琉球大学は7月21日、沖縄県宮古島沖の水深約105mから、漁業練習船のドレッジ(小型底曳き網)を用いた生物採集調査により、2023年にミャンマー沖のアンダマン海で初記載され、今回で世界2例目、日本および太平洋では初記録となるアゴアマダイ属魚類「Opistognathus erdmanni」を採集し、やや緑色がかった横帯と背鰭縁辺部の黄色域がそれぞれ樹木と森林の木漏れ日を連想させることから標準和名「コモレビアゴアマダイ」と命名したことを発表した。

  • 「コモレビアゴアマダイ」

    今回採集された「コモレビアゴアマダイ」(出所:琉球大プレスリリースPDF)

同成果は、琉球大大学院 理工学研究科の福島周大学院生、琉球大 理学部の千徳明日香准教授、同・小枝圭太助教の研究チームによるもの。詳細は、日本魚類学会が刊行する和文論文誌「魚類学雑誌」に掲載された。

“木漏れ日”を思わせる模様の新種アゴアマダイ

アゴアマダイ類は、広義にはスズキ目(近年の分類では独立したグループとされる場合もある)のアゴアマダイ科に属する海水魚だ。見た目がアマダイに似ていることからその名がついているが、マダイなどのタイ科や、高級魚のアマダイ科とは分類上異なる独自のグループである。頭部の形状や「あご(口)」が極端に大きい生態的特徴から、アマダイに似た姿でありつつ「大きなアゴを持つ魚」としてこの名が付けられ、英語では「ジョーフィッシュ」と呼ばれている。

その仲間は、海底の砂礫地(されきち)に自身の顎を使って巣穴を作り、顔を出して暮らす巣穴生活を送る生態を持つ。また、オスが受精卵を口の中に入れて保護し、ふ化するまで大切に育てるという一風変わった特徴も備える。加えて、この仲間は見つけにくいため、通常のサンゴ礁を対象とした潜水調査などでは見過ごされやすく、採集が難しいとされるグループだ。

長崎大学水産学部が保有・運用する漁業練習船「長崎丸」は、文部科学省から「教育関係共同利用拠点」に認定されており、自前の大型練習船を持たない他大学の研究者や学生も、共同利用や合同乗船調査、乗船実習で利用することが可能だ。琉球大もそうした同船を利用する大学の1つであり、理学部の実習科目「乗船実習I」において宮古島沖(北緯25度3~4分・東経125度11~12分の範囲)において、ドレッジを用いた生物採集調査を実施したところ、水深約105mからアゴアマダイ属の魚を採集したという。

今回採集された標本と、先行研究で示されたアゴアマダイ属魚類との比較を詳細に実施したところ、当該標本は2023年に新種記載された「Opistognathus erdmanni」の特徴と一致し、同種であると同定された。これまで同種は、インド洋のアンダマン海の水深50~55mから得られた5個体の標本のみが知られていた。今回の発見は、世界で2例目となる極めて貴重な記録であり、日本および太平洋における初記録となった。

同種の正式な日本語名称(標準和名)を検討する際、同標本に見られる背ビレの暗色斑紋から下方に延長するやや緑色がかった横帯と、背ビレ縁辺部の黄色域が、それぞれ樹木と森林の木漏れ日を連想させることから「コモレビアゴアマダイ」と命名された。

論文筆頭著者の福島周大学院生は、今回の日本初記載に際し、「今回の発見は、世界で2例目という科学的な重要性はもちろんですが、私個人としては、この美しい魚に世界で初めての標準和名を贈ることができたことを非常に光栄に感じています。この『コモレビ』という名前を通して、多くの方に、まだまだ謎が残されている沖縄の海について興味を持っていただけたら嬉しいです」とコメントしている。