三井不動産が進める「木造ビル」戦略 CO2削減にも貢献、「日本橋に森をつくる!」 

企業だけでなく研究施設も入居

 

「木造ビル」の可能性を今後、どう追求していくか─。 

 三井不動産が「木造ビル」の展開に注力している。その1つ、「日本橋本町三井ビルディング &forest」は2025年に着工、27年1月には竣工を迎える。すでに上棟を迎え、現在は内装工事を進めている最中。 

 このビルは地上18階建てで、高さは84メートル、延床面積は約2万8000平米。現時点で国内最大・最高層の木造賃貸オフィスビルとなる。 

 用途は企業のオフィスが中心で、2階から4階の一部が、三井不動産が展開するライフサイエンス向けの賃貸ラボ施設「三井リンクラボ」になる予定。 

 立地は東京メトロ・三越前駅の東側で、昭和通りに面した場所となっている。鉄道駅は他に東京メトロ・都営地下鉄・日本橋駅、JR・新日本橋駅がある。 

 コンセプトは「日本橋に森をつくる」。構造には、木材と鉄骨を組み合わせた、特殊な「木造ハイブリッド構造」を採用している。三井不動産が北海道に持つ保有林から調達した木材約100立米を含め、構造材に国産材を合計で1100立米使用。「木材を使用することで、同規模の鉄骨造ビルを建てる場合と比較して、約30%のCO2削減効果が期待できる」(三井不動産ビルディング本部ビルディング事業4部事業グループ・岡田七峰氏) 

 構造部材としてだけでなく、内装にも木材を使用し、「温かみのあるオフィス」(岡田氏)を目指している他、周辺の公開空地にケヤキやサクラなどを植え、都心にいながら四季を感じられる空間をつくる考え。 

 こうした取り組みの結果、省エネ技術を活用して、設計段階での年間の一次エネルギー消費量を50%以上削減した非住宅建築物が取得できる「ZEB Ready」認証など、様々な環境認証を取得した環境配慮型ビルとなっている。 

 こうしたビルを実現する支えとなったのが、今回のビルの設計・施工を担当した竹中工務店の「木造・耐火・ハイブリッド技術」。特に柱や梁に、竹中工務店が開発した耐火集成材「燃エンウッド」が採用されている。 

 木のシートを貼ったような柱は多く見られるが「燃エンウッド」は中まで本物の木が使われている。構造は3層構造で、中央の「荷重支持部」に集成材を使っており、これが建物の重さを支えている。 

 その集成材の周りに「燃え代層」と「燃え止まり層」という2つの層があり、万が一、火災が起きた際には、この2層が中央の荷重支持部を火から守る役割を果たす。 

 今回のビルで、燃エンウッドは4階以上のフロアに使用されている。外周部の柱と梁に燃エンウッド、コーナー部にも竹中工務店の耐火被覆技術を使って、外周部の耐火・木造化を実現している。 

「超高層ビルになると、建築基準法上、フロアによって必要な耐火時間が異なる。上のフロアに行くほど必要な耐火時間は短くなり、下のフロアに行くほど長い耐火時間を求められる」(岡田氏)ということもあり、全体のバランスを見ながら燃エンウッドを配置している。 

「この物件に当社の『燃エンウッド』が採用されたことは大変光栄に感じている。環境に配慮した建物を建てなくてはいけないという思いを持たれているお客様が増えていることは間違いない。今後も中高層木造建築を建てたいというお客様のニーズに応えていけるように技術開発を進めていく」(竹中工務店) 

 入居に関しては、現時点ですでに満床。入居を決めた企業からはどんな声が挙がっているか。 

「日本橋というエリアで、新築で、この規模のオフィスビルが供給されること自体、マーケットで非常に高い評価をいただいている。また、国内最大級の木造オフィスビルということで、入居企業としても『環境経営に取り組むアピール』として、入居を企業ブランディングに活用いただいている」(岡田氏) 

 入居する企業の業種や業種については、当初は外資系企業が多いのではないかと想定していたが、IT企業、研究開発系企業、日系の一般企業と、国内外の幅広い業種の企業から入居の申し込みがあった。日本橋の新築オフィスという希少性と、木造ビルに付加価値を感じているようだ。 

 このビルの名称にある「&forest」は三井不動産が展開する木造建築のブランド名。今回の日本橋本町三井ビルの他、現在、神奈川県海老名市で複数テナント型物流用途を含む施設「MFIP海老名 &forest」を建設中である他、同じ日本橋で2棟目の木造オフィスビル「(仮称)日本橋本町一丁目5番街区計画」が進行中。このビルも木造ハイブリッド構造を採用する予定。今後は日本橋に限らず、他のエリアでも木造ビルの展開を計画中。 

 米トランプ大統領の政策もあり、欧米を含め、世界で環境対策への逆風が吹く。だが、今回の日本橋本町三井ビルの事例でわかるのは、環境意識を持つ企業が多いということ。そして今や採用に向けて、企業は「働きたくなるオフィス」に入居することも求められている。不動産会社としても、そうしたニーズに応えるアイデアが常に求められている。