京都大学(京大)は4月28日、重力崩壊直前の大質量星内部における「酸素燃焼殻」の三次元電磁流体計算を実施し、自転率進化を司る磁場による「角運動量輸送」が太陽型星の理論を満たすことを突き止めると共に、大質量星内部での自転率進化を支配する新たなモデルを構築し、自転率の減速のみならず、特定の条件下では加速も起こり得る多様な自転率進化メカニズムを明らかにしたと発表した。

  • 重力崩壊直前の大質量星内部のシミュレーションイメージ

    重力崩壊直前の大質量星内部のシミュレーションイメージ。激しい対流が生じている酸素燃焼殻(緑色)、ケイ素燃焼殻(黄色)が可視化されている。ボックス内には磁場構造が投影され、矢印は自転速度が示されている。対流・自転・磁場の相互作用により、酸素燃焼殻の自転率が加速または減速する様子が明らかにされた。(c)Lucy O. McNeill(出所:京大プレスリリースPDF)

同成果は、京大大学院 理学研究科の嶌田遼太大学院生、同・Lucy O. McNeill助教、同・前田啓一教授、横山央明教授らを中心とした国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国天文学会が刊行する、天体物理学の学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

“エキゾチックな天体”の形成を紐解くきっかけに?

恒星は誕生時が最も自転速度が速く、死の直前にはその100分の1~1000分の1にまで減速していると考えられている。この減少をもたらす主因として挙げられるのが、磁場とプラズマガスの相互作用だ。膨大な時間をかけて内部の角運動量が表面へと運ばれ、太陽風によって放出されることで速度が少しずつ減少していくのである。例えば太陽も、約46億年前の誕生時は現在の約10倍の速さで自転していたと推測されている。

太陽の8倍以上の質量を持つ大質量星は、生涯の最期に重力崩壊を起こして超新星爆発に至り、中性子星を残す。さらに太陽の20倍以上の質量になるとブラックホールも誕生する可能性も浮上してくるが、いずれにしろ、崩壊直前の内部自転率やその分布は、重力崩壊や爆発の形態、そして残される天体の回転特性などに多大な影響を及ぼす。

例えば、中性子星の一種である「ミリ秒マグネター」のような超高速回転天体は、親星である大質量星が高速回転を維持している必要がある。しかし、これは「晩年になるほど遅くなる」という従来の定説と矛盾しており、大質量星の自転進化には大きな謎が残されていた。

星は固体ではなくプラズマの塊だが、地震に相当する「星震」と呼ばれる振動現象が発生する。この振動を解析する「星震学」によって星の内部構造や自転率が測定可能となり、現在では銀河系内の数千もの恒星についてデータが蓄積されている。

ところが、観測結果を既存の磁場による角運動量輸送理論に当てはめると、理論値が観測値を大幅に上回る自転率を予測してしまうという課題が浮き彫りになった。なお、ここでいう角運動量輸送とは、星の内部から外側へと回転のエネルギーが移動するプロセスを指す。

この乖離は、特にブラックホールや中性子星へと進化する大質量星において顕著だという。既存理論の限界として、星の内部で生じる対流と磁場の複雑な相互作用が、角運動量輸送の計算に置いて十分に考慮されていなかった点が指摘されていた。

一方で太陽型星については、対流と磁場の相互作用が表面の磁気活動に直結するため、三次元電磁流体計算による研究が進んでいる。その結果、対流に対する自転の重要度に応じて磁場構造や輸送形態が変化することが解明され、定式化もなされている。そこで研究チームは今回、太陽型星で培われた知見を大質量星へと応用し、激しい対流下での磁場による角運動量輸送のモデル化に挑んだという。

今回の研究では、重力崩壊直前の大質量星内部に形成される「酸素燃焼殻」付近を対象に三次元電磁流体計算を実施し、対流、回転、磁場の複雑な相互作用を直接調査したとする。分析にあたっては、太陽型星の対流層で知られる磁場形状・強度・対流・自転の相関関係が活用され、大質量星の計算においても類似の物理関係が成立することが明らかにされた。

この知見に基づき、酸素燃焼殻付近の磁場による角運動量輸送が、エネルギー生成率と自転率の関数としてモデル化された。構築されたモデルにより、今回の三次元電磁流体計算における自転率進化を再現可能であることが示されたとした。

今回のモデルは、星の一生をシミュレーションする一次元恒星進化計算への適用を目的としているとする。これまで反映されていなかった対流層での磁場効果を初めて取り入れた点が最大の特色だ。今後、このモデルを取り入れた恒星進化計算を行うことで、恒星の一生を通した自転率進化において、対流層の磁場が自転率に与える影響を検証する重要な足掛かりになると期待されるという。

また、従来モデルでは磁場は一貫して「外向き」の角運動量輸送を担うとされてきたが、今回の計算では、時間帯によって「内向き」と「外向き」の双方向の輸送が発生している状況も観測された。今回のモデルは、この複雑な双方向輸送を考慮した最新の設計となる。

現在の恒星進化理論では、内部磁場は常に自転率の低下を招くと予測されている。しかし今回の成果により、特定の条件下では磁場が内部自転を加速させる現象が確認された。これは、大質量星の自転率進化が従来予測よりもはるかに多様であることを示唆しており、一部の大質量星においては自転率の下限が存在する可能性も浮上している。

さらに極端なケースでは、このメカニズムが恒星内部を加速させ、ミリ秒マグネターやガンマ線バーストの親星のようなエキゾチックな天体の形成を促す可能性も推測されるという。研究チームは今後、今回のモデルを一次元恒星進化計算に組み込み、これらの可能性を詳細に検証していく予定としている。