ネアンデルタール人と現生人類のホモ・サピエンスは文化や価値観を共有していたようだと、京都大学や国立科学博物館、トルコの大学などの国際共同研究グループが発表した。トルコ南部の洞窟遺跡の発掘調査で、両者の化石が見つかった地層から同じ製法の石器などが確認されたためだ。両者の間で接触と交流があったとみられるという。

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    「ウチャーズリII洞窟」での発掘調査の様子(京都大学/森本直記氏提供)

現生人類は約20万年前にアフリカで誕生。約6万年前にユーラシア大陸へ移動を始め、アフリカ大陸以外の地域に広がっていったと考えられている。一方、ネアンデルタール人は現生人類の近縁種だが、約4万年前に絶滅したことが分っている。化石の分析から脳の大きさは現生人類とほぼ同じで、がっしりした体格や張り出した額などの特徴がある。

ネアンデルタール人について、かつて「現生人類より文化的な能力が劣っており、現生人類の進出で絶滅に追い込まれた」という見方があった。しかし、その後の研究で埋葬の風習や顔料を使っていたことなどが判明し、高い知性を持っていたと現在では考えられている。古代DNAの分析から現生人類とも交雑していたことも明らかになっているが、両者の行動の具体的な内容や交雑した経緯など詳しいことは謎だった。

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    「ウチャーズリII洞窟」があるトルコ南部のレバント地域は、アフリカを出た現生人類が通過したと考えられる(グーグルア-スの画像を基に作成。京都大学/森本直記氏提供)

京都大学大学院理学研究科の森本直記准教授と国立科学博物館の森田航研究主幹、福岡大学の石原与四郎助教、トルコ・ガジアンテップ大学のバイカラ・イスマイル教授らの国際共同研究グループは、トルコ南部の「ウチャーズリII洞窟」で2021年から発掘調査を開始。約7万7000年前~約4万7000年前の地層から多くの遺物を見つけた。

発掘した骨や歯の化石をX線CT画像による最新の形態分析した結果、約7万7000年前~約5万9000年前の地層から見つかったのはネアンデルタール人2個体で、約5万9000年前~約4万7000年前の地層からは現生人類3個体だったことが判明した。

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    「ウチャーズリII洞窟」で見つかったネアンデルタール人の下顎右半分の化石(明るい部分。京都大学/森本直記氏提供)

両者の化石が見つかった地層からは、約1万9000点の石器や約2万4000点の動物の骨の化石が見つかった。石器は同じ道具を使って同じ手法で作られたとみられ、両者は同じような石器で同じ動物を狩猟し、動物の同じ部位を洞窟に持ち帰って食べるという同様の生活をしていたと考えられる。

また、食用に適さない「アフリカタモト」などの貝59点も見つかった。これらの貝を食べた形跡はなく、精密な加工によって微小な穴が開けられており、装飾用のビーズとして制作されたとみられる。

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    ネアンデルタール人の化石が見つかった地層から出土した貝殻の化石。精密な加工によって微少な穴が開けられている(京都大学/森本直記氏提供)

  • 研究グループは、ネアンデルタール人も現生人類も同じ石器を使い、同じ食料調達の戦略を持ち、同じような貝を装飾品として愛でていたことから、共通の文化様式や「役に立たないが美しいもの」に価値を見いだすという美的感覚や価値観があったとみている。「この文化がネアンデルタール人と現生人類でそれぞれ独立して発生した可能性は非常に低く、両者の間で接触があったはずだ」という。

    森本准教授は「ネアンデルタール人や我々の祖先(かもしれない人々)の心に迫ろうとするところに(この)発掘調査の醍醐味がある。今後も調査を続け『我々は何者なのか』という問いに正面から取り組んでいきたい」とコメントしている。論文は7月6日付の米科学アカデミー紀要に掲載された。

    国立科学博物館(東京都台東区上野公園)は7月14日から9月6日まで、「科博NEWS展示・ネアンデルタール人と現生人類は価値観を共有していた」を開催し、今回の研究内容を分かりやすく解説するとともに、ネアンデルタール人の子どもの下顎骨のレプリカなどを展示して発掘現場の様子を映像と写真で紹介している。

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    現生人類のホモ・サピエンスがネアンデルタール人やデニソワ人と交雑し、それぞれ遺伝子の一部を引き継いでいることを示すイメージ図(ノーベル財団提供)

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