鹿児島大学は7月9日、鹿児島県南さつま市笠沙町(かささちょう)沖の水深27mに設置された定置網で漁獲された、全長1mを超える大型の2個体を、これまで日本国内から記録がなかったウミヘビ科タツウミヘビ属の希少種「Brachysomophis longipinnis(ブラキソモフィス ロンギピンニス)」と同定し、新標準和名として「ホサノキウミヘビ」を提唱したと発表した。
同成果は、北九州市立自然史・歴史博物館 自然史課の日比野友亮学芸員、鹿児島県 漁業協同組合 笠沙町支所の伊東正英氏、鹿児島大 総合研究博物館/総合科学域共同学系の本村浩之教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、鹿児島大 総合研究博物館が論文掲載・閲覧ともに無料で運営している、日本産魚類の分類や生態などを扱う査読付きオンライン論文誌「Ichthy, Natural History of Fishes of Japan」に掲載された。
ウミヘビ科タツウミヘビ属(学名:Brachysomophis)は、東大西洋やインド太平洋の温帯から熱帯域に分布しており、これまでに世界で7つの有効種(正式に認められた種のこと)が知られている。日本ではこれまで、「タツウミヘビ」、「ハワイタツウミヘビ」、「ムラサキウミヘビ」、「モヨウタツウミヘビ」の4種のみの分布が公式に確認されていた。
今回の日本での発見に至る経緯は、2022年に鹿児島大 総合研究博物館に収蔵されていたタツウミヘビ属の全標本を対象とした精査において、日本産既知種の特徴と一致しない1つの不詳な確認が見出されたことに端を発する。この標本は、20年前の2006年に、鹿児島県の漁業協同組合笠沙町支所の伊東氏が、同県南さつま市笠沙町沖の水深27mに設置した定置網から得たものであり、国内屈指の魚類分類学の専門家である鹿児島大の本村教授へと連絡が寄せられたことで、鹿児島大 総合研究博物館で大切に保管されていたものだった。
2006年に捕獲された個体は全長1010mm、2024年に得られた2匹目の個体は全長1141mmで、どちらも雌であることが確認された。これまでに台湾周辺で得られていた標本は全長が最大でも全長635mmだったことから、今回の日本における発見により同種が全長1mを超える大型種であることが初めて明らかにされ、同時に同種の分布の北限を更新することとなった。今回の研究では、この新たに得られた大型標本と既知の標本との比較検討、および近縁種との詳細な比較が行われた結果、同種の新たな分類学的標徴が再定義された。
新標準和名として提唱された「ホサノキウミヘビ」の「ホサノキ(また「ホサ)」とは、鹿児島地方においてシイタケ栽培に用いられる榾木用樹種の呼び名であり、同地では一般にコナラあるいはクヌギを指す。ホサノキウミヘビの体表に見られる特徴的な縦皺と体色が、このホサノキを連想させることから和名の由来となった。なお、ホサノキウミヘビに同定され、日本国内で唯一となる2標本は、いずれも鹿児島大 総合研究博物館に所蔵されているとした。
