電通は7月29日、異なるデータソース間で重複するIDを教師データとし、独自AIでIDごとの顧客特性の近さや類似性を算出するマーケティングソリューション「People Fusion」の提供を開始した。複数の顧客情報を仮想のシングルソースデータとして横断的に活用し、広告配信やマーケティング施策の高度化を支援する。
近年の企業のマーケティング活動の背景
近年、企業のマーケティング活動では、会員データや購買データ、ウェブ・アプリの利用データ、メディア接触データなど、顧客理解に用いるデータが多様化している。
一方、購買履歴やウェブ閲覧履歴といった「行動データ」は大規模に活用できるのに対し、価値観や購買意向などの「意識データ」は取得できる対象が限られるため、両者を横断的に分析することは容易ではないという。
このため、「顧客が何をしたか」は把握できても、「なぜその行動を取ったのか」まで理解することが難しいという課題があった。また、こうした分析にはデータソース間で共通するIDが必要となるものの、実際に共通するIDは限られていた。
「People Fusion」の概要
「People Fusion」は、複数のデータソースで重複しているIDを教師データとして独自AIに学習させ、「あるIDが、別のデータ上のどのID・ID群に近いか」を推測する。類似するIDを仮想的に統合し、複数の情報をシングルソースデータのように扱う仕組みとなる。
これにより、アンケートや調査に基づく嗜好、態度、購買意向などの「意識データ」と、ウェブ、アプリ、SNS、動画配信などのデジタルプラットフォーム、店舗POS、メディア接触などから得られる「行動データ」を横断的に扱えるとしている。
実際に同一人物のIDを統合するのではなく、個人情報とひも付けるような直接的なID統合を行わない形で、類似するID同士を分析上1つのデータのように扱う。
従来は共通するID数が少ないため、複数のデータを連携した活用が限定されていた。「People Fusion」で複数のデータソースを仮想的につなぐことにより、顧客理解の解像度を高め、コミュニケーション設計や広告配信の最適化、顧客体験の設計・実施などに活用できるという。
将来的には、カスタマーデータプラットフォーム同士も仮想のシングルソースデータとして扱い、IDの分断による課題に対応する方針だ。
「People Fusion」の活用領域
具体的な活用領域としては、「意識データ」と「行動データ」を統合した顧客分析が挙げられる。例えば、ある商品を認知していない人が普段どのような検索をしているかを分析し、マーケティング施策の設計や実施に生かせるという。
広告配信では、「意識データ」を基に定義したターゲットに類似するID群を、規模の大きい行動データベース上から推定する。例えば、あるサービスの利用意向はあるものの、購入に至っていない人と類似するID群を広告配信の対象にできるとしている。
効果検証では、メディアへの接触から意識変容、行動変容までを一気通貫で分析できる。広告がアプリのインストールに寄与したか、どのような訴求内容がインストールにつながったかなどを検証し、広告のROI向上や今後訴求すべきポイントの把握に活用できるという。
精度検証では、約4500のテスト母集団において、同一ユーザーが類似候補の平均約5.4番目に現れた。また、データ全体から類似度の高い順に上位5%までを抽出した場合、同一ユーザーが84.7%の確率で含まれたとしている。
電通が保有する約15万(約30業種)を対象に年2回実施する、価値観やメディア接触などの意識調査データとの連携・実装も完了している。
「People Fusion」は、電通が提唱する事業成長のための次世代マーケティングモデル「Marketing For Growth」を構成する4つのプロセスのうち、「Mechanism Resolving(市場構造解明・インサイト解明)」「Value Designing(価値構造設計)」「ROI Management(管理と継続改善)」に該当するサービスと位置付けられている。
同社は今後も、企業が保有するデータや外部データの横断的な活用を支援し、顧客理解の解像度向上と、広告、CRM、顧客体験の高度化に取り組むとしている。
