
創薬を、不確実な挑戦から確かな設計に変えていく!
「AI(人工知能)創薬という言葉はあっても、実際に成果が出ている事例はほとんどない。創薬は科学であり、仮説から入って検証していくプロセスが重要で、いきなりビッグデータにAIをあてても何も出ない。現時点で仮説的推論ができるAIを開発しているのは当社だけ。研究者のひらめきを誘発し、創薬の分野で革命を起こしたい」
こう語るのは、FRONTEO社長の守本正宏氏。
7月15日、東京・港区の国際文化会館で『医療産業成長戦略セミナー Annual Forum 2026』が開催された。製薬・医療機器メーカー、医療関連産業、行政・政策関係者、医療・研究分野の専門家・リーダー層が参加し、活発な議論が交わされた。
国産AIで日本の創薬力をいかに強化するか─―。同フォーラムで特別講演を行ったのが守本氏である。
2003年の創業以来、リーガルテックから経済安全保障、医療など、様々な事業領域を拡大してきたFRONTEO。近年は独自のAIを活用した創薬支援サービスに注力している。
同社が開発したAI『KIBIT(キビット)』は、AIが数千万本の医学論文を解析。方程式を用いることで非連続な発見、因果関係の把握、高い再現性を実現。特定の病気に関連する分子や遺伝子の関係性と、それを証明する創薬仮説をたった数分でアウトプットすることが可能だ。
創薬バリューチェーンの最上流に位置する「標的分子探索・仮説生成」を行っているのがFRONTEO。医薬品開発の設計図ともいえる〝仮説〟を提供することで、製薬企業の創薬研究を支援。創薬の可能性を引き上げようとしている。
「よく研究者が実験に失敗して、偶然、新しい発見がなされたという話を聞いたことがあると思うが、われわれはAIでこの偶然を見つけていこうと。それを可能にするのがKIBIT。他社のAIはトライ&エラーを繰り返しながら徐々に答えに近づいていくものだが、KIBITは世界で唯一方程式を持っているAIなので、因果関係が分かり、新しいものを発見できる」(守本氏)
近年、世界の医薬品市場における日本の存在感が低下している。米調査会社IQVIAジャパンの調査によると、2024年の世界医薬品市場ランキングで日本のシェアは4.08%。首位の米国(48.8%)、2位の中国(10.1%)、3位のドイツ(4.14%)に抜かれて、日本は4位に転落した。
医薬品開発は20年近い時間と多大なコストを要し、成功確率も低いという課題を抱えている。特に画期的な新薬を開発・上市するには巨額なコストがかかるため、1社単独で新薬を生み出すことが非常に難しい。
こうした危機的状況から脱却するためには、イノベーションを促進することで急速な市場・技術の変化に対応していくことが求められる。独自のAIを活用することで、そこに事業の可能性を見出したのが、FRONTEOである。
「われわれがやっているのは、ニュートンの前でリンゴを落としている。普通の人の前でリンゴを落としても拾って終わりだが、ニュートンは万有引力を発見することができた。やはり、高度に訓練した人でないとひらめかない。こうやって研究者を支援することで、日本の創薬を、不確実な挑戦から確かな設計に変えていきたい」(守本氏)
AI創薬分野で新たなビジネスモデルを構築することはできるか。FRONTEOの挑戦は続く。