製造業から輸送、エンターテインメントに至るまで、あらゆる分野における絶え間ない進歩は、多くの場合、高精度で機械を制御する能力を改善し、機械性能を向上させることによって達成されています。

多くの新型機械の中心には、少なくとも1つのモータがあります。ロボット、エレベータ、自動車、電動工具などを改良する手段は、モータをより精密に制御することです。モータの性能は精密な制御にかかっており、精密なモータ制御はモータの正確な位置検出で決まります。また、正確な位置検出には、高精度のセンサ技術が重要な役割を果たします。

モータ精度、モータ制御、モータ性能を向上させるために、設計者は新たなレベルの位置決め精度を提供する誘導型位置センサを活用できるようになりました。

エンコーダ

磁気式エンコーダと光学式エンコーダはすべて、モータの位置の変化と速度の関係を利用しています。

磁気式エンコーダにはいくつかの種類がありますが、すべて同じ現象のバリエーションに依存しています。モータには何らかの方法で1個以上の磁石が取り付けられています。これらの磁石が磁気検出器に対して移動すると、その相対的移動に比例して磁場が変化します。

磁気エンコーダの分解能は種類によって異なり、1回転あたり数百パルス(PPR)しか計測できないほど低い場合もあります。精度を高めるには、精密な製造が必要です。サイズと重量は種類によって異なります。また、極端な温度差に悪影響を受けることもあります。

磁気センサの1つの欠点は、電磁干渉(EMI)の影響を受けるアプリケーションでは、使用できたとしても信頼性に欠ける場合があることです。

光学式エンコーダは光のパルスを検出します。基本的な実装方法はモータに円盤状の格子を取り付けることです。フォトダイオードは、回転する格子上かまたは格子を通して光パルスを検出します(一連の光パルスが「コード」を構成するため、「光学式エンコーダ」という用語が使われます)。この技法でモータの回転速度と位置の両方を決定します。

光学式エンコーダは磁場の影響を受けません。高分解能と高精度を達成できますが、性能は取り付け状態に左右されます。光学式エンコーダは、汚れ、煤煙、湿気などの環境汚染物質によって、容易に性能が損なわれる可能性があります。また、極端な気温の変化に悪影響を受けます。これらのどのセンサも、一般的に高速化は精度を犠牲にして実現されるため、高速化には常にコストがかかります。

誘導型センサ

モータと組み合わせて使用する3番目のタイプのセンサは誘導型センサです。誘導型センサは、実は磁石を利用していますが、磁場の変化を測定しているわけではありません。電流-誘導電流を測定しています。

磁気検出器がギアの回転を検知します。ギアの歯がセンサを通過すると磁束に変化が生じ、それに比例した電圧がセンサに誘起されます。この電圧は回転の速度と方向に相互に関係があります。

誘導型センサは約1世紀にわたって使用されてきました。誘導型位置センサソリューションは通常、振動、温度変化、環境汚染物質の影響を受けません。機械的に単純になる傾向があるため、信頼性が高くなります。

過去20年にわたって、誘導型センサは自動車市場で広く普及してきました。自動車で使用される誘導型センサは、低コストで高信頼性を実現するように設計されています。また、低速、低精度でもあります。

そのため、特定のアプリケーションのニーズには適していましたが、もっと高い性能を達成できたはずです。

デュアル誘導型回転位置センサ

デュアル誘導型回転センサは、誘導型センサの新しいバリエーションです。これらの新しい誘導型位置センサは高速かつ高精度です。

例えばオンセミのデュアル誘導型回転位置センサ「NCS32100」は、2枚のプリント回路基板(PCB)で構成されています。1つは2個のプリントされたインダクタを備えたロータで、もう1つは、プリントされたインダクタとエンコーダICを備えたステータです。

このデバイスの精度は38mmセンサで±50 arcsecを上回ります。最大精度は最高6,000RPMです(ただし、それを超える最高10万RPMの速度まで動作可能)。20ビットのシングルターン分解能出力と24ビットのマルチターン分解能出力を備えています。

  • オンセミのNCS32100回転位置センサ

    オンセミのデュアル誘導型回転位置センサ「NCS32100」のイメージ

これはアブソリュートエンコーダであり(インクリメンタルエンコーダではない)、ロータが動いていないときでも位置データを供給できます。

標準モジュールには、ファームウェアを搭載したArm Cortex-M0+を採用したマイクロコントローラ(MCU)が組み込まれ、生のアナログ信号の代わりに位置と速度を出力します。モジュールの柔軟な構成機能により、さまざまな誘導型センサパターンに接続でき、各種デジタル出力形式を提供します。

このアプローチは機械的にシンプルで、部品点数も少なくて済みます。また、最少数の外付け部品(バイパスコンデンサ、チューニングコンデンサなど)だけ必要とします。プラグアンドプレイが可能で、比較的較正も簡単であり、エラー訂正/診断機能を備えているため、設置が容易で操作も簡単です。他の誘導型センサと同様に、堅牢性、安全性、信頼性に優れています。標準モジュールで提供されますが、基本設計は他の構成にも役立ちます。

この統合ソリューションは、産業用アプリケーションおよび要件向けに設計されています。デュアル誘導型位置センサは、現在、ミドルエンドおよびハイエンドの光学式エンコーダが使用されている場所や、ロボット、産業用ドライブ、ファクトリオートメーションシステム、さまざまな産業機械などのアプリケーションで使用できます。

設計者がセンサのオプションを評価する場合、アプリケーションの動作要件を満たすだけでなく、アプリケーションの長期的な活力を考慮することも重要です。オンセミのデュアル誘導型回転位置センサを使用すると、部品点数が減り、動作寿命が延長され、較正が容易になるため、総所有コストを削減できます。

本記事はonsemiが「Electronic Design」に寄稿した技術記事を翻訳したものとなります

著者プロフィール

Alessandro Maggioni
onsemi
Senior Regional Marketing Manager of EMEA