加え、ZAMの研究開発から商用化までをつなぐ取り組みとなる。ただし、具体的な役割分担や量産場所、製造能力、商用化後の顧客、ライセンス形態などは明らかにされていない。

なお両社は今後、それぞれが持つ技術と知見を融合し、国内外の市場で競争力を持つ次世代メモリ技術の確立を進め、AI計算基盤におけるメモリの熱、容量、帯域幅、消費電力の制約を解消し、日本発のZAMを社会実装することを目指すとしている。