ルネサスが誘導型位置センサ3製品を発表

ルネサス エレクトロニクスは10月9日、高精度かつ堅牢でコスト効率が高いモータの角度センサである誘導型位置センサ(インダクティブポジションセンサ:IPS)ICとして、ロボットやファクトリオートメーションで使われる高価な磁気/光学式エンコーダの置き換えに最適な高精度用途の「RAA2P3226」、産業モータやアクチュエータなど高速モータ制御用の「RAA2P3200」、電動工具や医療機器など低速モータ位置検出用の「RAA2P4200」という3つの製品を発表した。

  • 「RAA2P3226」「RAA2P3200」「RAA2P4200」のパッケージおよび適用イメージ

    「RAA2P3226」「RAA2P3200」「RAA2P4200」のパッケージおよび適用イメージ (提供:ルネサス)

設計を容易化できるWebツールも提供

位置を測定するセンサとしては、磁気、光、レゾルバなどがあるが、誘導型位置センサは、可動部に金属ターゲットを組み込み、プリント配線版にコイルパターンをレイアウトしたものをセンシング素子として活用することで、柔軟性の高い設計を実現しつつも高精度な位置検出を可能とし、かつ磁石を用いないため周辺磁場に対する高い耐性も有するという特徴があり、注目されるようになってきている。

しかし、設計者にとっては、アプリケーションごとに最適なセンシング素子をカスタム設計する必要があり、それが導入を妨げる課題の1つとなっていた。

こうした課題に対して同社は、誘導型位置センサのセンシング素子設計を容易化できるWebベースのツール「誘導型位置センサ コイル最適化ツール」を新たに開発。同ツールを活用することで、コイルレイアウトやシミュレーション、チューニングの自動化ができるようになり、またオンライン上で試作を繰り返すことができるようになるため、性能の正確な予測に加えて、実際に製造する際の制約も踏まえてコイルレイアウトを最適化することができるようになるという。そのため、誘導型位置センサの利点を享受しながら、従来の開発・設計と比べて容易にフルカスタムのセンシング素子を開発できるようになり、早期に高性能なセンサ開発が可能になると同社では説明している。

フルスケールの0.1%未満の誤差でターゲット位置検出を実現

3製品はいずれも、誤差がフルスケールの0.1%未満という高精度でターゲット位置を検出することが可能なほか、RAA2P3226およびRAA2P3200は、最大回転数600k rpmまで対応しつつ、伝搬遅延を100ns未満に抑えているため、高速モータアプリケーションに適用することが可能。また、上位製品となるRAA2P3226については、最大19ビットの解像度と0.01°の精度を備えた絶対角度検知が可能なデュアルコイルセンシングをサポートしているため、ロボティクスアプリケーションに求められる高精度パフォーマンスを提供することも可能だとする。一方のRAA2P3200は高速モータの制御用に最適化された製品で、モータ整流、電動自転車、産業用ロボット、協働ロボット向けの高速・低レイテンシIPSなどをターゲットとしているとする。

そしてRAA2P4200は医療機器や電動工具などの低速アプリケーションを対象とした製品で、同社が買収したIDTが提供していた誘導型位置センサ「ZMID4200」の後継に位置づけられるという。

なお、3製品ともに量産を開始しているほか、RAA2P3226と他のデバイスを組み合わせた2つのウィニング・コンビネーション「小型BLDCモータサーボ」と「ターンテーブルシステム」も開発済みだという。また、2025年第4半期中には車載用IPSとして「RAA2P452x」と「RAA2P4500」という2製品も発売する予定で、デュアルチャネルのRAA2P452xを同社のマイコンと組み合わせることでASIL Dに準拠した機能安全設計をサポートすることが可能になるとしている。

  • RAA2P4200

    RAA2P4200を搭載した誘導型位置センサ評価キット (提供:ルネサス)