時価総額がトヨタを超えて国内トップになるなど、ばく進中のキオクシアだが、キオクシア岩手の柴山耕一郎社長は「慢心したらすぐに落ちてしまう」と兜の緒を締める。激戦のメモリー業界で勝つためには「マインドが重要」と、課題への迅速な取り組みをめざす方針だ。

都内で開催された「電子機器2026トータルソリューション展」(会期:6月10〜12日)の基調講演に登壇した柴山社長は、東芝時代からの変遷を踏まえつつ、ものづくりの重要性を力説。とくに重視するのはマインドの重要性だが、この背景には台湾での学びがある。東芝がDRAMを手がけていた数十年前、パートナーになる台湾企業に技術移転を行っていたが、「技術導入に対するスピード感の違いを痛感した」と振り返る。

その後、東芝には数々の経営問題が表面化し、半導体事業も紆余曲折を経てキオクシアが誕生した。低迷期を抜けてキオクシアの業績が回復するなか、柴山社長はまた台湾を訪れた。そこで見たのは6軸ロボットが導入され、工程管理にもAIが使われている先進的な生産現場。「DRAM技術指導から25年ほども経っているのに、マインドセットがまだ台湾に追いついていない」と、改めて課題を認識させられた。やるべきことを迅速に実行するというマインドがまだ足りない。

いまでこそ絶好調のキオクシア、“想定外”の急激なV字回復だが、ここで慢心したら負けてしまう。競争は厳しいが、「社員個々に強いマインドがあれば勝っていける」と、自信をみせる。

キオクシアは技術面でも次世代の332層第10世代BiCSフラッシュメモリを今夏メドにサンプル出荷するなど、先端品で差別化を進めていく。併行してAIデータセンター向けの旺盛な需要に応えるため、キオクシア岩手 北上工場に新生産棟を建設するなど、能力増強を計画している。

生産性を重く見る柴山社長は、各工程から集めた膨大なデータをAI活用で分析し、歩留まり改善につなげるスマート工場をめざしている。窒化ガリウム(GaN)フォトカソードを使って3次元構造のフラッシュメモリの計測・検査時間を大幅に短縮するなど、2025年には先端システムも導入した。株式上場後も長い低迷期を耐えてきただけに、何をやるべきか課題は分かっている。強いマインドをいかに従業員と共有していけるか、動向が注目される。