AstroXは、気球でロケットを成層圏まで運んで打ち上げる空中発射方式「Rockoon」(ロックーン)システムの「サブオービタルミッション」を2026年度中に実施し、高度100km以上の宇宙空間まで飛ばす計画を発表。都内で5月26日に開催された記者会見では、実験に使う新型ロケット「FOX2」をはじめ、ミッション内容についての説明が行われた。
同社が実用化をめざすRockoonシステムでは、気球に吊り下げられたCMG(Control Momentum Gyro)方式の姿勢制御装置を介して、ロケットをランチャーレールへ装填。気球の浮力によって成層圏まで浮上したのち、所定の方位角・仰角を保持しながら、空中で宇宙空間に向けて発射する構成となっている。
気球を使ってロケット打ち上げを行うメリットについて同社は、最もエネルギーが必要な空気層を抜け出すフェーズにロケットのエネルギー(燃料等)が不要になり、比較的シンプルな構造のハイブリッドロケットを活用することで既存ロケットよりも打ち上げ輸送コストを抑えられると説明。また、打ち上げに必要な射場規模も小さくできて、日本各地や洋上など複数拠点から打ち上げられること、需要に応じて柔軟に射場が選べるようになることなども、Rockoon方式の強みとして挙げている。
'26年度中に実施予定のサブオービタルミッションでは、民間企業として世界初のRockoon方式による宇宙空間到達をめざす。ロケットは成層圏(高度20~25km前後)まで気球で運ばれ、そこから方位角制御を行って空中発射される。
実験に使うFOX2ロケットは単段式で、固体燃料と液体燃料を使うハイブリッド式。2024年11月に打ち上げ実験を行った「FOX1」ロケットの成果と課題を踏まえて開発した後継機だ。
FOX1は打ち上げ後に回収することを前提とした設計となっていたが、FOX2は打ち上げ後の回収は行わないため、FOX1よりも小型軽量化されている。ロケットのサイズは全長約5m、直径約340mmで、ドライ重量は約126kg。
FOX2がFOX1と大きく異なるのは、発射方式と推進系。FOX1は地上発射だったが、FOX2では“本番環境”と同様に、気球で成層圏まで運んで点火する。同社では、「大気の薄い成層圏からの発射により空気抵抗を大幅に低減し、従来の地上発射と比べて省燃料で宇宙空間への到達を可能にする」と説明している。
推進系には、2025年に燃焼試験に成功した成層圏仕様の点火装置を搭載。酸化剤とプラスチック燃料を使ったハイブリッド仕様で、サブオービタル機としての要求推力を達成できるようにした。推力は12kN。
FOX1発射実験の学びから、到達高度を確実なものにするために酸化剤圧力のコントロール技術を事前の気球放球により実証。さらに、空気の薄い成層圏でも安定した飛翔を実現するためにスピン安定も採用する。
今回のサブオービタルミッション初号機ではペイロード契約も結んでおり、高知工科大学インフラサウンド研究室(山本真行教授)が参画、センサなどを気球側(姿勢制御装置)とロケット側にそれぞれ装備。「Rockoonならではの、ひとつのミッションで複数高度からの観測機会を提供する」(AstroX)。
インフラサウンドとは、人の耳では聞こえにくい“20Hz未満の超低周波音”のこと。火山噴火や爆発現象、津波に伴う大気の揺れ、ロケットの打ち上げなどで発生し、遠くまで伝わることから、防災や環境監視の重要な観測対象とされる。
山本教授の研究室では、過去にもインターステラテクノロジズの小型ロケット「MOMO3号機」にセンサを搭載してインフラサウンドの解析研究を行っている。今回のAstroXのサブオービタルミッションでは気球を使って成層圏までロケットを運ぶ過程も活用し、地上と成層圏、宇宙空間近傍の3点でインフラサウンドを同時計測できることが大きな違いだという。
AstroXは2026年度中のサブオービタルミッション実現に向け、段階的な実験を行う計画だ。
まず第1四半期中に、同社最大規模となる550kgの大型気球を係留してオペレーション習熟を図り、気球を成層圏まで到達させる40kg放球実験も実施。第2四半期には、100kg放球実験と成層圏環境での初の点火実験を行い、本番に近い規模となる750kgの大型気球を放球して成層圏到達も実証する。
その後、第3四半期にはサブオービタル1号機(FOX2ロケット)の打ち上げに臨み、民間企業で世界初となる、Rockoon方式による宇宙空間(高度100km以上)への到達をめざす。
このほかAstroXは、宇宙開発への挑戦を共に担うパートナー企業と連携する「AstroX Rockoon Challenge」スポンサーシッププログラムを立ち上げ、初のプラチナスポンサーとして、プリント配線板の製造・販売を手がける日本シイエムケイ(CMK)が参画することを公表している。
CMKは、高信頼性が求められる電子機器基板の分野で培った技術力を背景に、宇宙領域への事業展開を見据え、AstroXのミッションを支えるパートナーとして共に宇宙をめざすとしている。










