最初に結論:TCLは日本市場を単なる販売先ではなく、技術力とブランド力を磨く重要市場と位置付け、価格競争型メーカーからプレミアムブランドへの転換を図る。
記事の重要ポイント:
  • 2025年の日本の薄型テレビ市場では中国系メーカーが上位5社のうち3社を占め、グローバル市場でもTCLとハイセンスがサムスンに迫る存在感を示している。
  • TCLは日本市場で価格競争に依存せず、日本の住環境に合わせた製品や3年保証などを通じ、プレミアムブランドとしての地位確立を図る。
  • TCLとソニーの合弁会社「BRAVIA株式会社」では、両社それぞれのブランドを発展させる一方、技術やサプライチェーンは融合を目指している。

グローバルと日本のテレビ市場において、中国系メーカーの存在感が増しています。BCN総研の調べによると、2025年の日本の薄型テレビ販売台数シェアは1位が中国・ハイセンス傘下のTVS REGZA(約26%)で、2位がシャープ(約19%)、3位がハイセンス(約17.6%)で、4位が中国・TCL(約10.8%)、5位がソニー(約8.4%)となっています。

米Counterpoint Researchの調べによると、2026年第1四半期のグローバルテレビ市場における出荷台数シェアは1位のサムスン電子(約17%)に次いで2位がTCL(約14%)、3位がハイセンス(約13%)と続いています。

ハイセンスは日本国内にR&Dセンターを設置しているほか、画質や機能などで定評のあるTVS REGZA(2018年にハイセンス傘下)・REGZA(レグザ)シリーズとの技術協力などを通じ、存在感を増しています。

一方のTCLは、日本市場参入が2019年と後発ではあるものの、着実にシェアを伸ばしています。さらに2026年3月には、TCLが51%、ソニーが49%を出資し、ソニーのホームエンタテインメント事業を承継する合弁会社を設立することが決まりました。

勢いを増すTCLは、日本のテレビ市場をどのように捉えているのでしょうか。また、ソニーとの提携によって、どのようなシナジーを生み出そうとしているのでしょうか。TCL経営幹部へのインタビューから、その戦略を紐解いていきます。

高品質志向の日本市場でTCLはブランドを磨く

TCLでアジア太平洋地域のマーケティングを担当するAPBGマーケティング本部 総経理の張国栄氏は日本市場について、「自社の技術を高めることとブランド価値を向上させること、さまざまな事業をバランスよく展開することという、3つの重要な使命を担っています」と語りました。

「日本はAPAC(アジア太平洋)地域で最大規模の先進国ですし、日本企業の家電製品は世界的にリードしているため、消費者の電子機器・電子製品に対する要求が極めて高いです。そのため、日本市場での競争に参加して消費者のニーズを満たすことが技術振興につながります。また、日本市場はAPAC地域に対するブランド影響力が高いため、その市場で認められることが重要です。まずはテレビを中核にしながら、エアコンや冷蔵庫、タブレット、サウンドバーなどを含めて多様な家電製品を展開し、ホームエンタテインメントと生活家電を一体化したソリューションを提案して市場での存在感を高めたいと考えています」

  • TCL APBGマーケティング本部 総経理の張国栄氏

    TCL APBGマーケティング本部 総経理の張国栄氏

日本独自の住環境向けにハイエンド化を加速

日本市場でシェアを拡大するためには、日本市場に向けて開発したハイエンド製品を提供することが重要だと張氏は続けます。

「インテリアとの調和や省エネ性能、長期的な耐久性など、日本独自の価値観や住環境に適したハイエンド製品を提供することが重要です」(張氏)

TCLのテレビ事業を統括するTCL スマートスクリーン関連事業部 副総経理 兼 グローバルプロダクトオペレーションセンター総経理の左波氏は、日本市場の住環境や生活シーンの特殊性について次のように触れています。

「日本の住宅は都市部と郊外で空間の広さに大きな差異があり、建築材料やインテリアデザインに対する志向、環境意識も独特です。高画質映像を支えるデコードやエンコードのフォーマットも他国とは大きく異なります。私たちは日本の生活空間に調和するデザイン、優れた省エネ性能、耐久性を備えた製品づくりに注力し、単なる低価格ではなく『同価格帯で圧倒的に優れた体験と品質』を提供する製品戦略を推進しています。そのためテレビ製品の場合、日本市場では『SQD-Mini LED』や『QD-Mini LED』などで高画質を訴求する製品をより多く展開しています」(左氏)

  • TCL スマートスクリーン関連事業部 副総経理 兼 グローバルプロダクトオペレーションセンター総経理の左波氏

    TCL スマートスクリーン関連事業部 副総経理 兼 グローバルプロダクトオペレーションセンター総経理の左波氏

3年保証でプレミアムブランドの安心感を強化

日本市場は他国に比べて大画面テレビのニーズがあまり多くないため、中小型サイズのテレビが中心になるものの、「家電量販店では大画面テレビも展示し、消費者が大きなサイズを体感できるようにしています」と左氏は語りました。

「大画面テレビで視覚的なインパクトを伝えていくことにより、より大きな画面を選んだほうがより良い映像体験ができることを多くの人に気付いていただきたいと考えています。今年発売したハイエンドの『X11L』シリーズや『C8L』シリーズなどは従来の製品に比べて高くなっているかもしれませんが、日本市場では依然として非常にコストパフォーマンスの優れた製品だと思います。ぜひTCLの製品を体験してみてほしいです」

  • TCLが2026年5月21日に発売したSQD-Mini LEDテレビ「X11L」シリーズ

    TCLが2026年5月21日に発売したSQD-Mini LEDテレビ「X11L」シリーズ

ブランドへの信頼性を高めるために、TCLは2026年製のMini LEDテレビに対して3年保証の提供を開始しました。

「日本の消費者に根強い安心感を持っていただくため、今年のMini LEDテレビ製品から3年保証を導入しました。ユーザーの生活空間や視聴習慣に寄り添ったコミュニケーションを強化し、インテリアデザイナーや専門家による多角的な評価を通じて、プレミアムブランドとしての信頼関係を根気強く構築し続けていきます」(張氏)

TCLがソニーと組む狙いは「ブランド価値」の向上

張氏は、日本市場でシェアを拡大するための戦略について次のように語りました。

「日本の消費者は、AIなどの技術によって自宅にある家電を進化できることを期待しています。TCLはそのニーズを満たす技術的な優位性があると自信を持っています。日本でもEC市場が急速に成長しており、家電量販店だけではない販売チャンネルの再編成が進む中で、より多くの機会を作りたいと考えています」

2026年3月には、ソニーとTCLがホームエンタテインメント領域での戦略的提携に関する確定契約を締結し、TCLが51%、ソニーが49%を出資する合弁会社「BRAVIA株式会社」を設立すると発表。2027年4月に事業を開始する予定としています。新会社の製品には、「ソニー」と「ブラビア」の名称が引き続き使用される予定です。

「家電業界で中国企業と日本企業が提携する場合、ブランドのライセンス方式が主流ですが、BRAVIAはライセンスではなく合弁会社となります。ライセンス料を支払って数年で回収するというスタイルではありません。TCLは今後ソニーと友好的なブランド・マトリクスを作りながら発展していきたい。その視点から見ると、最も大きなチャレンジは、日本市場でTCLのブランドと消費者との信頼関係を構築することが重要になります。大手家電量販店と国内ブランドが固く結ばれている関係性を打破することや、人材を採用して組織力を強化していくことも必要になると思います」(張氏)

左氏もBRAVIAについて次のように語りました。

「TCLもソニーも、BRAVIAは双方の強みが発揮されると信じています。TCLがソニーの優れた映像技術を投入することも期待できますし、TCLのサプライチェーンの能力を通じてソニー製品をより迅速に進化させることも期待できます。将来の市場では、ソニーとTCL、2つの独立したブランドが発展していくことを楽しみにしてください」

左氏はマーケティングに力を入れることがTCLの今後の課題だと語りました。

「我々TCLは製品志向の会社で、より良い製品・サービスを消費者に提供することが基本的に重要だと考えています。そのため、絶えず研究開発や技術開発を進めており、製造や流通の面でもより多くの資源を投入しています。一方でTCLのブランド・マーケティングは世界のトップ企業のレベルには達しておらず、改善の余地が大きいと思います。これまでTCLは製品開発を最優先してきたので、これからより力を入れてブランド価値を高めていきたいと思います」