京セラは4月14日、ウシオ電機と同社の半導体レーザーデバイス事業に関する株式譲渡契約を締結したと発表した。ウシオ電機が当該事業を承継する新会社を設立し、京セラが同社の全株式を2027年4月1日付で取得することを予定している。
今回の取引により、京セラはGaN系レーザーに強みを持つ自社技術と、GaAs基板を用いた赤色レーザー技術を併せ持つ体制を構築し、RGBレーザーデバイスの技術基盤を強化する狙いだ。
不足していた「赤色レーザー」の技術を外部から補完
京セラは、米国子会社のKYOCERA SLD Laser(KSLD。2020年にSoraa Laser Diodeを完全子会社化し、社名を変更)にてGaN基板を用いた青色および緑色の半導体レーザーを手掛けてきており、車載向けロードプロジェクションやメタバース分野のARグラスなどをターゲットとしたRGBレーザーダイオードの開発を進めてきた。
しかし、RGBレーザーを構成する3原色のうち、赤色レーザーはGaAs基板が主流であり、GaNをメインとする京セラグループ内には十分な技術蓄積がなかったことから、外部リソースの活用や協業の検討を行ってきたという。
今回の取り引きで、GaAs基板を用いた赤色レーザーで競争力を有するウシオ電機の半導体レーザーデバイス事業をグループに迎えることで、RGBレーザーを自社完結で開発・供給できる体制が整うことになる。
車載とメタバースでの活用を見据えた戦略的M&A
京セラがRGBレーザーの内製体制の構築を推進する背景には、車載分野における表示ニーズとAR/XR分野に対する成長期待がある。車載分野では、車両に搭載した光源で進行方向や注意喚起情報を路面に投影するロードプロジェクション技術の活用が期待されているが、その実現には高輝度かつ高信頼性のレーザー光源が不可欠となる。
また、メタバース用途では、ARグラスやヘッドマウントディスプレイ向けに、小型・低消費電力で色再現性に優れたレーザー表示技術への期待が高まっている。RGBレーザーを自社で統合的に開発する体制の構築は、これらの分野での製品差別化を進めるうえで重要な意味を持つ。
「材料×デバイス」融合の延長線上にあるRGBレーザー
今回のM&Aは、京セラがこれまで強みとしてきた材料技術とデバイス技術を融合するという戦略の延長線上にある取り組みであると考えられる。これまでの強みであったGaN技術にGaAs技術という異なる半導体材料プラットフォームを取り込むことで、用途に応じたRGBそれぞれの最適設計が可能になる。
ウシオ電機にとっても、2024年に策定した新成長戦略「Revive Vision 2030」に基づく形で資本効率の向上および事業ポートフォリオの最適化を推進してきており、その一環としてフォトニクス分野での事業ポートフォリオ見直しを進める中で、半導体レーザーデバイス事業を、より親和性の高いプレイヤーに託す判断を下したと見ることができる。
半導体レーザー市場では、通信や産業用途に加え、車載、センシング、表示といった新領域での用途拡大が続いている。今回の京セラによる事業取得は、そうした成長分野に経営資源を集中させる動きの一環とも言える。近年の半導体を取り巻くトレンドとしては、半導体デバイスの性能が高いことはもとより、量産性や信頼性を踏まえたシステムとして組み込んだ際の完成度が問われるようになってきた。そうした意味でも京セラがウシオ電機の技術を取り込み、どのように製品開発や市場展開を加速させていくのか、今後の技術統合と事業展開の動きが注目される。