この半導体ニュースのまとめ

・ノベルクリスタルテクノロジーとJFCCが、酸化ガリウム結晶中の欠陥を三次元観察する技術を開発
・位相差顕微鏡を用いることで、転位などの結晶欠陥を非破壊・高速・大面積に評価可能
・結晶成長条件の最適化やウェハ検査への応用により、酸化ガリウムパワーデバイスの高品質化を後押し

酸化ガリウム結晶中の欠陥を非破壊で可視化

ノベルクリスタルテクノロジーとファインセラミックスセンター(JFCC)は7月7日、次世代パワー半導体材料として注目される酸化ガリウム(β-Ga2O3)結晶中の欠陥を、位相差顕微鏡を用いて三次元的に可視化する技術を開発したことを発表した。

酸化ガリウムは、日本発の半導体材料であり、自動車、鉄道、電力変換などに用いられる高効率・高耐圧パワーデバイス向け材料として期待されている。特にβ-Ga2O3は、高耐圧動作が可能であることに加え、比較的結晶成長が容易で、大面積ウェハを作製しやすいという特徴を持つ。

一方で、結晶中に存在する転位などの結晶欠陥は、デバイス性能の低下や長期信頼性の劣化につながる要因となる。そのため、酸化ガリウムパワーデバイスの実用化を進めるうえでは、結晶内部に存在する欠陥を正確に把握し、その結果を結晶成長条件の改善へフィードバックする評価技術が重要となる。

6インチウェハ全面も計算上約500秒で撮影可能

今回の研究では、光学顕微鏡の一種である位相差顕微鏡をβ-Ga2O3結晶の欠陥観察に適用した。位相差顕微鏡は、透明な試料の屈折率の違いを明暗として画像化する手法で、もともとは透明な微生物や細胞などの観察に用いられてきた。

今回の手法では1枚あたり360μm×300μmの画像を0.003秒で取得できるという。6インチウェハ全面を観察するためには約17万枚の画像が必要となるが、計算上は約500秒で撮影できるとしており、大面積ウェハを対象とした高速な欠陥評価への応用が期待される。

取得した位相差顕微鏡像では、点状のコントラストが観察され、他の評価手法との比較により、それらが転位に対応していることを確認したとするほか、他手法との一致率は96%を超えており、高い検出精度を備えることも示されたという。

  • 欠陥(転移)の三次元再構成像

    β-Ga2O3(101)単結晶の欠陥(転移)の三次元再構成像 (出所:ノベルクリスタルテクノロジー)

X線トポグラフィでは難しい近接転位も分離

β-Ga2O3結晶中の欠陥を非破壊で観察する手法としては、従来、X線トポグラフィが用いられてきた。X線トポグラフィは、結晶内部の欠陥を観察できる一方、測定や解析には結晶学やX線回折に関する専門知識が必要であり、誰もが容易に扱える手法ではなかった。

これに対して、位相差顕微鏡を用いた今回の手法は、操作が比較的簡便でありながら、結晶内部の転位を三次元的に観察できる点を特徴とする。焦点位置を結晶の上面から下面まで変化させながら観察することで、転位が結晶内部をどのように貫通しているのかを立体的に把握できるという。

研究では、多くの転位が特定方向にわずかに傾きながら直線的に貫通していることが確認された。一方で、傾斜方向が異なる転位や、全体としては貫通しているものの局所的に蛇行する転位など、複数の形態が存在することも明らかになった。

さらに、X線トポグラフィでは分離できなかった間隔約6.5μmの近接転位についても、位相差顕微鏡では個々の転位として識別できたとしている。これにより、転位の分布や密度を従来より高精度に評価できる可能性が示された。

ウェハ検査やインライン品質管理への応用に期待

今回の成果により、位相差顕微鏡を用いてβ-Ga2O3結晶中の欠陥を高速かつ大面積に三次元観察できることが示された。ウェハ全面の非破壊評価が可能になれば、結晶中の欠陥分布や欠陥密度を網羅的に把握でき、結晶成長条件の最適化に向けた迅速なフィードバックが可能となる。

また、同手法は観察操作が比較的簡便であることから、研究用途にとどまらず、将来的にはウェハ検査装置としての実用化も見込まれる。高速かつ広範囲の評価が可能なため、製造ライン内でのインライン検査や品質管理への展開も期待される。

酸化ガリウムは、SiCやGaNに続く次世代パワー半導体材料の候補として研究開発が進められている。高耐圧化や低損失化に加え、長期信頼性の確保が求められるパワーデバイス用途では、結晶欠陥の低減と評価技術の高度化が実用化に向けた重要な課題となる。

今回開発された三次元イメージング技術は、結晶成長条件の改善を通じてβ-Ga2O3結晶の高品質化を加速し、パワーデバイスの性能向上と信頼性向上に貢献することが期待される。

JFCC研究成果発表会で発表予定

なお、今回の研究成果は、2026年2月12日付で国際科学誌「APL Materials」にオンライン掲載されたほか、7月17日に東京大学 武田先端知ビルで開催される2026年度JFCC研究成果発表会の東京会場、および7月24日に愛知県産業労働センターで開催される名古屋会場で発表される予定だという。

ノベルクリスタルテクノロジーとJFCCは今後、同手法のさらなる高精度化・自動化を進めるとともに、欠陥の種類判別や定量評価の高度化を図る。また、他のワイドバンドギャップ半導体材料への展開も視野に入れ、次世代パワーデバイス材料の開発に貢献していくとしている。