- 楽天は「AI-nization」を掲げ、楽天エコシステム全体でAIエージェントの導入を加速している。
- 店舗向けには「Rakuten AI for RMS」が商品管理や問い合わせ対応、データ分析を支援し、業務効率化と売上向上を後押し。
- ユーザー向けにはAIコンシェルジュやディスカバリーレコメンデーションにより、対話型・発見型の買い物体験を目指す。
楽天グループ(以下、楽天)は7月7日、インターネット・ショッピングモール「楽天市場」におけるAI活用やその効果をメディア向けに紹介した。楽天グループが推進するAI戦略「AI-nization」(AI化)の一環で、ユーザー満足度の向上と出店店舗のビジネス成長の両方を支援する取り組みとなる。
AIエージェントを軸に楽天エコシステム全体をAI化
楽天では「楽天市場」をはじめ、70以上のサービスを展開している。楽天会員数は1億以上、月間アクティブユーザー数は4,588万人で、複数のサービスを利用しているクロスユース率は77.3%と、強力な顧客基盤により“楽天エコシステム”が構築されていることが強みだ(数値はいずれも2026年5月時点)。
AI化を意味する造語「AI-nization」を掲げ、楽天エコシステムで「楽天のAIエージェント」の導入を進める楽天は、ユーザーや出店者がAIを活用してより満足度の高いサービス体験を得ること、またより効率的にビジネスを成長させることを目指している。
楽天はユーザーの多様なタッチポイントやトランザクションデータ、ポイントなどを1つの楽天IDで束ねており、これらが生み出す年間3兆以上のインタラクションを「我々の武器」と位置づける。説明会では、楽天エコシステム全体のデータを活用できることが、単独のAIエージェントにはない競争力だと強調した。
現在楽天エコシステムで導入しているAIエージェントは、リリース済みのもので11サービス。現在開発中で直近導入予定のものが8サービス。導入計画中のものは50以上に上るという。
AIが店舗運営を支援、問い合わせ対応やデータ分析を効率化
「楽天市場」出店者向けのAI活用例としては、5万を超える出店店舗の業務効率化と売上向上を支援する、店舗運営システム「Rakuten AI for RMS」に搭載されたAI機能群がある。
「Rakuten AI for RMS」は楽天市場の「出店プラン」に加入するユーザーであれば無料で利用可能。商品説明文の自動生成支援や、商品画像の加工、問い合わせへの回答文案作成・校正、レビュー返信文の作成などをAIが支援し、出店者は煩雑な作業を効率的にこなせるようになる。
直近では、2026年4月に「データ分析エージェント」機能をRakuten AI for RMSに追加した。データ分析の専門知識がない店舗でも、対話形式で売上データの分析と洞察を行え、次のアクションを得られるように支援する機能だ。
例えば毎月の売上を入力すると、同ジャンルの店舗平均売上や、月商が近い店舗と自店を比較できる。加えて、数値に基づいた自店の分析や、「売上の構成要素について、同ランク店舗平均と比較して分析してください」など、データを深掘りする質問も提案する。
楽天グループ コマース&マーケティングカンパニー コマース&マーケティング テクノロジー統括部 ジェネラルマネージャーの山川祐介氏によると、データ分析エージェント機能を追加した4月時点での深掘り質問利用率は低かったが、6月になるとデータ分析エージェントを利用した店舗の72.9%が追加で深掘り質問を行っているという。「この数値を見る限り、データ分析エージェントは店舗運営に役立っていると受け取めている」と話した。
楽天市場でギフト専門店「momo-fuku」を運営する、株式会社百福 専務の木澤典子氏は、ユーザーからの問い合わせに対し、回答作成支援AIを使うことで、問い合わせ対応時間を従来の月67時間から月20時間へ、約70%削減できたと紹介した。
地域ごとの配送に関する細かい質問は1件あたり約10分かかっていたが、AI導入後は1件あたり1~3分まで短縮。また問い合わせへの返信で敬語やマナー、専門知識などが正しいかどうかを考える時間から解放され、「スタッフが自信をもって対応できるようになった」という。
AIコンシェルジュが実現する"対話で買い物"、注文金額も向上
楽天市場の購入者向けにもAI機能が拡充されている。2025年11月に商品との新たな出会いを創出する「ディスカバリーレコメンデーション」、2025年12月に対話型の「AIコンシェルジュ」をリリース。ユーザーニーズに沿った、パーソナライズされた買い物体験を提供する。
AIコンシェルジュは、「肌に優しい日焼け止めを新しく買いたい」といった自然言語での質問に対し、文脈を理解した商品を提案する。「お店で接客を受けているかのような対話体験」の実現を目指した機能だ。
AIコンシェルジュが具体的な商品を複数提案した場合、ユーザーは最大4商品の情報をその場で比較できるほか、特徴や価格、在庫状況、レビュー概要などをまとめて提示するなど、ユーザーが判断しやすい情報を提供する。
これにより、AIコンシェルジュ導入前と比較してユーザーは商品を探し始めてから購入に至るまでの時間が約41%短縮したほか、平均注文金額も約17%向上したとする。
「ディスカバリーレコメンデーション」は、ユーザーの興味関心を基にAIがパーソナライズした商品やコンテンツを提案する機能。
イメージは「イオンモールやららぽーとなど大型ショッピングモールを歩きながら、商品と偶然出会う体験をオンラインで再現するもの」で、今後は店舗の知見を取り入れながらパーソナライズ化を進め、ユーザーと商品の新しい出会いを提供したい考えだ。
楽天グループ 執行役員 コマース&マーケティングカンパニー マーケットプレイス事業 楽天市場編成部 ジェネラルマネージャーの高間真理氏(高ははしご高)は、「これらのAI機能はアクセルを完全に踏んでいる状態ではない。まだ第1フェーズ」だと話す。
楽天は、AIとの対話やパーソナライズによる“発見型”の買い物体験を重視していく狙いだ。今後はAIによるパーソナライズを高度化させ、回答の質を高めつつユーザーの満足度も測りながら、エンターテインメント性も強め、「商品の発見を面白く体験してほしい」(高間氏)とした。
















