
厚生労働省が公表した2025年度の年金特別会計の収支決算で、時価ベースの年金積立金の残高が前年度比42兆5136億円増の302兆5893億円となり、初めて300兆円を突破した。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による運用が、国内外の株高と円安の影響で大きな収益を上げたためだ。このため、与党内には「積立金の一部を消費税減税の財源などに充てるべきだ」との声も漏れ始めている。
公的年金の給付財源は現状、現役世代の納める保険料が充てられている。しかし、将来的には少子高齢化により保険料だけでは給付額を賄えなくなるため、「40年代以降に積立金を取り崩して給付に回す見通しだ」(年金局幹部)という。
近年の好調な運用収益は、年金局関係者の予想を超えるものだ。
年金の給付水準の将来見通しは、おおむね出生率と経済成長率で決まる。しかし、先の幹部は「積立金の運用収益による給付水準の押し上げ効果も無視できないレベルになってきた」と認める。
特にサラリーマンが加入する厚生年金については「少子高齢化の影響をあまり心配しなくて良いかもしれない」と語り、「マクロ経済スライド」と呼ばれる年金額の目減り調整を数年以内に終了させる可能性に言及した。
年金財源に楽観的な見通しが出てくると、必ず政治サイドから「積立金の収益を国民に還元せよ」という声が出てくる。高市政権が27年度に始める食料品の消費税率を1%に下げる減税には年5兆円の財源が必要になる。既存予算の組み直しで巨額の財源を捻出するのは不可能で、「消費減税も社会保障政策の一環なので、法改正して年金積立金から一部充当すべきだ」との声が与党内から出ている。
より現実的な積立金の使い道としては、厚生年金保険料の引き下げや自営業者向けの基礎年金の給付水準底上げが挙げられる。ただ、いずれも本格的な議論が始まると与野党で賛否が割れ、容易に結論は出なさそうだ。