TrendForceによると、2025年第4四半期のNAND価格は当初の安定するとの予測から、需要の急増により前四半期比で5~10%上昇する可能性があるという

背景には、HDDの供給不足とリードタイムの長期化に伴うクラウド・サービス・プロバイダ(CSP)によるQLCエンタープライズSSDへの調達先の変更が需要を押し上げていることが挙げられる。

こうした動きを受けて、まずSandiskが同10%の値上げを発表し、Micron Technologyも価格と生産能力の問題から見積もりの一時停止を踏まえた値上げを計画している。Samsung ElectronicsもDRAMを3割程度、NANDを10%程度値上げする見通しで、こうした各社の動きからNANDの契約価格は全カテゴリで上昇が予想され、同四半期全体を通じて平均で同5~10%の上昇が見込まれるとしている。

  • 2025年第3および第4四半期のNAND価格の上昇率予測

    2025年第3および第4四半期のNAND価格の上昇率予測 (出所:TrendForce)

全体的に値上げが進む可能性

各セグメントごとの状況を見るとクライアントSSDは、サプライヤ側の減産と出荷調整による在庫の減少が市場のバランス回復を進めたほか、大容量のQLC SSDの需要が高く、市場を支える役となっている。

また、エンタープライズSSDはSSDサプライヤ各社が120TB超製品の需要が増加しており、2026年の受注量の見直しを進めているほか、QLCのシェア拡大を図っている状況にあるという。そのため、サプライヤ各社の在庫は健全な水準以下となっており、北米を中心としたAIニーズの高まりにより、2026年にかけての供給不足に拍車をかける可能性があるため、2025年第4四半期の価格上昇を後押しする要因となる可能性がある。

SSDが高い利益率を出す一方、スマートフォン(スマホ)を中心としたeMMCとUFSは中国勢との厳しい価格競争もあり、価格上昇は抑制される可能性がある。しかしTrendForceでは、サプライヤが損失を防ぐことを目的に2025年第4四半期に価格引き上げを行う可能性も捨てきれないとしている。

そしてウェハに関しては、減産に伴うビット生産量の減少を踏まえてサプライヤ各社は利益率の高い製品にリソースを再配分しており、モジュールメーカーへのウェハ供給は限定的となっている。この流れはAI投資が拡大するにつれて拡大し、供給がひっ迫されるため同四半期の価格は上昇すると予想されるという。

中YMTCがHBMに参入か?

中国の大手フラッシュメモリベンダYMTCが、AI半導体向けに使われるHBMを含むDRAMの製造に参入する計画だと米国メディアが伝えている

米国政府は2024年12月に輸出規制を拡大し、AI半導体を中心に活用される高性能DRAMであるHBMへの中国のアクセスを制限したことが背景にあり、業界関係者やアナリストによると、この規制により、HuaweiやByteDanceなどの独自AI半導体を開発する中国テクノロジー大手を中心に、HBMの入手が課題となったという。

YMTCはDRAMを積み重ねてHBMチップを製造するために使用されるシリコン貫通ビア(TSV)技術を開発済みで、武漢に建設中の新施設の一部をDRAMの生産に充てることを検討しているという。

なお中国では、DRAM大手のCXMTがすでにHBMを開発済みで、Huaweiも密かに開発中と伝えられている。中国政府は、米国政府によるAI半導体を中心とした対中輸出規制への対抗として中国企業による自主開発を支援しており、米国政府の規制が、中国勢の開発を促進する結果となっている。