この半導体ニュースのまとめ

・Microsoft AzureがAMDのラックスケールAI基盤「AMD Helios」を導入し、フロンティアモデル推論やAzure AIサービスに活用
・AMD HeliosはInstinct MI455X、EPYC「Venice」、Pensandoネットワーク、ROCmを組み合わせたAI基盤
・Azureは第6世代EPYC搭載の新VM「HDv2」「HXv2」も追加し、エージェンティックAIや半導体設計向けを強化

Microsoft AzureがAMD HeliosをAI基盤に採用

AMDは7月20日、Microsoftとの長期的な戦略的パートナーシップを拡大し、Microsoft AzureにおいてAMDのGPU、CPU、ネットワーク、ソフトウェアを組み合わせたAIインフラを展開することを発表した。

今回の協業拡大の中核となるのが、ラックスケールAI基盤「AMD Helios Rackscale Solution」である。MicrosoftはAzure上でAMD Heliosを大規模に展開し、Microsoft自身およびAI顧客向けの最先端推論、ならびにAzure AIサービスを支える基盤として活用する。

AMD Heliosは、AMD Instinct MI455X GPU、AMD EPYC「Venice」(開発コード名)、AMD Pensandoネットワーキング、ROCmソフトウェアを組み合わせたオープンな統合ラックスケールプラットフォームで、大規模AIの学習および推論向けに設計されている。AMDによると、HeliosはMicrosoftを含む顧客向けに2026年後半から出荷を開始する予定である。

Azure上でAMDのAIソリューションをフルスタックで展開へ

AIインフラをめぐっては、学習だけでなく推論需要の拡大がデータセンター側の大きな投資テーマになっている。生成AIの利用が企業向けアプリケーション、エージェント型AI、検索、データ準備、強化学習などへ広がる中、クラウド事業者には、多様なAIワークロードに対応できる大規模かつ柔軟なインフラが求められている。

AMDのリサ・スー会長兼CEOは、AMDとMicrosoftが長年にわたり高性能インフラを共同で構築してきたと説明し、今回の協業拡大により、Azure上でAMDのAIソリューションをフルスタックで展開する重要な節目になるとした。

また、Microsoftのサティア・ナデラ会長兼CEOは、顧客が学習、推論、データ準備、検索、強化学習など幅広いワークロードに最適化されたAIインフラを求めていると説明。AMDとの協業により、AzureのインフラポートフォリオにAMD Heliosを加え、顧客が次世代AIアプリケーションを構築・実行するための性能、スケール、選択肢を提供するとしている。

Azure Foundry Managed ComputeでもAMD基盤を展開

今回の協業により、Azure上で利用できるAMD AIインフラの範囲はさらに広がる。最先端のモデル開発企業は、AMDベースのインフラを用いて大規模AIモデルの学習および提供を行えるようになるほか、企業顧客はAzure Foundry Managed Computeを通じて、本番AIワークロードを展開・拡張できるようになる。

AI市場では、GPU単体の性能だけでなく、CPU、ネットワーク、ソフトウェアスタック、運用性、クラウドサービスなどの統合が競争力を左右するようになっている。AMD Heliosは、Instinct GPUによる演算性能に加え、EPYC CPU、Pensando DPU、ROCmを組み合わせることで、ラック単位でのAIインフラ最適化を狙うものとなる。

Microsoft Azureにとっては、AIインフラの選択肢を広げることで、顧客ごとのワークロード特性に応じた柔軟な提供が可能になる。AMDにとっても、Azureという大規模クラウド基盤での採用拡大は、AIアクセラレータ市場での存在感を高めるうえで重要な意味を持つ。

第6世代EPYC搭載の新VM「HDv2」「HXv2」を追加

Azureでは、AMD Heliosに加え、第6世代AMD EPYCプロセッサ「Venice」を搭載した2種類の新たな仮想マシン(VM)シリーズも追加する。

1つは、エージェンティックAIおよびデータパイプライン向けの「Azure HDv2」である。エージェンティックAIでは、複数のモデルやツール、データ処理を組み合わせながら、計画立案、意思決定、実行を行うワークロードが想定される。こうした用途では、GPUだけでなく、CPUによるデータ処理、前処理、ワークフロー制御の重要性が高まる。

もう1つは、半導体設計向けの「Azure HXv2」である。半導体設計では、EDAツールによる論理設計、検証、配置配線、シミュレーションなどで高いCPU性能と大容量メモリ、安定したクラウドリソースが求められる。HXv2は、そうしたエンジニアリングワークロード向けに、AzureのAMD EPYCポートフォリオを拡充するものとなる。

Pensando DPUとAzure Boostでネットワーク性能を強化

今回の協業は、AI演算ノードだけでなく、Azureのネットワーク層にも広がる。

AMDによると、AzureではAMD Pensando DPUをAIバックエンドネットワーク基盤および一部のAzureサービスで展開する。さらに、Microsoftが推進するAzure BoostとAMD技術を統合し、クラウド規模でのネットワーク性能、効率、接続処理性能の向上を図る。

大規模AIインフラでは、GPU間、ノード間、ストレージ間のデータ移動が性能を左右する。モデルの大規模化や推論リクエストの増加に伴い、演算性能だけでなく、ネットワーク帯域、低遅延、CPUオフロード、効率的な接続処理が重要になる。Pensando DPUの活用は、こうしたクラウドネットワークのボトルネック解消を狙う取り組みといえる。

AIインフラの選択肢拡大へ

今回のMicrosoftとAMDの協業拡大は、AIクラウド基盤の競争が、GPUアクセラレータ単体ではなく、ラックスケールの統合設計、CPU、ネットワーク、ソフトウェア、クラウドサービスまで含めたフルスタック競争へ移行していることを示すものとなる。

Azureは、AMD Heliosを通じてAI推論基盤を拡張し、EPYCベースの新VMでエージェンティックAI、データパイプライン、半導体設計といった用途にも対応する。AMDとしては、Instinct GPU、EPYC CPU、Pensando DPU、ROCmを組み合わせたAIインフラをAzure上で展開することで、AIデータセンター向けの供給先と適用領域を広げることになる。

AI需要の拡大が続く中、クラウド事業者は、学習、推論、検索、データ処理、半導体設計、エージェンティックAIなど、多様化するワークロードに対応するため、複数のアクセラレータやCPUアーキテクチャを組み合わせたインフラを整備している。今回の協業拡大は、AzureにおけるAMDプラットフォームの位置付けを一段と高めるとともに、AIインフラ市場における選択肢の拡大につながるものとなりそうだ。