欧州の量子プロジェクトが本格始動
imecは、同社本社キャンパスで産業用量子ナノシステム向け半導体パイロットライン「SPINS」が、6つの欧州量子パイロットラインの1つとして2026年4月より稼働を開始したことを明らかにした。
imec主導の同コンソーシアムは、独Fraunhofer、フィンランドVTT、仏CEA-Letiなどの研究開発機関、産業界(Infineon TechnologiesやSiltronicなどの大企業、中小/スタートアップ)、デルフト工科大学やユヴァスキュラ大学などの学術グループを含む25の欧州研究機関、企業、大学の研究グループが結集したもの。プロジェクト予算は5000万ユーロで、欧州連合(EU)傘下の半導体チップ共同事業体(Chips JU)と参加加盟国および地方当局からの共同資金援助によって実現した。
EU全体で6種類のパイロットラインを計画
量子コンピューティングは、経済的および社会的に重要性が高まっている戦略的な分野であり、応用分野も創薬や材料科学、安全な通信、次世代ナビなど多岐にわたっている。しかしながら、現在の量子研究と、実用的な量子アプリケーションを実現するための製造可能な量子プロセッサの間には、依然としてギャップが存在している。安定した量子ビットの数を最大10億個まで増やすことが、信頼性が高く耐障害性に優れた量子コンピュータを構築する鍵とされる。
極低温動作、超精密制御エレクトロニクス、高度な製造プロセスなどの技術的な複雑さと量子チップの戦略的重要性を踏まえ、EU Chips法では、それぞれが独自のハードウェアプラットフォームに焦点を当てて量子コンピューティング、通信、センシング分野における量子技術を総合的に推進することを目指し、6つの補完的な量子パイロットラインをEU内に立ち上げる計画としている。その中でSPINSは半導体ベースのスピン量子ビットに特化したパイロットラインで、量子コンピューティングアプリケーション向け量子チップの提供を主な目的としている。
SPINSの最初の取り組みはプロセスと設計の最適化であり、Si/SiGe、Ge/GeSi、SOIという3つの異なる技術プラットフォーム上で、拡張性、安定性、高性能を備えたスピン量子ビットの基盤確立を目指すという。SPINSでは、マルチプロジェクトウェハ(MPW)と標準化された量子プロセス設計キット(PDK)を通じて参入障壁を下げ、欧州企業の早期ノウハウ蓄積を推進し、研究から製造への道筋をつけることを目指しているとする。
SPINSコーディネーターのクリスティアン・デ・グレーヴェ氏は、「imecでは、40年以上にわたり、高度な半導体製造技術を用いて複雑な問題に創造的に取り組んできた。このパイロットラインにコンソーシアムの専門知識を結集することで、高TRL(技術成熟度レベル)の半導体量子ビットの開発を加速させ、欧州での大規模量子システム製造を実現する」と述べている。
なお、今回のSPINSのほか、残り5つのパイロットラインは、量子フォトニクス「P4Q」(オランダのトゥエンテ大学が主導)、イオントラップ量子ビット「CHAMP-ION」(オーストリアSALが主導)、超伝導量子ビット「SUPREME」(フィンランドVTTが主導)、ダイヤモンド量子チップ「DIREQT」(イタリアCNRが主導)、中性原子「Q PLANET」(仏Pasqalが主導)となっている。

