SS&C Blue Prismは10月7日、エージェンティック・オートメーション基盤「SS&C Blue Prism WorkHQ」の日本語版提供開始を発表した。人、AIエージェント、API、デジタルワーカー(RPA)を統合的に管理し、企業のAI活用を個別最適から全社最適へと発展させることを目指す。参考価格は年額708万4600円から。説明会には、Blue Prism 代表取締役社長の長谷太志氏と、副社長の内田修氏が登壇した。
同社は今回の発表テーマを「AIエージェント時代の業務改革」と位置付ける。その背景には、多くの企業が生成AIを導入しながらも、実際の業務改革に結び付けられていないという問題意識がある。
生成AIは普及しても業務には組み込めていない
冒頭、長谷氏は親会社であるSS&C Technologiesについて説明。同社は年間売上高67億ドル超、約600兆円規模の顧客資産を支えるBPO(Business Process Outsourcing)事業を展開しており、Blue Prismを含む自社ソフトウェアを自らの事業で本番運用している。
長谷氏は、こうした取り組みを「Customer Zero」と呼び、単なるソフトウェアベンダーではなく、自社で実践した成果を顧客に提供する立場だと強調した。同氏は「600兆円規模のお客さま資産を預かる基幹インフラで、自ら本番運用している。そこで実証されたAIエージェントや自動化ソリューションをBlue Prismブランドとして提供している」と話す
また同氏は、日本企業の生成AI活用について導入は遅れていないと評価している。実際、IPAの調査では生成AIの導入率が44%に達している一方で、業務プロセスへ組み込んでいる企業は11.9%にとどまるというデータを紹介した。米国やドイツでは約4割が業務プロセスに組み込んでおり、日本との差が浮き彫りになっている。
長谷氏は「課題は生成AIの問題ではなく、その生成AIの力を業務に組み込めていないということ」と指摘する。同社では、その要因として「AIと業務の壁」「システム間の壁」「AI自身の壁」の3つを挙げる。
AIは判断できても業務プロセスの外側に存在しており、業務は複数のシステムにまたがり、人がつなぎ役になっている。そしてAIは確率的に動作するため、統制の仕組みがなければ成果につながらない。
長谷氏は「AIエージェントは業務改革の最も強力なツールの1つだと考えているが、AIが判断しても統制とオーケストレーションがなければ成果にはつながらない」との認識を示し、AIそのものではなく、AIを業務へ組み込む仕組みこそが重要だという。
「判断はAI、実行はRPA」が新たな業務改革モデル
こうした課題への答えとしてBlue Prismが掲げるのが「エージェンティック・オートメーション」だ。
内田氏は、従来のRPAが抱えていた限界について「これまでの業務自動化は、人が判断し、その結果をRPAへ渡して実行させるモデルだった。そのため、判断を伴う業務は自動化が難しく、人がプロセスのつなぎ役として残り続けていた。しかし生成AIの登場によって、判断部分をAIエージェントが担えるようになった。AIエージェントは判断や推論に強い一方、システム間の壁を越えて業務を最後までやり切る実行役としては、デジタルワーカーの方が確実だと考えている」と説明した。
同氏によると、デジタルワーカーには大きく2つの強みがある。1つは、APIを持たないレガシーシステムやファイアウォール内部のシステムでも画面操作によって自動化できること。もう1つは、同じ入力に対して同じ結果を返す決定論的な仕組みであるため、監査やコスト予測を行いやすいことだ。
そこで同社は、判断はAI、実行はデジタルワーカー、例外は人という役割分担を提示。内田氏は「この組み合わせが、ほとんどの業務で品質、コスト、スピードの最適化になる」と力を込める。
AIによって判断部分が自動化されることで、これまで判断が必要だったために自動化できなかった業務にもRPAを適用できるようになるという。つまり、AIの登場でRPAが不要になるのではなく、むしろRPAの活用領域が広がるというのがBlue Prismの考え方となる。
野良AIエージェントを防ぐ鍵はガバナンス
説明会で重点的に語られたもう1つのキーワードが「ガバナンス」だ。Blue Prismは、日本企業がRPA導入で経験した「野良RPA」の問題が、AIエージェントでも再発する可能性を指摘する。
個人利用の段階では問題にならないが、AIに判断や実行を任せ始めると、どのAIが何をしているのか分からない状態になりかねない。内田氏は「野良RPAを生むかどうかを分けたのは技術ではなく統制だった。現在のAIエージェントも同じ分かれ道に立っている」と警鐘を鳴らす。
そのうえで同社は、Customer Zeroとしての経験から内部統制7要素にセキュリティとコスト統制を加えた独自のガバナンスモデルを提唱し、これは「設計する」「制御する」「監視する」という3段階で運用するというものだ。
具体的には設計ではリスク分類、自律性の階段、モデルガバナンス、制御は人の介在方針、精度保証、セキュリティ、監視では監査と追跡、例外管理、コスト統制と定義している。内田氏は「ガバナンスは成果のブレーキではなく条件です」と述べ、AI活用を制限するためではなく、業務の中核で安全に利用するための仕組みだと説く。
WorkHQで人・AI・RPAを統合管理
こうした考え方を具体化した製品がWorkHQだ。WorkHQは、人、AIエージェント、API、デジタルワーカーを単一環境でオーケストレーションするエージェンティック・オートメーション基盤だ。Blue Prismでは「業務の司令塔」と位置付けている。
内田氏は「WorkHQは、人、AIエージェント、API、デジタルワーカーをガバナンスの効いた単一環境でオーケストレーションし、業務を個別最適から全体最適へ引き上げる業務の司令塔になる」と強調した。
特徴は「つなぐ」「拡げる」「守る」の3つだ。人・AI・RPAを統合するオーケストレーション機能に加え、既存システムや既存RPA資産、AnthropicやOpenAIなどの外部LLM(大規模言語モデル)とも連携できる。さらに、AI Gatewayでトークン利用量やプロンプトを一元管理し、AI利用状況を可視化する。
AIエージェントへの期待が急速に高まる一方、多くの企業は依然として実証実験の段階から抜け出せていない。Blue Prismは今回のWorkHQを通じて、AIモデルそのものではなく、AIを業務に組み込み、成果につなげる統制とオーケストレーションを競争軸に据える。
国内ではアクセンチュアやアビームコンサルティング、NTTデータ、日本IBM、SCSK、NTTドコモビジネスを含む21社の販売パートナーと共同で展開し、既存のパートナーエコシステムを活用する。
料金体系はワークフロー実行回数ベースのサブスクリプションモデルとなる。Tier 1 Discoverは年間10万回の実行で708万4600円、Tier 2 Scaleは同50万回で1986万5800円、Tier 3 Elevateは同300万回で9789万1800円、Tier 4 Transformは個別見積もりとなる。
エージェント数やワークフロー設計数、API呼び出し数、同時実行数に制限を設けず、業務として実行されるワークフロー回数をベースに課金する。承認フロー利用者数はTierごとに設定されており、AI Gatewayはアドオンとして提供される。






