電気通信大学(電通大)、名古屋大学(名大)、国立極地研究所(極地研)、京都大学(京大)、金沢大学(金大)の5者は6月17日、フィンランド・ソダンキュラに設置されている全天型オーロラ撮像装置と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する地球磁気圏観測用のジオスペース探査衛星「あらせ」による観測により、これまで報告例のない「リング状に急速拡大する脈動オーロラ」を初めて捉えたことを共同で発表した。
同成果は、電通大 情報・ネットワーク工学専攻/宇宙・電磁環境研究センターの細川敬祐教授、京大 生存圏研究所の栗田怜准教授、名大 宇宙地球環境研究所の三好由純教授、同・大山伸一郎講師、極地研の小川泰信教授、金大 理工研究域 電子情報通信学系/先端宇宙理工学研究センターの八木谷聡教授、同・松田昇也准教授、東北大大学院 理学研究科 地球物理学専攻の土屋史紀教授、同・熊本篤志准教授、京大大学院 理学研究科 附属地磁気世界資料解析センターの松岡彩子教授、同・今城峻助教、フィンランド・オウル大学 ソダンキラ地球物理観測所のTero Raita研究員、同・Esa Turunen名誉所長、JAXA 宇宙科学研究所の高島健教授、同・篠原育教授、極地研の藤井良一特任教授(名大 名誉教授)らの研究チームによるもの。詳細は、米国地球物理学連合が刊行する、地球惑星科学全般を扱うオープンアクセスの旗艦論文誌「AGU Advances」に掲載された。
オーロラは、地球の両極域上空でカーテン状にはためく、太陽と地球の磁気圏および大気中の原子・分子が織りなすダイナミックな自然現象だ。その中には、「脈動オーロラ」と呼ばれる特殊なタイプが存在する。これは、オーロラ・サブストーム(オーロラ爆発)の「回復相」において現れる、数秒から数十秒の周期で明滅を繰り返すパッチ状のオーロラである。
このオーロラは、地球の磁気圏赤道面付近の宇宙空間で発生する「コーラス波」と呼ばれる自然のプラズマ波動が、高エネルギー電子を散乱させ、大気へと降下させることによって発生する。従来、このオーロラの時間変化については多くの研究が行われてきたが、空間的な形状の変化や、それを決定づける宇宙空間の要因は十分に解明されていなかった。そこで研究チームは今回、高感度・高時間分解能の電子倍増型CCD(EMCCD)全天カメラと、同時刻に磁気圏を飛翔していた「あらせ」の観測データを組み合わせて、これらの謎に迫ることを目指したという。
同カメラによる観測は、コンピュータの自動制御によって連続的に行われている。今回の研究では、2017年3月に「あらせ」がカメラの視野内において観測を実施した際のデータを解析。その結果、パッチ状オーロラが放射状に全方位へ拡大した直後、中心に「ダークホール」(暗い穴)が現れ、細いリング状構造を形成する未知の脈動オーロラが撮像されているのが初めて確認された。
このリングの拡大プロセスは非常に速く、わずか10秒間で完了しており、高度約60kmから始まる電離圏高度における拡大速度は、秒速数十km以上に達することが確認された。この短時間でのオーロラの形状変化は、1秒間に100枚の画像を取得する世界最速のオーロラ観測により、初めて可視化された。
また「あらせ」の観測データには、コーラス波の連続的な強度上昇が記録されていた。パッチ状オーロラの中心から少し離れた領域にいた「あらせ」が、リングの拡大に一致するよう、数秒の遅れでコーラス波の強まりを検出したことが確認された。この結果は、パッチ状脈動オーロラの拡大プロセスが、宇宙空間におけるコーラス波の波源領域そのものの急速な拡大を反映していることを示しているという。
なお今回の研究では、この急速な波源の拡大を引き起こす要因として、プラズマ中を伝わる磁気流体力学波動の一種である「速進磁気音波(ファストモード波)」が関与している可能性が提唱された。
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リング状に拡大するオーロラの発現メカニズムの概略図。宇宙空間(磁気圏)において、コーラス波の波源がリング状に拡大し、そこから発生した波動が電子を散乱することで、オーロラがリング状の空間構造を持つ仕組みが示されている。(出所:電通大プレスリリースPDF)
今回の研究により、地上からの高解像度観測によって磁気圏におけるプラズマの擾乱が波動を通じて急速に伝播し、それが超高層大気で観測されるオーロラの形状を直接的に制御していることが明らかにされた。これにより、地上カメラによる広域オーロラ観測網を用いることで、地球周辺のヴァン・アレン帯(放射線帯)などにおける高エネルギー電子のダイナミクスを遠隔から可視化する新手法への応用が期待される。また近年、木星探査機によって木星の極域オーロラでも同様の円状に拡大する構造が発見されており、今回の研究のアプローチは他の惑星におけるオーロラの構造形成メカニズムの理解にもつながることが期待されるとしている。

