ネコは高い所から落ちても、空中で体勢を立て直して足からスッと着地する。俗に“ネコひねり”、学術的には「立ち直り反射」と呼ばれるこの動作を考えるための新しいデータが得られたと、山口大学の研究グループが4月10日に発表した。
山口大学共同獣医学部の日暮泰男助教と、学部6年生(当時)の戒能靖史大学生らによる研究成果で、ネコの脊椎(背骨)の一部である胸椎と腰椎が、どのくらいの力でどのくらいねじれるのかを測定し、ネコの胸椎が非常にねじれやすいことを発見したもの。
この研究は、力学的手法で得られた“ニュートラルゾーン”などのデータに基づいて、ネコの胸椎と腰椎のねじれやすさを比較した初めての研究だという。詳細は、学術誌「The Anatomical Record」へ2026年2月24日に掲載されている。
未解明の「ネコひねり問題」
ネコを飼っていたり、ネコカフェを訪れたりする人であれば、ネコを抱き上げようとしても手足をバタつかせて嫌がられ引っかかれそうになって、パッと手を放してしまった経験が一度や二度は(もしくは何度でも)あることだろう。だがどんな体勢で手放されても、ネコが背中から地面に落ちて伸びてしまうことはない。
また、人が手を出さない状況であっても、似たような状況にお目にかかることもある。たとえば高いところを移動していたネコが何かの拍子に地面に落ちてしまい、それでもスッと足から着地して、何事もなかったかのように毛繕いをし出す……そんな光景も別段珍しくはない。しかし生物学的に考えると、これは奇妙なことだ。
ネコには備わっている立ち直り反射だが、この能力はすべての動物に備わっているわけではない。たとえば、イヌが立ち直り反射をするという話を耳にすることはないだろう。
では立ち直り反射の際に、ネコはどのように体を使っているのか? この「ネコひねり問題」について、これまでにさまざまな考えが提唱され、多くの研究者が取り組んできたが、十分な解決にはいたっていなかった。また、「ネコの体が実際にどのくらいねじれるのか」についても、あまり知られないままに議論がなされてきたという。
今回の研究では、ネコの検体から胸椎と腰椎を採材。力学的手法によりどのくらいの力でどのくらいねじれるのかを測定し、胸椎と腰椎の間で比較した。
研究内容と得られた成果の意義
研究グループは、病理解剖のために山口大学に寄贈された5匹の遺体から、胸椎と腰椎を採取。荷重試験機に取り付けて、壊れるまで一方向にねじり、ねじる力とねじれた角度の関係を明らかにした。
その結果、ネコの胸椎には片側47度まで、ほとんど抵抗力が発生しない“ニュートラルゾーン”が存在したことが分かったという。研究グループはこの数値から、左右両側では94度まで同様のゾーンが存在すると推定している。
一方で、腰椎には前述のニュートラルゾーンはほぼ存在せず、強い抵抗力が発生。胸椎は最大で片側171度までねじれたが、腰椎は片側57度までしかねじれなかったという。
このことから、ネコの胸椎は腰椎よりも非常にねじれやすいことが分かったとのこと。
なお研究グループは、存命のネコ2匹による立ち直り反射を撮影し、頭部を含む上半身の反転が、下半身の反転よりも先に完了することも確認。これらの結果から、ねじれやすいネコの胸椎が立ち直り反射を行う上で役に立っている、と考えている。
今回の研究成果により、ネコの胸椎は非常にねじれやすく、立ち直り反射に有利に働く可能性が示されたとのこと。ただし、この研究でネコひねり問題が完全に解決されたわけではない。
研究グループは、「今後は、今回明らかとなった実際のネコの体の柔軟性を正確に反映した数理モデルを構築していくことが、この難問を解くために必要だ」としている。

