この研究ニュースのまとめ
・ネコはマタタビとキャットニップ、どちらが好きかを比較
・成分の強さではなく、「実際に選ぶ行動」ではマタタビが優勢
・ニオイの強さ=好みではないことが分かり、ネコの嗅覚の奥深さが示された
岩手大学と名古屋大学(名大)の研究グループは、日本ではマタタビ、欧米ではキャットニップとして知られる「ネコが体を擦り付けたり転がったりする特有の反応」を引き起こす植物について、ネコが自由に近づくか無視するかを選べる条件下で反応性を比較した。その結果、単独提示ではどちらも反応を誘起するにもかかわらず、自由行動下ではマタタビの方がキャットニップよりも高頻度で反応を引き起こすことが分かったという。
同成果は、岩手大学 農学部 生命科学科の上野山怜子 助教、宮崎珠子 准教授、宮崎雅雄 教授、名大 大学院生命農学研究科の大岡左枝氏、西川俊夫 教授らによるもの。詳細は2026年5月12日付で化学生態学分野の国際学術誌「Journal of Chemical Ecology」(電子版)で公開された。
屋外の自由行動観察でキャットニップよりマタタビに反応することを確認
研究としては研究グループはまず、野外で育てたキャットニップの近くに、新鮮なマタタビの枝葉を置き、自由に出入りできるネコの行動を観察した。延べ10日間の観察で6匹のネコが計23回訪れ、そのうち5匹で計21回の擦り付け・転がり反応が見られたが、いずれもマタタビに対する反応であり、キャットニップへの同様の反応は確認されなかったという。
一方、マタタビ抽出液とキャットニップ抽出液を提示した試験では、4匹中3匹が両方に反応し、1匹はマタタビ抽出液のみに反応した。キャットニップ抽出液のみに反応した個体はいなかったという。
海外由来を含む22頭でもマタタビの優位を確認
次に研究グループは、アメリカ、イギリス、ロシア、イランなどに由来する9品種(アメリカンショートヘア、エキゾチックショートヘア、マンチカン、スコティッシュフォールド、メインクーン、ミヌエット、ペルシャ、ロシアンブルー、ベンガル)からなる22頭の飼育純血種ネコを対象に、普段過ごす広い室内環境で、マタタビ抽出液とキャットニップ抽出液を同時に提示する形でネコの反応性を調査。ネコは提示物に近づくか、嗅ぐか、無視するかを自由に選べる条件で試験され、結果として22頭のうち15頭がマタタビ抽出液のみに反応し、3頭がキャットニップ抽出液のみに、1頭が両方に反応した。残り3頭はにおいを嗅いだものの擦り付け・転がり反応は示さなかったとする。
この結果から、マタタビ優位の傾向は日本のネコに限らず、海外由来の品種でも観察される可能性が示されることとなったという。
有効成分量が十分でも「選ばれにくい」
興味深いのは、キャットニップ側の「有効成分が少ないから反応が弱い」という単純な説明が成立しない点で、研究グループによる化学分析によると、キャットニップ抽出液にはネコの反応を引き起こすネペタラクトン(複数の立体異性体)が十分量含まれていることが確認されたほか、実験室内でネペタラクトンを単独提示するとネコは特有の反応を示しており、自由選択条件で反応が弱かった理由は、成分不足では説明できないとしている。 研究グループは可能性として、生のキャットニップではにおいが強すぎる、あるいは持続的に放出されることで、ネコが行動に移りにくくなることも考えられるとするが、理由は現時点では不明としている。
動物行動の評価は「自由選択条件」が鍵に
今回の研究成果は、動物が実際に近づいて反応することと、活性物質の量や強さが必ずしも一致しないことを示し、嗅覚刺激と行動の関係に新たな視点を提示するものだという。研究グループは、においによる動物行動を評価する際には、実験室内の反応性だけでなく、動物が自ら選択できる環境で検証することが重要であり、飼い猫のエンリッチメント素材の改良にもつながる成果だとしている。
