早期警戒機というカテゴリーは新しいものではないが、近年、この分野では世代交代の動きが顕著だ。大型で高価な機体に高性能レーダーを搭載する従来の姿から、小型化、さらには無人化へと向かう動きも出てきた。なぜ早期警戒機はいま変わろうとしているのか。

最近の動向を踏まえながら、まずは「総論」から話を始めてみたい。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照

  • 早期警戒機分野の王者といえば、やはりE-3セントリーであろう 撮影:井上孝司

    早期警戒機分野の王者といえば、やはりE-3セントリーであろう 撮影:井上孝司

早期警戒機はなぜ「戦力を何倍にもする」のか

早期警戒機(AEW : Airborne Early Warning)、早期警戒管制機(AEW&C : Airborne Early Warning and Control)、空中警戒管制システム(AWACS : Airborne Warning And Control System)と複数の名称があるが、いずれにしても基本的には「相応のサイズを持つ多発機に、レンジが長いレーダーを搭載して広域の対空捜索能力を持たせる」「その機内に管制員を乗せて、空中指揮所として航空戦を司らせる」といったところは共通する。

その、レーダーの能力や指揮管制の能力などに違いがあり、各々の国情に応じて入手可能な機体を選んで調達する形になっている。能力の面でも価格の面でも、この分野の頂点に位置するのがボーイングE-3Gセントリーであることは論を待たない。

本稿ではひとまとめにして早期警戒機と書くことにして。その早期警戒機はレーダーを空中の高所に上げるから、その分だけ地平線・水平線の向こう側まで見通せることになる。すると、経空脅威の接近をより早く知ることにつながる。

また、航空戦の状況を、あたかも「トロイアの戦争を天空から見下ろすオリュンポスの神々」のごとくに俯瞰できるので、全体状況を把握するのに有利な立場となる。

それに基づいて友軍の戦闘機に指示を出せば、敵機を探し求めてウロウロしたり、敵機がいない場所に行ってしまったり、敵機に回り込まれて不意打ちされてオカマを掘られたり、といった事態を回避しやすくなると期待できる。早期警戒機、とりわけAWACS機がフォース・マルティプライヤー(戦力を増やしたのと同等の効果をもたらす何らかのこと)と呼ばれる所以である。

  • 米海軍のE-2Dアドバンスト・ホークアイ。航空自衛隊でも導入を進めている。空母に載せるという前提条件があるため、機体の寸法、とりわけ全高が抑えられている 撮影:井上孝司

    米海軍のE-2Dアドバンスト・ホークアイ。航空自衛隊でも導入を進めている。空母に載せるという前提条件があるため、機体の寸法、とりわけ全高が抑えられている 撮影:井上孝司

大型・高級化の流れに「待った」

ところが、そういう有用な資産だけに、戦時になると早期警戒機は真っ先に狙われる。いわゆるテクノ・スリラー小説の中には、AWACS機が敵の戦闘機に襲われそうになったり、撃ち落されたりする場面が出てくるものがいくつもある。

それでも昔は、早期警戒機が持つレーダーのレンジが一般的な空対空ミサイルのレンジを大きく上回っていたから、早期警戒機を後方の安全な空域にとどまらせておいて、十分な戦闘機の護衛をつけることで何とかなった。

ところが最近、「AWACSキラー」などと呼ばれる長射程の空対空ミサイルがいろいろ出てきて、「護衛をつけておけば大丈夫」と安穏とはしていられなくなった。

そして、いったん撃ち落とされるとダメージが大きいのが早期警戒機である。機体は高価で貴重だし、そこに乗っている乗員、とりわけ管制員もまた貴重である。それらが簡単に失われるリスクが増してきた。

それどころか、地上にいても危ない。大型の早期警戒機を収容できる掩体なんていうものは存在しないから、露天駐機するか、格納庫に入れるぐらいのことしかできない。そこに自爆無人機が突っ込んできたら、「的」が大きいだけに被弾の可能性は上がる。そして実際、2026年にそういう事態が起きて、米空軍のE-3Gが1機、破壊された。

そうなるともう、大型で高級で高価な早期警戒機がえらい、とはいっていられなくなる。だから今にして思えば、米空軍がE-10A MC2A(Multi-Sensor Command and Control Aircraft)計画をボツにしたのは正解といえるが、これはもちろん後知恵である。

大型機から小型機へ、そして無人化へ

とはいえ、早期警戒機がなくても済むような代替手段がモノになったかといえば、そういう状況でもない。だからあちこちの国で、早期警戒機の代替更新計画が動いている。

ただし、そこで登場する機体の多くは、どちらかというと小型である。現在はE-3を使用しているのに、後継機はずっと小型の機体を選定した、なんていう事例が複数出てきている。

  • コンパクト系早期警戒機の一例、スウェーデン空軍のS100Bアーガス。サーブ製のPS-890(後にASC-890)「エリアイ」レーダーを、サーブ340旅客機の背中に載せている 撮影:井上孝司

    コンパクト系早期警戒機の一例、スウェーデン空軍のS100Bアーガス。サーブ製のPS-890(後にASC-890)「エリアイ」レーダーを、サーブ340旅客機の背中に載せている 撮影:井上孝司

もちろん、レーダーやコンピュータの技術が進化したから、その恩恵で小型化しても能力低下は招かずに済みます、という事情もあろう。しかしそれだけでなく、早期警戒機が取得するにも運用するにもあまりにも高価であり、かつ、失われたときのダメージが大きい事情も影響しているとみてよいのではないか。

すると行きつく先は無人化となる。拙著「戦うコンピュータ」の最初のバージョンで、「そのうち早期警戒機は無人化して、データを地上に送って処理するようになるんじゃないか」という趣旨のことを書いた記憶があるが、それが現実のものになるまでに20年あまりを要した。しかし現物が出てきたのを見て、法螺吹きにならずに済んだとホッとしている。

ただ、無人化するならするで、また新たな課題に直面することになる。その辺の話は今後、具体例を取り上げる中で触れていくこととしたい。

なお、「レーダーの性能向上」では当然ながら、AESA(Active Electronically Scanned Array)レーダーの普及という話が表に出てくる。1970~1980年代の早期警戒機では実現できなかった種類の話である。AESAレーダーの登場で得られた新たな機能、新たな恩恵についても、具体例を見ながら取り上げていこうと思う。