航空ショーで軍用輸送機が展示飛行をすること自体は珍しくない。しかし、宙返りや横転まで披露する輸送機となれば話は別だ。そんな「輸送機らしからぬ」機動飛行で知られているのが、レオナルドC-27Jスパルタンである。なぜ、この機体はこれほど機敏に飛べるのだろうか。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照

  • これがC-27Jスパルタン。写真はオーストラリア空軍の機体 撮影:井上孝司

    これがC-27Jスパルタン。写真はオーストラリア空軍の機体 撮影:井上孝司

普通の輸送機は航空ショーでどう飛ぶ?

では、軍用輸送機の飛行展示といえば、どんな内容が定番なのか。

具体的にいうと、航過飛行にいくらかの動きを加えるとか、物量投下や空挺降下といった「機能」を見せたり、といったあたりが定番となる。あと、以前にも書いたが、C-17Aは着陸後に滑走路上でバックして「最後の見せ場」を作ることがある。

ことにC-130やA400Mみたいな戦術輸送機は、低空まで舞い降りて任務を果たすことも多いから、相応に身軽に動けるだけの能力はある。といっても程度問題であり、戦闘機とは話が違う。

ところが、数ある軍用輸送機の中でも、飛行展示の過激さにおいて、突出して知られている機体がひとつある。レオナルドC-27Jスパルタンである。

  • 飛行展示のために離陸するC-27J 撮影:井上孝司

    飛行展示のために離陸するC-27J 撮影:井上孝司

「アクロバット輸送機」C-27Jスパルタンとは

イタリアのアエリタリア(後にアレニア・アエロナウティカを経てレオナルド)が、1960年代にG.222という双発ターボプロップ輸送機を開発して、1970年に初飛行を実施した。

基本レイアウトはC-130と似ているが、だいぶ小型にまとめられており、エンジンも2基で済ませている。もちろん、小さい分だけ搭載量は小さいし、航続距離も短い。その代わり、短距離離着陸性能は優れている。胴体が短いため、空中投下を実施するときに重心位置の変化が少ない、と書いている人もいる。

そのG.222を基に、ロッキード・マーティンのC-130Jと同じロールス・ロイス製AE2100エンジン、そしてこれまたC-130Jと共通するアビオニクスを組み合わせたのがC-27J。空虚重量と最大離陸重量がそれぞれ2,500kgほど増えたが、エンジンはそれを上回るパワーアップとなった。

もちろん不整地離着陸が可能であり、道路上で離着陸したこともある。オーストラリア空軍の機体が、同国の大平原「ナラバープレイン」を通るハイウェイで離着陸を実施した模様を撮影した動画が、Youtubeに上がっている。

RAAF C-27J Spartan lands on Nullarbor plain (Highway).

そこで各機の諸元を拾ってみたのが以下の表。

  G.222 C-27J C-130J
全長 22.7m 22.7m 29.79m
全幅 28.7m 28.7m 40.41m
翼面積 82.0平方メートル 82.0平方メートル 162.12平方メートル
空虚重量 14,590kg 17,000kg 34,274kg
最大離陸重量 28,000kg 30,500kg 70,305kg
ペイロード 9,000kg 11,500kg 18,955kg
エンジン T64-GE-P4Dターボプロップ(3,400hp)×2 AE2100-D3ターボプロップ(4,591shp)×4 AE2100-D3ターボプロップ(4,591shp)×2
離陸滑走距離 662m 580m 930m
着陸滑走距離 545m 340m 427m

なぜC-27Jは輸送機らしからぬ機動ができるのか

そのC-27Jの飛行展示というと、前述したような「一般的な内容」では済んでいないのがお約束。宙返り(ループ)をしたり、90度に近いバンク角で旋回して見せたり、会場の上空を通過しながら横転(ロール)をして見せたりと、輸送機らしからぬ動きを見せることで有名。

それで冗談交じりに「アクロバット輸送機」といわれることもある。といっても、もちろん戦闘機や練習機を使う本物のアクロバットチームみたいな飛行はできないが、そこは比較の問題である。

  • 飛行展示中のC-27J 撮影:井上孝司

    飛行展示中のC-27J 撮影:井上孝司

Youtubeで「C-27J flight display」などとキーワード指定して検索すると、「これでもかこれでもか」という調子で動画が出てくるので、見てみていただきたい。筆者はオーストラリアで生で見たことがあるが、このときには比較的、大人しい内容であったようだ。

ただ、C-27Jの荷重倍数は3Gとされており、これはC-130Jとどっこいどっこいの数字。もちろん、7Gとか9Gとかいう数字になる戦闘機とはわけが違う。

デモ飛行の動画を見るとお分かりのように、動きは輸送機らしからぬものがあるが、速度はそれほど速くない。飛行機が旋回するときにかかるGは、旋回半径が同じなら速度の2乗に比例して増加するとされるから、速度が低ければ負担は小さい。

さて。展示飛行では空荷で飛ぶだろうし、燃料も満載はしていないだろうから、仮に空虚重量ベースで出力重量比を計算すると、こうなる。

  • G.222 : 14,590÷(3,400×2)=2.146kg/hp
  • C-27J : 17,000÷(4,637×2)=1.833kg/shp
  • C-130J : 34,274÷(4,591×4)=1.866kg/shp

C-27Jは重量あたりのパワーがG.222に比べて大きくなっている。また、空虚重量ベースだとC-130Jと似たり寄ったりだが、最大離陸重量ベースだとC-27Jの方がパワフルになる。

こうした点を生かして機敏に動いてみせることが、「輸送機らしからぬ飛行展示」につながっているといえそうだ。身も蓋もないことを書けば「見せ方がうまい」。こればかりは生で見るのがいちばんだが、あいにくと日本で見る機会はなさそうである。