富士フイルムは4月23日、先端プロセス向け環境配慮型材料として、フッ素を含む原材料を使用しない(フッ素フリー)のネガ型ArF液浸レジストを開発したことを発表した。需要が拡大するAI半導体の製造に用いられる先端プロセスに対応しており、すでに顧客向けにサンプル提供を開始しているという。
PFAS規制を背景に高まる「フッ素フリー」材料への要請
現在広く普及しているArF液浸露光向けフォトレジストには、微細な回路パターン形成に不可欠な酸の反応効率の向上や、露光工程で生じるウェハ上の水残りによる欠陥抑制を目的として、PFAS(ペルフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物およびこれらの塩類の総称)を含むフッ素系材料が用いられてきた。
しかし近年、PFASの種類によっては環境や生態系への影響が懸念されるようになってきており、世界的に使用に対する規制の動きが加速している。加えて、半導体製造工程においては、フッ素を含む廃液とそれ以外の廃液を分別管理する必要があり、フッ素を含む廃液は高温で処理することが求められることから、エネルギー消費の増大も課題となっていた。こうした背景から、PFASに限らずフッ素そのものを含まない材料を用いた半導体製造に対する関心が高まりをみせるようになってきている。
フッ素なしで実現した微細加工性能
今回、同社が開発したネガ型ArF液浸レジストは、PFASを含めフッ素を含む原材料を一切使用していない点が最大の特徴だ。
従来のArF液浸レジストでは、性能向上を目的にフッ素系材料を用いることが不可欠とされてきたが、同社は銀塩写真分野で培ってきた機能性分子の設計技術と、半導体材料開発で蓄積した分子設計技術、有機合成技術、処方技術、解析技術を組み合わせることで、フッ素を含む原材料を導入しないでも必要な各種性能を実現したとする。
具体的には、回路パターン形成における高い酸反応効率と、液浸露光時に問題となる水残りを低減する高い撥水性を両立し、ばらつきの少ない微細な回路パターン形成を可能にしているという。
環境負荷低減と製造効率向上を同時に狙う
フッ素フリー化のメリットは、材料の安全性向上にとどまらず、廃棄管理の簡素化、廃液処理時のエネルギー低減など、広範囲に及ぶことが期待される。そのため、同社でも、PFASに限らずフッ素を含む原材料を使用しない新規材料開発を推進することが、半導体製造プロセス全体の環境負荷低減につながるとしている。
先端レジスト全体への展開を視野
なお同社では、今回のネガ型ArF液浸レジストで培ったフッ素フリー化の技術やノウハウを、EUV向けフォトレジストを含むほかの先端レジスト材料にも展開していく方針だ。
同社は、フォトレジストやCMPスラリ、ポリイミド、感光性絶縁膜材料「ZEMATES」など、前工程から後工程まで幅広い半導体材料を手掛けており、先端からレガシーまで幅広いプロセスをカバーできる製品群を取りそろえていることを強みにしている。今回開発されたフォトレジストも、すでに顧客へのサンプル提供を開始しており、そうした客先評価を経て、早期の販売につなげたいとしているが、こうした環境規制への対応と先端半導体製造に必要な性能を両立する取り組みは、成長が期待されるAI時代における半導体材料の方向性を示す一例となりそうだ。