2026年8月1日(土)~9月6日(日)、未来館にて、実証実験「ひざがHappyな未来をつくろう! みんなの一歩から始まるHizappy Project」を実施します。

この実証実験では、一人ひとりの特徴にもとづいて、ひざにかかる負担を計算するための新しい指標の開発を目指しています。みなさんそれぞれのひざがどのくらい頑張っているのかを定量的に知ることで、その時々の自分に合った活動を選択し、ひざを元気に保てるようになるかもしれません。

このブログでは、イベントの様子と、Hizappy Projectに関わる研究者の想いをお届けします。

実証実験の会場の様子

ひざ+Happy =Hizappy!

Hizappy Projectとは、みんなのひざをハッピーにするためのプロジェクトです。

私たちは、歩行や運動、坂道の上り下りなど、日々のさまざまな活動のなかでひざに負担をかけていますが、その負担は日々少しずつ蓄積していきます。もし、その大きさを正しく見積もることができれば、痛みが出る前にひざの状態に気がつき、自分に合ったひざの使い方ができるようになるかもしれません。

しかし現時点では、多様な活動を含む日常生活の中でのひざへの負担を正確にまとめて測る方法はありません。そこでHizappy Projectでは、まず多様な活動の中でひざにどれくらいの負担がかかっているのかをわかるようにすることを目指して研究をしています。

ひざにかかる負担には、次の5つの要素が大きく関係していると考えられています。

①    平地歩行時にひざにかかる負荷
②    環境や条件に対するひざの応答性
③    個人特性補正(体格や筋力、柔軟性などの身体特性に関する補正)
④    活動量(歩数、歩行時間・距離、活動強度など)
⑤    状態補正(疲れ具合やその他の全身状態など)

③~⑤は、実際に計測することができます。また、これまでの研究により、①の「平地をふつうに歩いているときのひざへの負担」は、ウェアラブルセンサーを用いて推定できるようになりました。

一方で、坂道を歩いたり重い荷物を持ったりすると、ひざへの負担は大きくなりますし、歩く場所によっても負担の影響は異なります。そしてその影響の受け方も人それぞれです。そのため、②の要素にあたる「その人のひざが、環境や条件の変化にどのくらいうまく対応できるか」を総合的に評価する方法は、まだ十分に確立されていません。

そこで、このプロジェクトでは、環境や条件に対するひざの応答性を表す新しい指標「Knee Robustness Index(KRI)」の開発を目指しています。KRIが開発されれば、①~⑤を組み合わせて、個々人の特徴や日々の生活における活動を反映しながら、実際にひざにかかるよりリアルな負担を見積もることができるのではないかと考えられています。

KRIの開発によって、一人ひとりのひざにかかる負担を、より正確に見積もれるようになることを目指しています

ウェアラブルセンサーをつけて、歩く、歩く、歩く・・・・・・!

参加者は、まずInBody測定(体成分分析)や身長、握力、柔軟性、バランス、ひざのエコー検査などの身体機能計測を行います。その人の体格や身体の状態によって、ひざへの負担の度合いも変わってくるからです(前項でいう③にあたる情報です)。

柔軟性のチェックをする様子

計測が終わったら、いよいよデータ収集です。脚にウェアラブルセンサーを装着したら、とにかくたくさん歩きます!

脚にウェアラブルセンサーを装着して歩きます

歩くといっても、ただ何度も歩くだけではありません。平地や坂道を歩いたり、靴を履いたり、裸足になったり、何も持たずに歩いたり、おもりを付けたり……。さまざまな条件のもとで歩いていただきます。

少し大変かもしれませんが、みなさんの一歩一歩が、KRIを開発するための大切なデータになっていくのです。

坂道を上り下りする様子

また、このプロジェクトでは、未来のみんなのひざを守るだけでなく、ご自身のひざについても理解を深めることができます。計測後には、ご自身の歩行データの一部をもとにした、ひざへの負担のフィードバックも受け取ることができます。

ふだんは意識することの少ない、自分のひざについて知るきっかけになるかもしれません。

実証実験への参加が、自分のひざを知るきっかけになるかも?

研究者の想いを聞いてみました

さて、「みんなのひざをハッピーにしたい!」という想いから始まったHizappy Projectの魅力は、研究内容だけではありません。このプロジェクトには、ひざの健康を本気で考え、よりよい未来を目指して研究や運営に取り組む、たくさんの素敵なメンバーが集まっています。

そこで、この研究を主導する秋葉先生に、研究を始めたきっかけやHizappy Projectに込めた想い、そしてこのプロジェクトを通して参加者のみなさんに伝えたいことをうかがいました。

このプロジェクトを率いる研究代表者の秋葉絢子先生

どうして、この研究を始めたのですか?

私は整形外科でひざを専門に研究しています。診察では、その時点でのおひざの状態をもとに治療や運動の提案をしますが、おひざが少しずつ変化していくのは、むしろ日々の生活の中です。たとえば、同じような年齢や症状の方でも、その後の経過には大きな違いが見られることがあります。その違いを生むのは、病院では見えない「生活の中での歩き方や身体の使い方」も大きいのではないかと思っています。そこで、日常生活でのおひざへの負担を、個々人の特徴を反映してより定量的に捉えられる方法をつくりたいと思い、この研究を始めました。

Hizappy Projectに込めた想いを教えてください

Hizappy Projectで目指しているのは、一人ひとりに合ったおひざの健康づくりです。歩き方は人それぞれ違います。体格や筋力、柔軟性だけでなく、日常生活でどのくらいおひざを使いたいか、将来どのような生活を送りたいかという目標も人それぞれです。そのため、この研究では、歩き方を「良い」「悪い」と評価したり、「平均的な歩き方」を目指したりすることは考えていません。大切なのは、その人自身の歩き方の特徴を知ることです。それが、おひざにかかる負担を理解し、その人に合った運動や生活につなげていくための出発点になると考えています。

参加者のみなさんに伝えたいことはありますか?

歩くという動作は、とてもシンプルに見えますが、実は多くの要素が複雑に関係しています。そのため、実証実験では、歩くだけでなく、身長や体組成、柔軟性なども測定します。「どうしてこんな測定をするのだろう?」と思うかもしれませんが、それぞれが歩き方やおひざへの負担を理解するための大切な情報なのです。この実証実験を通して、ご自身の歩き方やおひざに少しでも興味を持ち、自分の身体の特徴を知るきっかけになれば嬉しいです。


さらに、このプロジェクトには「ひざっぴー」というマスコットキャラクターがいます。赤ちゃんのおひざから生まれた、“おひざの妖精”とのこと。かわいいですね……!

赤ちゃんのおひざから生まれた、おひざの妖精「ひざっぴー」。おなかは、ぷるぷるの半月板と軟骨でできています

Hizappy Projectは、このほかにも多くの先生方や学生のみなさんによる素敵なチームで運営されています。実証実験への参加を通して気になったことや疑問に思ったことがあれば、ぜひ現地でプロジェクトメンバーにも気軽に声をかけてみてください。

みんなの一歩一歩が、未来のひざを守る!

ふだん、特に痛みを感じていなければ、「ひざの健康」を意識する機会はあまりありませんよね。私自身もこのプロジェクトを担当するようになって初めて、自分のひざについて意識するようになりました。

Hizappy Projectは、ひざの健康を守るための新しい指標を開発することを目的としています。しかし、このプロジェクトに参加することで、私たち一人ひとりのひざに対する意識も変わっていくかもしれません。

ぜひ、みなさんも今日から、ご自身のひざを大切にしてあげてください。みなさんが自分のひざにもっと興味を持ってくれたら、「ひざっぴー」もきっと喜ぶと思います。

Hizappy Projectへのご参加、お待ちしています!

関連リンク

  • ひざがHappyな未来をつくろう! みんなの一歩から始まるHizappy Project https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202608014638.html
  • Hizappy Project 特設サイト https://hizappy-colab.com/


Author
執筆: 若林 里咲(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務】
未来館で実施する実証実験に関わる科学コミュニケーションの企画やプロジェクトマネジメントを担当。これまでに、ノーベル賞やイグ・ノーベル賞の関連イベントなどにも携わる。

【プロフィル】
進路に悩んでいた高校3年生の時、偶然手に取った本がきっかけで「サイエンスライター」という職業を知り、科学コミュニケーションに興味をもつようになりました。
大学・大学院では化学専攻として創薬の基礎研究に携わり、修士号を取得。その後、総合系コンサルティングファームに入社し、電力・エネルギー業界の案件を中心に担当してきました。
未来館では、科学の楽しさや魅力を共有しながら、私たちの暮らす社会や地球のこれからを、みなさんと多様な視点で考えたいと思います。

【分野・キーワード】
化学、電力、実証実験