NECは、ロケットから分離された人工衛星を静止軌道や月周回軌道まで運ぶ「軌道間輸送機」(OTV)の開発プロジェクト開始を5月13日に発表した。実用化できればアジア初となる。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する宇宙戦略基金事業の技術開発テーマ「空間自在移動の実現に向けた技術(A)軌道間輸送機の開発」への採択と、補助金交付決定を受けたもの。2027年度末までにOTVの市場性の調査や概念設計・実証を進め、求められる機能などを明確化。2028年度から実証機の開発に着手し、2032年度の打ち上げと宇宙空間での実証を経て、実用化をめざす。
人工衛星を軌道に乗せるには、一般的にはロケットで初期軌道に投入した後、衛星自身が大型エンジンと大量の燃料を使い、目的の軌道まで自ら移動する必要がある。その輸送を肩代わりする宇宙機としてOTV(Orbital Transfer Vehicle)が注目を集める中、超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)や、月探査機「かぐや」(SELENE)、小惑星探査機「はやぶさ2」といった、さまざまな宇宙機開発・製造で半世紀以上の実績をもつNECが、OTV開発への参入を明らかにしたかたちだ。
OTVを活用するメリットとしては、大型エンジンを持たない小型衛星でも遠方の軌道へ投入できるようになるほか、複数の小型衛星をまとめて静止軌道や月周回軌道などへ輸送することも可能になり、輸送効率の向上にも寄与する。
また、静止軌道や、地球と月近傍の間の広大な宇宙空間(シスルナ空間)の活用といった将来の宇宙経済圏の開拓促進に加え、宇宙利用のハードルを下げることで新規事業者の参入促進にもつながることから、OTVは「あらゆる宇宙開発を加速させるドライバーとして期待されている」(NEC)。
NECは、多彩な宇宙機の開発技術と運用ノウハウをもとに、OTVの開発プロジェクトに取り組み、国際競争力を高める方針だ。日本企業がOTV開発を進めることで、「他国に依存しない新たな輸送技術・手段の獲得に寄与し、経済安全保障の観点でも貢献する」としている。
