
データを経営判断に活かす「戦略人事」へ
「日本の『HR×AI』の本番はこれから始まる。私はそう確信しています」――こう話すのは、HRBrain CEO(最高経営責任者)の堀浩輝氏。
2026年6月10日、HRBrainは人事・経営リーダーを対象としたオフラインカンファレンス「HRBrain Unite 2026」を開催した。
HRBrainは2016年の創業。人事評価システムを起点に、タレントマネジメントの高度化や人事部門の負荷軽減につながる多様なプロダクトを提供しており、累計4000社以上の企業を支援してきた。
この10年、堀氏はリライアビリティ(信頼性)、カスタマーファースト(顧客第一)、ビヨンド・サース(SaaSを超える)という「3つの軸」を大切にしてきたと話す。「この3つは、これからも変わりません。効果を実感していただけるまで伴走しきり、誰も置いてきぼりにしないサービスを提供する。これはAIの時代が来ても、会社のDNAとして変えないようにしていきます」(堀氏)
今、人事を巡る環境は、労働力の絶対的不足、人的資本経営の高まり、従業員期待の高まり・高度化という構造的圧力によって、大きく変わろうとしている。「従来の業務の延長では、もはや組織マネジメントは立ち行かなくなると考えています。人事や経営には今、新たなマインドセットと進化が必要不可欠です」と堀氏は強調する。
この10年でタレントマネジメントシステムは日本企業に普及し、人材データの蓄積、管理は進んできた。だが「多くの企業がまだ『DXの段階』にとどまっています。データは蓄積されました。でも、そのデータを経営判断に活かす『戦略人事』にはまだ至っていない」(堀氏)
その一方でAIは進化を続け、今や「質問に答える存在」から「自律的に仕事を完結させる存在」に変わった。だが、人事へのAI活用は、まだこれからだというのが現状。
定型業務をAIが担うことで、人事は「管理機能」から「経営機能」へと進化する。堀氏はこれが、今後10年の人事の大きな変化であり、HRBrainが取り組むテーマだと話す。
そのためにHRBrainは2つの大きなチャレンジをしていく。1つ目は「オールインワン・プロダクトの拡充」。「タレントマネジメントと、周辺にある『飛び地』をつなげる」(堀氏)。
具体的には、今年から採用領域に参入。これまで分断されていた「採用時のデータ」と「入社後の人材データ」を結合することで、活躍人材と候補者の類似度や、入社後の活躍・早期離職の予測、面接評価と実際のギャップ分析などが可能になる。
そして、「HRBrainに唯一欠けていたピース」(堀氏)だった「給与計算機能」の実現のため、給与計算アウトソーシングを手掛けるペイロールと戦略的パートナーシップを結んだ。
2つ目は「人事『知性』クラウドの展開」。そのためのプロダクトが、社内人材データをAIが学び、人事の戦略立案や生産性向上を支援する社内版生成AI「Brain」と、各社が活用している外部の生成AIから、HRBrainの人事データに安全に、直接アクセスできるようにする「Brain MCP」の2つ。
この2つの軸で、HRBrainは人事のさらなる業務効率化と、「経営機能」への押し上げを実現する考え。人事が「AIという、もう1つの脳」を獲得するために伴走していく。
今回のカンファレンスには元良品計画会長の堂前宣夫氏、ブックオフグループホールディングス取締役の川口佳子氏、ポーラHR本部本部長の岡田悠希氏
日比谷花壇専務・人事部管掌役員の中山真吾氏、同人事部部長向江正智氏が登壇し、AI時代の人事のあり方を語った。
今後10年、AIで人事がどう変わるのか、その一端が見えたカンファレンスとなった。