この宇宙・航空ニュースのまとめ

  • NASAと米チャールズ・スターク・ドレイパー研究所の商業月面輸送サービスに関する契約が終了。これを受けてispaceが、米国子会社・ispace-U.S.とドレイパー間で締結する契約についても「今後終了する見込み」と発表
  • 2030年打ち上げ予定の月面着陸船ミッションは「大幅な見直しが必要になる」(ispace袴田武史CEO)
  • ispace公式X(Twitter)アカウントで袴田CEOによるビデオメッセージ公開、旺盛な月面開発需要見据え「引き続き米国事業を大変前向きに見ている」と強調

ispaceは、米国航空宇宙局(NASA)と米チャールズ・スターク・ドレイパー研究所の間で締結されていた、商業月面輸送サービスに関する契約の終了を受け、米国子会社のispace-U.S.とドレイパー間で締結する契約についても今後終了する見込みだと7月15日に発表。ispaceの袴田武史CEOは、2030年の打ち上げをめざしていた月面着陸船ミッションは「大幅な見直しが必要になる」と述べている。

  • ispaceが開発する月面着陸船「ULTRA」 出所:ispace 事業戦略アップデート(2026年3月27日開催)、以下同

    ispaceが開発する月面着陸船「ULTRA」 出所:ispace 事業戦略アップデート(2026年3月27日開催)、以下同

現地時間7月9日に双方合意によって終了した、NASAとドレイパー研究所の契約は、商業月面輸送サービス(CLPS:Commercial Lunar Payload Services)プログラムにおけるタスクオーダー「CP-12」に関するもの。ispace-U.Sは2022年7月以来、ドレイパーとの間で再委託契約を締結し、NASA CLPSプログラムのタスクオーダーCP-12における月面輸送サービスの提供に向けて、着陸船(ランダー)の開発・運用準備を進めてきた。

しかし、今回のNASAとドレイパー間の契約終了を受け、ispace-U.S.とドレイパー間で締結する契約についても今後、双方合意により終了する見込みとなった。

  • NASA CLPSタスクオーダーCP-12に採択されていた、ispaceの旧「ミッション3」(新ミッション5)の概要。米国ミッションの延期やペイロード顧客への影響が伝えられていたが、今回の一連の契約終了を受け、ミッションそのものの「大幅な見直し」が必要になったかたちだ

    NASA CLPSタスクオーダーCP-12に採択されていた、ispaceの旧「ミッション3」(新ミッション5)の概要。米国ミッションの延期やペイロード顧客への影響が伝えられていたが、今回の一連の契約終了を受け、ミッションそのものの「大幅な見直し」が必要になったかたちだ

ispaceが2026年3月に開催した事業戦略説明会では、この米国ミッションの実施時期について、開発が遅れていたエンジンを別のエンジンに変更し、スケジュールも当初の2027年から2030年へと延期。ナンバリングも従来の「ミッション3」(M3)から「ミッション5」(M5)に改め、NASAと具体的な契約内容について修正予定だとしていた。またランダーについては、日米それぞれに開発していたランダーモデルを、「ULTRA」と呼称する機体に統合。開発効率の向上や品質の最大化を図る方針を示していた。

  • 旧「ミッション3」(新ミッション5)は2030年にスケジュールが再設定されていた

    旧「ミッション3」(新ミッション5)は2030年にスケジュールが再設定されていた

  • 日米のランダーモデルは「ULTRA」に統合

    日米のランダーモデルは「ULTRA」に統合

  • ランダーの開発効率向上や品質最大化を図る方針だった

    ランダーの開発効率向上や品質最大化を図る方針だった

NASAとドレイパー研究所の契約終了発表を受けて、ispaceは7月15日、公式X(Twitter)アカウントで袴田CEOによるビデオメッセージを投稿。この動画の中で袴田CEOは、2030年の打ち上げをめざしていたM5について「大幅な計画の見直しが必要となる可能性がある」と述べたうえで、「CP-12は契約終了となるが、ispaceは引き続き米国事業を大変前向きに見ている」と強調。その背景にはNASAを中心とする、月面開発に向けた動きの加速があるという。

NASAは2026年4月、これまでのCLPSプログラムに替わり、次の10年を見据えた新たな商業月面輸送サービス(CLPS2.0)プログラムの実施計画を発表済み。新たなこの枠組みの下では、NASAによるタスクオーダーの発注頻度が高まり、月面着陸ミッションの機会が増加することが見込まれるという。

袴田CEOは「CLPS2.0の枠組みのなかで、NASAによるミッション発注が拡大することが期待される。ispaceは自社が持つ強みを、NASAとの継続的な対話を通じて伝えている。NASA主導のアルテミス計画への貢献を通じて、シスルナ経済圏を発展させるという我々の考えに何も変わりはない」とし、さらに、最速2030年の打ち上げに向けて、米SpaceX「スターシップ」のペイロード搭載枠を確保するという新たな連携のスタートにも触れ、「我々は今後も挑戦を次々と続ける。一歩も立ち止まっていない。期待に応えるべく社員一同、全力を尽くす」と述べた。

なおispaceは現在、政府機関・民間顧客向けの将来ミッションを支える新ランダーモデル「ULTRA」の開発を日本拠点主導で進めており、2028年には「ミッション3」(旧ミッション4)を打ち上げる予定。さらに2029年には、南極近傍への高精度着陸をめざす「ミッション4」(旧ミッション6)の打ち上げも予定している。

  • 2026年3月27日時点のスケジュールはこのように予定されていたが、2030年の米国ミッションは不透明になったかたち。2028年と2029年の日本ミッションのスケジュールについては、現時点で変更はない模様だ

    2026年3月27日時点のスケジュールはこのように予定されていたが、2030年の米国ミッションは不透明になったかたち。2028年と2029年の日本ミッションのスケジュールについては、現時点で変更はない模様だ