米国の先端半導体メーカーであるNVIDIA製の人工知能(AI)用半導体を、中国軍と深い関わりを持つ大学や研究機関が調達、あるいは利用を試みていた事実が調達記録などから明らかになった。

この動向は、単なるハイテク企業のサプライチェーンの問題にとどまらず、米中による最先端技術の主導権争い、すなわちテクノナショナリズムを背景とした地政学的対立の本質を浮き彫りにしている。

対中規制網を潜り抜けるアプローチとは

米中対立において、AI技術は次世代の軍事力や経済基盤を決定づける核心的な要素と目されている。米国政府は、中国による先端技術の軍事転用を阻止すべく、対中輸出規制を段階的に強化してきた。

NVIDIA製の高性能半導体は、複雑な計算を高速で処理する能力に優れ、兵器開発や高度なサイバー戦術のシミュレーションにおいてきわめて有用とされる。そのため、米国は自国の技術が中国の軍事近代化に寄与することを警戒し、最先端製品の輸出を厳しく制限してきた経緯がある。

しかし、今回の記録判明により、こうした規制網を潜り抜けようとする中国側の多様なアプローチが顕在化した。

中国軍の関連機関や、軍事技術開発を支える「国防七校」と呼ばれるエリート大学群は、第三者のブローカーを経由した購入だけでなく、クラウドを介して国外にあるサーバーの計算能力を遠隔でレンタルする手法などを模索している。ハードウェアの現物が国境を越えないレンタル契約は、従来の輸出管理規制の定義において法的盲点となりやすく、制裁の実効性を担保することの難しさを証明している。

戦略物資をめぐる攻防

地政学的観点から見れば、この事態は技術の囲い込みを図る米国と、技術の自給自足および代替手段の確保を急ぐ中国との、構造的な摩擦の現れと言えよう。

米国にとっては、日本や韓国など同盟国をも巻き込んだ強固な包囲網の再構築が急務となる一方、規制を強化しすぎれば自国企業の利益や開発資金を損なうというジレンマも抱える。

他方、中国にとっては、華為技術(ファーウェイ)をはじめとする国内産業の育成を進めつつも、現時点での技術的格差を埋めるために、NVIDIA製という最高峰の知財へのアクセスを完全に断つわけにはいかないという現実がある。

最先端半導体という戦略物資をめぐる攻防は、国家安全保障とグローバルな自由貿易の論理が衝突する最前線である。物理的な封じ込めが困難なデジタル空間やクラウド技術の進展に伴い、安全保障の境界線は日々あいまいになりつつある。

今回の事案は、一企業の製品を巡る問題を超え、AIがもたらす未来の覇権を掌握せんとするふたつの大国による、終わりなき陣取り合戦の一幕を象徴している。