生成AIに仕事を頼むといえば、これまでは「このメールを要約して」「この資料から企画案を考えて」といった使い方が中心でした。答えが返ってきたら、その内容をコピーし、メールや文書、スプレッドシートへ貼り付けて活用していたのです。→連載「柳谷智宣のAIトレンドインサイト」の過去回はこちらを参照。
しかし、AIエージェントはもう一歩踏み込んで仕事をしてくれます。例えば、GmailやGoogleカレンダー、Googleドライブ、Googleドキュメント、Googleスプレッドシートなどへアクセスし、情報を探すだけでなく、ファイルの作成や編集まで含めた一連の作業をこなすのです。
この手のAIエージェントはOpenAIやAnthropicからも出ていますが、今回取り上げるのはGemini Sparkです。日本では2026年7月16日に月額1万4500円からのGoogle AI Ultra向けとして提供が始まり、7月29日には月額2900円のGoogle AI Proユーザーにも解放されました。今回は、このGemini Sparkの活用法を紹介します。
Gemini Sparkを活用する
Sparkの中身は「タスク」と「スキル」「スケジュール」という3つの要素に分かれています。何をするのか、どのようにするか、いつするか、を指示することでAIエージェントが手を動かして作業してくれるのです。タスクは任せたい目標そのもの、スキルは進め方のルール、スケジュールは実行のきっかけ、という役割分担です。
なお、Sparkが使えるのは個人のGoogleアカウントに限られます。仕事用や学校用として発行されたGoogle Workspaceアカウントでは、GmailやGoogleドライブと連携できるサービス構成なのにSpark自体を利用できないという少し分かりにくい状態なので、会社での導入を考えている人は先に押さえておいてください。以下は個人アカウントでレビューしています。
Sparkを利用するには、Geminiの左上にある「Spark」タブをクリックします。Spark画面のメニューには、「ToDoリスト」がトップに表示されています。これがタスクを入力する画面です。「カスタマイズ」の下には、スケジュールとスキル、そしてアプリ連携が並んでいます。
なお、GeminiのMac版アプリではサイドバーのタスクの一覧が「タスク」と表示されているのですが、Web版のサイドバーでは「ToDo リスト」という名前になっています。翻訳の揺れだと思われますが、どちらもSparkへ投げたタスクのスレッド一覧です。
ビジネスパーソンを一日を想定し、Gemini Sparkを使う
今回はビジネスパーソンの一日を想定して、Gemini Sparkの使い方を解説していきます。まずは、これまで朝パソコンを開いたときにやっている作業から渡してみましょう。受信トレイを開き、今日の予定を確認し、どれから片付けるかを決める、数分のルーティンです。
Googleカレンダーの予定はもちろん、メールで依頼されるタスクもあります。今回は、ダミーの予定やメールを用意し、テストしてみました。中央の「タスクについて説明してください」と表示されているフォームにプロンプトを入力しましょう。
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プロンプト
今日のGoogleカレンダーと過去24時間のGmailを確認し、今日やるべき仕事を整理してください。今日の予定、今日中に対応が必要なメール、予定の前に済ませる必要があること、今日急いで対応しなくてよいものに分けてください。
指示した4つの区分は過不足なく埋まり、その内容もしっかり精査されていました。例えば、カレンダーには15時のトゥールビヨンとの打ち合わせしか書かれていませんが、Gmailにはその場で説明してほしい確認事項が届いています。
両方を突き合わせ、「予定の前に済ませる必要があること」の先頭には、導入プランや料金体系、データの管理体制など、事前に答えを用意しておくべき事項が書き出されていました。
メールで届いていた本日締め切りのリマインドも拾い上げ、「今日中に対応が必要なメール」へ分類されていました。10時と15時の予定の合間に書き進めるよう指示も入っています。
返信は今週中でよいと書かれていた取材日程の相談や、締め切りが8月20日の経費精算は、急がなくてよいものへ回されています。メール本文に書かれた期限を読み取ったうえで、優先順位を判断していることが分かります。
やることが整理されているので、ユーザーは即やるべきことに取り掛かることができます。短縮時間は数分かもしれませんが、塵も積もれば山となります。
3つの資料を読み比べ、次の打ち合わせ用の文書を作ってもらう
次は、成果物としてファイルを作成してもらいましょう。想定したのは、法人向けサービス「ドリス」を提供する側の担当者が、2回目の商談に臨む場面です。
1つ目のタスクに出てきた15時の打ち合わせがこの商談で、相手(トゥールビヨン)は社内でのAI導入を検討しています。初回商談で答えられなかった料金や導入期間、年払いの割引などは宿題として持ち帰っており、当日の朝に自社資料と前回の議事録を読み直してカンペを用意する、という流れです。
Googleドライブには、サービス概要、料金表、初回の打ち合わせメモという3つのGoogleドキュメントが保存されています。
サービス概要にはSSOへの対応や国内データセンターの利用、導入までの期間が、料金表にはプランごとの費用と上限ユーザー数が書かれています。初回の打ち合わせメモには、20人程度で使いたいという規模感と、先方からの質問が記載されています。
一方で、年払いにすると割引になるのかという質問への答えは、どの資料にも書かれていません。資料を横断して答えを集められるかどうかに加えて、分からないことを勝手に埋めないかどうかも同時に見られる状態になっています。
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プロンプト
Google Driveにある「ドリス AI_サービス概要」「ドリス AI_料金表」「20260810_トゥールビヨン_打ち合わせメモ」の3つを確認し、2026年8月17日のトゥールビヨン様との次回商談で営業担当が使う準備メモを作成してください。
内容は「相手の状況」「前回決まったこと」「今回回答すべきこと」「料金(先方の規模に最適なプラン)」「確認が必要なこと」の順に要点を箇条書きで整理し、「20260817_トゥールビヨン_打ち合わせ準備」というGoogleドキュメントとして保存してください。
Sparkは3つの資料を読み込み、指示どおり5つの見出しを持つGoogleドキュメントを作成しました。ファイル名も指定した「20260817トゥールビヨン打ち合わせ準備」のままで、チャット欄にはドキュメントへのリンクと、各項目へ何を書いたかの要約が表示されます。
中身を開くと、「今回回答すべきこと」にはSSOへの対応や国内データセンターの利用、導入までの期間などが、どの資料に基づく情報か分かるよう参照元付きで書かれていました。肝心の年払い割引は「確認が必要なこと」の先頭へ置かれ、料金表に記載がないため社内確認が必要、とされています。資料にない割引率や金額を勝手に補うことはありませんでした。
本来、複数の資料を行ったり来たりしながらコピペを繰り返さなければいけないところですが、AIエージェントなら一発でほぼ完成形が得られます。ユーザーは「確認が必要なこと」をチェックするところから作業を開始できるのです。もちろん、万一のハルシネーションに備え、顧客に伝える情報は人間がチェックするという基本は忘れないようにしましょう。
Macなら、パソコンに置いたファイルそのものを整理できる
Mac版GeminiアプリのSparkなら、ユーザーが許可したローカルフォルダのファイルも直接扱えます。AIエージェントがクラウドのみならず、ローカルファイルにアクセスできると、様々なことができるようになるのです。
まずはMac版Geminiアプリを起動し、サイドバー上部の「Spark」をクリックします。左側の「接続済みフォルダ」にある「Macフォルダを追加」をクリックし、操作させるフォルダを選択します。
初回は権限の付与を求められ、パブリッククラウドドライブに接続されている可能性があるフォルダを選んだ場合は、そのフォルダのファイルをGeminiが編集・共有・削除できるようになるという注意も表示されます。
SparkがMac全体を勝手に見られるわけではなく、ここで明示的に追加したフォルダだけが対象です。追加したフォルダは、項目の横にある「接続を解除」アイコンをクリックすることでいつでも外せます。
用意したのは「20260817検証」という名前のフォルダで、中には12個のファイルが入っています。「料金表最新版202608.pdf」や「提案書Tourbillon20260817rev4.docx」「DorisAIOverviewv1.2draft.pdf」「新規スプレッドシート (3).xlsx」といった具合に、日本語と英語が混在し、日付だけのもの、最新版やrev4という更新履歴が残ったもの、保存したときの初期名のままのものまで含まれています。
滅茶苦茶なファイル名ですが、実際の仕事用フォルダがこうなっている人も多いのではないでしょうか。中身を開けば見積書なのか提案書なのかは判断できるので、この状態のまま渡してみます。
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プロンプト
接続した「20260817検証」フォルダ内の全ファイルの内容を確認し、内容が分かる適切な日本語ファイル名に変更してください。そのうえで「見積」「企画」「参考資料」の3つのフォルダを作成し、料金表や見積書は「見積」、提案書や企画案は「企画」、サービス概要・打合せメモ・週報・業務メモ・管理シートなどは「参考資料」に分類・移動してください。判断がつかない不明・破損ファイルのみ「要確認」フォルダを作成して移動してください。
プロンプトを入力すると、作業パネルにフォルダ一覧の取得やファイルの閲覧といった手順が順に表示され、いま何をしているのかを追えるようになっています。処理中は、接続済みフォルダのバックアップを表示するリンクも画面下部に現れます。
12ファイルすべてのリネームと分類は、数分で完了しました。「料金表最新版202608.pdf」は「ドリスAI料金表202608.pdf」となって「見積」フォルダへ移動しています。日付しか書かれていない「20260727.docx」は、中身を読んだうえで「週報_2026-07-27(0721-0725).docx」となり、対象期間まで名前に入りました。「新規スプレッドシート (3).xlsx」も、列構成から「情報収集管理シート.xlsx」と名付けられています。
チャット欄には、新しいファイル名、旧ファイル名、内容の要約が組みで並び、どのファイルがどう変わったのかを一覧で確認できます。全ファイルの内容を判別できたため「要確認」フォルダは作られませんでした。
過去3本の週報から「自分の仕事のやり方」をスキルにする
ここまでのタスクは、毎回プロンプトに仕事の内容を書いて実行してきました。しかし、同じ種類の仕事を繰り返すたびに、この順番で書いて、ここは箇条書きにして、この情報は入れないで、と説明するのも面倒です。
そこで使えるのが「スキル」です。繰り返し使う指示や追加情報をまとめて保存する仕組みで、一度作成すると別のタスクからも呼び出せます。Spark自身がタスクの内容に関連するスキルを判断して自動的に使うこともあり、複数のスキルを1つのタスクで組み合わせることも可能です。
今回は、こちらから週報はこう書いてと直接ルールを教えるのではなく、過去に作った週報を見せ、その共通点からスキルを作ってもらいました。Googleドライブの「過去週報」フォルダには、過去の週報3つを保存しておきます。
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プロンプト
Googleドライブの「過去週報」フォルダにある3本の週報を読み込んでください。3本に共通する構成、文章量、文体、箇条書きの使い方、情報のまとめ方を分析し、今後同じ形式の週報を作れる「weekly_Reporting」というスキルを作成してください。個別の会社名、案件名、日付、具体的な成果など、3本それぞれに固有の情報はスキルに含めないでください。
このようにタスクへ自然文で頼めばスキルが出来上がり「スキル」メニューに登録されます。スキル画面を開くと「weekly-reporting」スキルが追加されているのでクリックします。
「カスタム指示」にはGeminiが読み込み、分析した週報のフォーマットが書かれています。「週報を作成してほしい」や「業務報告書を作ってほしい」と頼まれたとき、という発動条件や見出し、要素が並んでいます。
一方で、作った週報をGoogleドライブの同じ場所へ保存する、という手順が含まれていませんでした。週報のみを読み込ませて作ったためです。そこで、タスクのスレッドで追記を依頼し、Googleドライブに保存するように修正してもらいました。
早速使ってみましょう。用意したのは「今週の業務メモ_2026-08-17」というGoogleドキュメントで、中身は「トゥールビヨン向け提案資料を作成」「C社案件は先方からの回答待ち」といった雑な箇条書きだけです。
新しいタスクを開き、テキストボックスで「/」を入力すると、使えるスキルの一覧が表示されます。「weekly-reporting」を選択したうえで、プロンプトを入力します。
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プロンプト
/weekly-reporting Google Driveの「今週の業務メモ_2026-08-17」から作成してください。
返ってきたのは、箇条書きのメモが所定のフォーマットへ流し込まれた「週報_2026-08-17」というGoogleドキュメントです。もちろん、業務メモと同じフォルダに保存されています。
基本情報には氏名や社員番号、所属が記入され、対象期間は2026年8月10日から8月14日、提出日は8月17日と、月曜日を起点にした平日5日間が入りました。今週の業務実績は、顧客対応・提案、メディア執筆・制作、調査・社内業務という3つのカテゴリに整理され、メモに書いた項目がそれぞれの下へ振り分けられています。
文体も、報告書の調子でそろっていました。こちらがプロンプトに書いたのは、どのメモ書きから作るかという一行だけです。これが、スキルの便利なところです。
毎朝9時、AIニュースを勝手に調べて管理表へ追記してもらう
最後は、同じプロンプトを毎回入力する工程もなくしてみましょう。Sparkの「スケジュール」は、決めた時間や条件をきっかけにタスクを自動実行する仕組みです。時間指定では1回だけ、毎日、毎週、毎月といった設定ができるほか、条件に合うメールを受信したときなどに実行することもできます。
今回テストしたのは、地味に面倒なニュース収集です。そこで、毎朝9時に生成AI関連のニュースを調べ、新しいものをGoogleスプレッドシートへ追加するよう頼みます。
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プロンプト
毎朝9時にOpenAIやGoogle、Anthropicに関する生成AIの新しいニュースをGoogle検索で確認してください。前回登録したニュースより新しく公開された重要なニュースを最大3件選び、「AIニュースウォッチ」というGoogleスプレッドシートに追記してください。列は「日付」「企業名」「見出し」「概要」「URL」の順です。同じニュースがすでに登録されている場合は重複して追加しないでください。
プロンプトを送信すると、Sparkは指示の中の「毎朝9時に」を読み取り、一度きりのタスクではなくスケジュールとして登録しました。
登録内容は、サイドバーの「スケジュール」から確認できます。今回作られた「生成AIニュースをスプレッドシートに記録」を開くと、実行するタイミングは毎日9時、カスタム指示には目的、実行手順、最終成果物という3つの見出しで手順が書き起こされていました。自然文で書いた依頼が、そのまま作業手順の形へ整理されています。
翌朝9時まで待たなくても、動作は確認できます。スケジュールの詳細画面を開き、右上の「…」から「今すぐ実行」を選べば、その場で1回実行されます。
1回目の実行では、スプレッドシートに3件が追記されました。内容はそれぞれ指定した列へ収まり、URLは各社の公式発表やニュースサイトのものです。続けてもう一度実行すると、追加された3件はいずれも1回目とは別のニュースで、日付も1回目より新しいものがそろっています。既存の登録内容を確認してから追記する、という手順が実際に効いていました。
ちょっと面倒なタスクを1つ任せるところから始めよう
Sparkは、これまでチャット型生成AIの前後に人間が行っていた作業を代替してくれるのが大きな特徴です。
メールを読んだり、ドライブから資料を探し、Googleドキュメントにまとめたり、スプレッドシートに記録するといった操作は、1つずつなら特別難しいものではありません。しかし、Sparkは、その連続した部分をまとめてタスクとして処理してくれます。
月額2900円のGoogle AI Proまで提供範囲が広がったことで、こうしたAIエージェントを個人でも試しやすくなりました。まずは、朝の10分、資料作りの15分、週末のファイル整理といった、ちょっと面倒と感じているシンプルなタスクを1つまかせることからはじめてみましょう。
AIで仕事を自動化できると、とても楽しいですし、想像以上にストレスが減ります。業務効率も上がりますし、ぜひ今のうちからAIエージェントの活用スキルを身につけることをおすすめします。

















