日立製作所、NEC、富士通の2026年度第1四半期(2026年4~6月)決算が出そろった。3社とも増収増益となり、NECと日立は通期業績予想を引き上げた。売上規模では日立が2兆7095億円で首位となり、NECが8198億円、富士通が7793億円で続く。ただ、それぞれの成長ドライバーには違いが見られ、富士通はAIを活用したサービス高度化、NECはBluStellarと防衛、日立はエネルギー事業とAXが業績をけん引した。

日立、エネルギー事業が急成長 グループ全体を押し上げる

7月29日に発表した日立の2026年度第1四半期決算は、売上収益が前年同期比20%増の2兆7095億円、Adj. EBITAが3235億円と前年比860億円増となり、いずれも第1四半期として過去最高を更新した。四半期利益は前年並みだったが、前年度にあった特別配当の影響を考慮すると実質的には増益と位置付けている。

  • 日立 FY2026 第1四半期決算の概要

    日立 FY2026 第1四半期決算の概要

好調な業績を支えたのは、エナジー、デジタルシステム&サービス(DSS)、モビリティ、コネクティブインダストリーズ(CI)の4セクター全てが2桁成長を実現したことだ。特にエナジー事業は、送配電需要の高まりを背景として大きく伸長した。

中でもパワーグリッド事業の受注高は前年同期比87%増となり、売上収益も37%増加した。欧州の大型案件に加え、世界的な電力インフラ投資やデータセンター需要を背景とした送配電設備需要の増加が追い風になっている。日立グループの成長を支える最重要分野として存在感を増している。

DSSでは、AI活用支援を担うAX事業とモダナイゼーション事業が好調だった。保険を中心とした金融分野、官公庁などの社会分野、製造業分野で需要が拡大しており、国内ITサービス事業の成長を後押しした。

さらに同社は、AI活用を加速する基盤として「Agentic AI Integration Platform」を発表。GlobalLogicとHitachi Digital Servicesの一体運営も本格化しており、グローバルでのデジタルエンジニアリング事業を強化している。

こうした状況を踏まえ、日立は通期見通しを上方修正した。グループ全体では売上収益を6000億円、Adj. EBITAを1000億円、当期利益を500億円引き上げる。売上増額のうち3600億円をエナジー事業が占めており、電力インフラ需要の拡大に対する強い自信が見て取れる。

  • FY2026通期の業績見通しを上方修正した

    FY2026通期の業績見通しを上方修正した

NEC、防衛とBluStellarの2本柱で上方修正

日立と同様に7月29日に発表したNECの2026年度第1四半期決算は、売上収益が前年同期比14.5%増の8198億円、Non-GAAP営業利益が747億円、Non-GAAP当期利益が609億円となった。営業利益率は前年同期の5.6%から9.1%へ改善しており、収益性向上も進んでいる。

  • NECの2026年度 第1四半期実績

    NECの2026年度 第1四半期実績

最大の成長ドライバーとなったのがBluStellarだ。同サービスの売上収益は前年同期比33.2%増の1661億円、Non-GAAP営業利益も227億円まで拡大した。官公庁や金融分野を中心に、コンサルティングから実装までを一体で提供するシナリオ型案件が増加しており、国内ITサービス売上に占める比率は35%まで上昇している。

従来型のベース事業は売上規模こそ縮小したが、低収益案件の整理や高付加価値案件へのシフトが進んだことで利益率は改善した。経営としても量より質を重視する姿勢が鮮明になっている。

もう1つの柱が航空宇宙・防衛事業だ。売上収益は前年同期比49.6%増の1108億円となり、営業利益率も12.4%に上昇した。近年の安全保障環境の変化による防衛需要拡大の恩恵を受けているほか、従来は年度後半に偏っていた売上計上の平準化も進んでいる。海洋システム事業も黒字転換を果たした。

こうした結果を受けてNECは、通期売上収益予想を3兆5400億円へ、Non-GAAP営業利益予想を4300億円へ引き上げた。ITサービス国内と防衛事業が上方修正の主要因となっている。

AI分野ではAnthropicとの提携が本格化している。金融業界向けの共同開発や、AIコーディングツール「Claude Code」のグループ展開を進めるほか、10月にはNECソリューションイノベータとの統合も予定している。約2万人規模のエンジニア体制を構築し、AI時代を見据えた事業変革に取り組む。

  • 2026年度 業績予想を日立と同じく上方修正した

    2026年度 業績予想を日立と同じく上方修正した

富士通、AIドリブンデリバリが利益率向上に寄与

7月30日に発表した富士通の2026年度第1四半期連結決算は、売上収益が前年同期比3.9%増の7793億円、調整後営業利益が同197億円増の549億円、調整後当期利益が同121億円増の418億円となった。中心事業であるサービスソリューションが業績をけん引し、売上収益は5489億円、調整後営業利益は628億円まで拡大している。

  • 富士通 2026年度第1四半期決算概況

    富士通 2026年度第1四半期決算概況

成長の中心となったのは、企業のデジタル変革を支援するUvanceとモダナイゼーション事業だ。Uvanceは売上収益が前年同期比31%増の1922億円となり、サービスソリューション全体に占める割合は35%まで上昇した。モダナイゼーション事業も売上収益が949億円と同29%増となり、レガシーシステム刷新需要を着実に取り込んでいる。

今回の決算で特に注目されたのが「AIドリブンデリバリ」の進展だ。富士通はほぼすべてのSIプロジェクトでAIを活用しており、特定案件にはハイスキル人材を集中投入する「AIトップガンプロジェクト」を展開。開発工程の効率化を進めている。第1四半期だけで採算性改善効果は78億円となり、そのうち20~30億円程度がAIドリブンデリバリによる効果だという。

  • 採算性改善の状況

    採算性改善の状況

さらに同社は、AIを単体製品として販売するのではなく、Uvanceやモダナイゼーションサービスに組み込んで顧客価値として提供する方針を示している。従来の人月型から成果や提供価値を中心としたプライシングへの転換も模索しており、AI時代を見据えた収益モデル改革を進めている。

同社は通期業績予想を据え置いたものの、サービスソリューションの好調な推移やAI活用による利益率改善が続けば、今後の上振れ余地にも期待が集まりそうだ。

共通するのは「AIそのもの」ではなく収益化フェーズへの移行

今回の3社の決算を比較すると、共通しているのはAI投資そのものではなく、「AIを使ってどう利益を生むか」という段階へ移行している点だ。富士通はAIによる開発効率向上、NECはBluStellarやAnthropicとの連携によるサービス高度化、日立はAXとエージェント型AI基盤を通じた事業拡大を進めている。

一方で、実際に業績を押し上げているのは、防衛やエネルギーインフラ、モダナイゼーションといった大規模な投資需要だ。AIはその需要を取り込むための競争力として位置付けられており、各社とも「AI企業」ではなく「AIを活用して成長する企業」への転換を進めている。第2四半期以降は、こうした取り組みがどこまで利益率改善や受注拡大につながるのかが焦点となりそうだ。