「人手不足、効率化の時代こそ、人の手による調理のぬくもりを!」 手作り弁当にこだわる「ほっかほっか亭」の逆張り戦略

中食市場活況の一方で、原料高と競争激化で弁当屋の倒産増加 

 コロナ禍の巣籠り需要で伸長した中食市場の活況が続いている─。2024年に中食の市場規模は11兆円を突破した。ウーバーイーツなどデリバリー業者に食事を届けてもらう食事スタイルは、コロナ禍以降も続き、既に調理された食事を家で食べる文化が定着。 

 その中で、コンビニ、スーパー、持ち帰り弁当、総菜店の他、飲食店やゴーストレストランなどの新規プレイヤーの参入も増え、中食市場は競争が激化。現在議論をされている食料品消費税の減税も対象となり、さらに市場拡大となるとみられる。 

「スーパー、コンビニでも店内調理を始めている環境で、どう差別化していくかが課題。われわれはコストを徹底的に削りお弁当の品質にこだわって、手に届きやすい価格で届けることが使命」。こう話すのは持ち帰り弁当のほっかほっか亭・執行役員企画本部本部長の金沢篤史氏。 

 1976年に創業され今年で50周年を迎える同社は、日本初の温かいお弁当、いわゆる「ほか弁」「海苔弁」の元祖でもある。現在西日本を中心に全国に713店舗(26年4月時点)を展開し、弁当チェーン業界では3番手に位置する。 

 昨今の原料高、また令和の米騒動でのコメ価格高騰で業界全体が大打撃を受け、帝国データの調査によると、弁当店の倒産は2年連続で過去最多を記録。特に安さを売りにした弁当店はスーパーやコンビニの500円以下の弁当と競合し、採算が悪化し耐えられなくなっている。 

同社においても原材料高で厳しい経営が続いたが、26年3月期は売上高167億円、営業利益3・2億円と前期赤字7200万円から黒字転換となった。その秘訣は何だったのか。 

「業界全体では生産効率化、省人化に向かっているが、それでは価格競争になってしまう。われわれは逆張りで、お母さんの手料理感を感じられるお弁当をつくる。キャッチコピーは〝街の台所〟。日常の中にあったお母さんの手料理が、なかなか味わえなくなってきた時代、それを家庭の中から取り出して、ライブ感を出してお伝えしていくことに注力している」と金沢氏。 

 例えばスーパーやコンビニ、同業他社の「ほっともっと」ではセントラルキッチンでの調理効率化を高めている。その一方でほっかほっか亭では、店内調理で揚げたて、焼きたて、炊きたての「つくりたて」の過程を敢えて見せることで顧客の体験価値を高めている。 

 現在は新店舗出店の際にオープンキッチンに転換し、店内の様子が外からでもよく見える店づくりを行う。シュウマイや中華ちまきを湯気がもくもく立つせいろ蒸しで調理し、ライブ感を出すことで人々の五感に訴えている。 

「闇雲に非効率なことをやるわけではないが、人手不足の時代だからこそ、調理の活気、ぬくもり、人の手など、昭和っぽさで差別化していく」(同) 

 また、同社のお弁当の消費期限は2時間。保存料等を使用せずお米は国産米100%、7日以内に精米したお米を使用にこだわっている。 

 効率化が急速に進む半面で、手作りの「丁寧さ」を、人の本能に訴える同社の戦略である。

 

価格コントロールの技術

 

 同社で人気ナンバーワン商品の「のり弁」は490円。原料高にはどのように対応しているのだろうか。 

「原価の大部分を占めるコメ価格のコントロールは、グループ会社内で精米工場を持っているため、ある程度のコストコントロールができている。また、お弁当の容器はNB(ナショナルブランド)の場合は値上げを受け入れるしかないが、当社はPB(プライベートブランド)として持っている。一部プラスチックの配合率を変え原価を抑えることができるのは、PBの強み。また、コスト優先商品と高付加価値商品と分けて販売を行っている。例えばコメの価格が上がった分を価格転嫁するのではなく、ご飯の量を減らし、炭水化物の焼きそばを入れるといったことで、価値を減らさず原価逓減できるかを試行錯誤した」(同) 

 同社を含む親会社ハークスレイグループは、現在中食事業の他、店舗アセット&ソリューション事業、物流・食品加工事業がある(26年3月期のグループ売上は524億円、営業利益30億円)。グループ内で原材料のコントロールができることも、同社の強みでもある。 

 

片手で食べられる『ワンハンドBENTO』の開発

 

 お弁当屋の新商品開発というと、メニュー改良やおかずの変更がこれまでであったが、同社は25年の大阪・関西万博に合わせて、〝未来のお弁当〟をコンセプトに片手で食べられる『ワンハンドBENTO』を開発した。 

 片手で食べるためには、食べている間に崩れないようにしたり、味の偏りがないように配置したり、食材の水分が他に移らないようにするなど細部まで気を配った全体設計を行っている。 

「おにぎりとは全く別物で、お弁当の具がしっかり入っていて、これまでありそうでなかった商品。ただぎゅっとお弁当の具を重ねたもので簡単そうに見えるが、トータルバランスをとるのは非常に難しかった」(同) 

 この『ワンハンドBENTO』は万博会期中に非常に人気が集まり、会期中22万食を突破。現在もあべのハルカス近鉄本店で販売が継続されている。 

人が大勢集まる場所で、混雑時に食べ歩きも可能な『ワンハンドBENTO』。スポーツ観戦やライブ会場など、今後さまざまなシーンに対応する新たなお弁当の形、まさに〝未来のお弁当〟となるだろう。